ぺんちゃん日記

食と歴史と IT と。 Web の旅人ぺんじろうが好奇心赴くままに彷徨います 。

イソップ寓話集・傑作選 200話から300話まで

これまでの経緯。

どうせやることないのでイソップ寓話を読もうという企画が半年前から始まりました。

yasushiito.hatenablog.com


事の発端は、

原作に触れたこともないのに知っているつもりになっていい気になるのは大人としてどうなのか

という自意識過剰が発動したためではありますが、読んでみると子供の頃から慣れ親しんだ名作の他にも味わい深いエピソードがたくさんあることを発見できて楽しいことがわかりました。
一度に読み切ってしまうのは味わいが薄まるので、毎日2話ずつ読み進めるスタイルにしています。


5月頃には100話まで到達。
区切りとして、個人的に特に面白いと感じたエピソードを傑作選としてまとめました。
yasushiito.hatenablog.com


その後は PC が壊れるというアクシデントがありながらも着実に読み進めて8月に200話まで到達。

yasushiito.hatenablog.com


そしていよいよ今回。
10月に300話まで到達です。

イソップ童話集とは。

イソップ寓話について軽く触れておきます。
イソップ寓話とは紀元前古代ギリシャに実在したアイソーポスという話の上手な童話作家が残した話をまとめたものです。
アイソーポスの話は普遍的な教訓話として有用なものと認められたようで、彼の死後も定期的に編纂されてきました。
長い歴史の中で、アイソポスのものもそうでないものも、教訓めいた話はアイソポスの著作の中に含められていきました。

日本には戦国時代から江戸時代にかけて宣教師の手によって持ち込まれました。
日本でも道徳教育の教材として昔話アレンジされて受け入れられました。


ja.wikipedia.org

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これまで翻訳者のことを一度も言及していなかったことに気づいたので恥ずかしながら今頃紹介します。

私が利用しているテキストは、岩波文庫から出版されている、中務哲郎(西洋古典学者・古代ギリシャ文学研究者)の翻訳による『イソップ寓話集』です。
収録数はなんと471話。
これだけ読めば 「読んだ」と胸を張ってきているでしょう。
その471話の内訳ですが、章立てになっていて、参照した文献ごとに区別できるようになっています。
この辺はただ読みたいだけの読者は意識しなくても良いと思います。
イソップ寓話は様々な文献に収録されているので、製作された年代や地域によって話に違いがありますので、研究の際には必要な情報なんだと思います。


イソップ寓話青空文庫に収録されていないので、是非とも本を手にとって読んでいただきたいです。

私が利用している電子書籍はこちら。

イソップ寓話集 (岩波文庫)

イソップ寓話集 (岩波文庫)


物理の本がお好みならこちら。

イソップ寓話集 (岩波文庫)

イソップ寓話集 (岩波文庫)

  • 作者:イソップ
  • 発売日: 1999/03/16
  • メディア: 文庫


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イソップ寓話・傑作選 200話から300話まで。

第232話マイアンドロス河畔の狐。

第232話から第2部に入ります。

ある時、狐たちが水が飲みたくなって、マイアンドロス川の畔に集まった。水がごうごうと音たてて流れるので、お互いに促しあうば かりで、流れに入って行く勇気がなかった。中の一匹が、他の連中を 馬鹿にしてやろうと進み出て、皆の臆病なのを嘲笑い、人より勇敢なところを示して、思い切りよく川に飛びこんだ。たちまち川の中流へと攫われたが、他の狐たちが川岸に立って、「我々を見捨てないでくれ。戻って来て、安全に水が飲める下り口 を教えてくれ」と叫ぶと、こちらは流されながら言うには、
「俺はミレトスに用事がある。そこまで手紙を届けたい。帰ってから教えてあげよう」 空威張りからわれとわが身に危険を引き寄せる人のための話。

教訓としては空威張りで先走るのは危険だということです。
誰が行くかで空気を読みあっている時に、勇気を見せたくて無謀な行為に及んでしまうことは誰にでもありますね。
今時で言えばファーストペンギン。
成功すると気持ちが良いのですが、大抵の場合は失敗する。
この話のコミカルなところは、無謀な失敗を仲間たちが気づかずにすがっているところと、失敗したキツネもそれを認めずに余裕をぶっこいた 別れの言葉を残しているところ。
水を飲みたくて飛び込んだはずなのに、いつのまにか河口近くの港町まで行くことに目的が変わってる。
帰ってから教えてやるって、自分が無事にたどり着く前提てことですよね。
もはやギャグ漫画なので選出です。

