ぺんちゃん日記

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三国志を読み返す 宮城谷昌光・三国志 第2巻の感想

夜明け前が一番暗い。

宮城谷昌光三国志、全12巻の大作の中で第2巻となります。


物語はまだまだ三国志の序盤。
曹操の祖父 曹騰の時代です。
これまでの経緯を手短に振り返るとこんな感じです。
曹騰は順帝の即位に力を尽くして、専横を振るう外戚の閻太后一族を失脚させました。
その功績で宦官達は栄達しましたが、順帝は後に崩御、今度は別の外戚の梁冀が実権を握り、第10代質帝は梁冀によって毒殺されます。
第一巻はここで終了。

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第2巻 帝国は蝕まれ、英雄 は生まれる。

いよいよ後漢王朝が本格的に転落していく一冊ということで、非常にしんどい一冊となりました。読み終えるのに3ヶ月かかりました。
何しろ世相が暗い暗い。胸のすくような活躍の機会がなく、醜い権力闘争に明け暮れてばかり。
宦官が醸し出すねっとりした空気感がとても気持ち悪い。
読み進めるのが辛すぎて3巻まで飛ばしてしまおうかとすら思いましたが、12巻をセットで買っているので読み飛ばしたところでコストカットできるわけではありません。
さらに残念なことに?第2巻の終わりから満を持して黄巾の乱が勃発します。
ここを読まないと三国志が始まった気がしないので素通りというわけにもいきません。
でも、苦しい思いをして読破した甲斐はありました。
夜明け前が一番暗いと言うように、先行きの見えない不安を乗り越えて時代が変わるのです。
これだけ重苦しい話が続いていれば、黄巾の乱も「そらそうなるわな」と納得がいくし、十常侍ら宦官がいかに嫌われていたか、よく分かります。
そんな中でも新たな時代の萌芽を感じる出来事が。
孫堅曹操劉備の誕生と、侠気に溢れた董卓の登場です。
その他袁術袁紹孫策孫権諸葛亮司馬懿も誕生するなど、三国志のスターが出番を待ってます。
黄巾の乱が始まる頃、曹操は三十歳に近づこうという年頃。
気力と体力ともに充実した頃合いです。
勢いづく黄巾の党相手に華々しくデビューする曹操の纏う空気の新鮮なこと。
まさに主人公登場といった感じで、全12巻のボリュームで見ればここまでの暗い話は導入として必要不可欠だったと思えます。



どんな時代だったか。

宦官の力が絶大で、十常侍を中心に回っていきます。
なぜなら、宦官の権力が代を重ねるごとに強くなって、誰にも止められなくなっているからです。
官僚や将軍は政治的に失敗すると責任を取って辞職しますが、外戚と宦官は口は出すけど責任はとりません。
外戚は皇帝・皇后が代替わりする時に権力がぐらつきますが、宦官は10人揃ってチームプレイするので簡単には倒されません。
こうやって外戚が失脚するたびに宦官たちが濡れ手に粟で恩寵を受ける。
そんな政治体制で皇帝が2世代続けて暗愚。
それが桓帝霊帝
桓帝は宦官を信頼しています。
なぜなら、外戚の梁冀が皇帝を毒殺したことを知っており、それを追い払ったのは宦官達だったからです。
外戚の恐怖を知っているので、皇后を迎えても力を与えないので宦官にとってはパラダイスです。
宦官たちは政治を学んだ経験がなく、人徳の重ね方も知らず、ただ私利私欲に明け暮れて「一番儲かる」意見にばかり力を注いで国力を食いつぶしていました。
そんなだらけた王朝を引き締めるために李固・陳蕃などが力を尽くしますが、宦官に敗れて失脚。
党錮の禁の引き金となり李膺をはじめとする学者一派が投獄・処刑されました。
党錮の禁は一時的に解除されたものの、陳蕃と外戚の竇武が力を合わせて宦官を排除しようとして失敗。
宦官と外戚の戦いはこれまで常に宦官の勝利に終わります。
再び学者たちは投獄されました。
皇帝は第13代霊帝の時代へ。
霊帝は成人する前に即位、それまで貧困に喘いで苦労したようです。
母は生き延びるために蓄財と商売のコツを教えたようで、霊帝はドケチで世間知らずで宦官の操り人形となっていました。
官職を金で買えるようにするなど、前代未聞の政策を打ち出し、狡ずるく金儲けできる人間ほど出世しやすくしてしまいました。
曹操の親、宦官の曹崇も三公のポストを買いました。
霊帝の寵愛を受けた美人の実兄・何進が大将軍へと引き立てられ、弁皇子を産んだ美女は何皇后となります。
直後に最後の皇帝となる献帝も生まれます。
ここで黄巾の乱が勃発して人材不足を解消するために投獄された官僚たちが解放されました。
宦官たちの暴虐を止めたのは、皮肉にも民衆が起こした氾濫だったのです。
賊を討伐するために皇甫嵩朱儁大活躍して曹操もそこに加わります。
しかし、別働隊の盧植は賄賂を送らなかったため、宦官に恨まれ、讒言されて処分されます。
ここで第2巻は終了です。


第3巻に続きます。
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