第243話ハイエナ。

ハイエナは年ごとにその性質を変えて、牡になったり牝になったりすると言われている。ある時、牡のハイエナが牝に対していかがわしい振る舞いに及んだ。牝が答えて言うには、
「どうぞおやりなさい。まもなくあなたが同じことをされる立場になるのです」
自分が治める人々の責任を厳しく追及するが、一朝事あれば逆にその人々から責任を問われる役人たちのための話。

今で言うブーメラン。
イソップの時代から、政権交代で立場が変わったら 骨抜きになる人達の話はあったんですね。
独裁者についても使えるし、民族対立についても表せるので奥が深い。
人間が性転換する生き物だったら性暴力もはるかに少なかったでしょうか。
性的にカオスな話が好きなので選出です。
ちなみにハイエナのメスには立派なおちんちんがついています。
出産する時にちんちんが張り裂けるのでオスがメスになるのだと誤解されていたようです。
この話は、以前は誰も知らなくて持ちネタとして話題に困った時に使っていたのですが動物番組などで使われるようになって認知されるようになったので少し残念です。

第246話呑んだくれと女房。

第245話から第3部です。

呑んだくれの亭主をもつ女がいた。女はその病気を止めさせたい一心で、こんな細工を思いついた。
亭主が酔って正体もなく眠りこけ、 死人のように何も感じないのを見すまして、肩に担いで共同墓地まで 運び行き、置き捨てにして帰って来たのだ。亭主が酔いから覚めた頃を見計らって、墓地に出かけて戸を叩くと、 亭主の声で、 「戸を叩くのは誰だ」と言う。女房が、「わしは死人に食物を運んで来た者じゃ」と答えると、
「おい、おっさん、食うものは要らぬから飲むものを持って来い。 飲め、ではなく食えだなんて、殺生だ」と亭主。女は胸を叩いて言うには、
「やれ、情ない。折角の思いつきも水の泡だ。あんたという人は、ちっとも賢くならないばかりか、前よりひどくなった。あんたの病気は慣性となってしまった」
悪い行いを永く続けてはいけない、ということをこの話は説き明かしている。その中に、嫌でも身についた習慣になってしまうから。

落語の小噺みたいで面白かったので選出です。
帰ってきたヨッパライのように、性懲りなくてだらしない男だけど、ダメすぎて憎めない気がするのが不思議です。
教訓としては、悪い習慣を長く続けると治せなくなるという依存症の話です。
共同墓地というのは土葬するための墓場ではなく、霊安室的なイメージでしょうか。

第248話ディオゲネスとハゲ頭。

犬儒派の哲学者ディオゲネスは、禿頭の男に悪口を言われてこう答えた、
「私は悪口は言わないよ、断じて。代りに君の髪の毛を褒めよう。 そんな南瓜頭を捨て去ったんだもの」

天下随一の賢者と噂されるディオゲネスの話。
言い争いになっても悪口を使わないのは立派ですが、そのやり返し方もお見事。
口の悪い人には誰も寄り付かなくなるということを、髪の毛にすら見捨てられるという言い回しで伝えています。
ハゲてるやつはみんな口が悪いとディスられている気がして悔しいですが選出です。
ちなみにディオゲネスアナーキーな人ということで有名。
彼は財産を持たずホームレスで、常に大きな樽を転がして歩いて, 気に入った場所が見つかれば樽の中に潜り込んで寝泊まりする、今で言う車上生活者の草分け的存在です。
アレクサンドロス大王が彼の噂を聞きつけてスカウトに向かった逸話も私のお気に入り。
「欲しいものは何だ?富・地位・名声・女全部あるぞ」と誘ったところ、ディオゲネスは「日光浴中じゃ、そこをどいて日の光をくれ」と追い払った。
ロックすぎる。

第258話病気のライオンと狼と狐。

ライオンが老いて病み、洞穴の中に臥せっていた。 狐を除くすべての動物が王様の見舞にやって来た。狼はチャンス到来とばかり、ライ オンの前で狐を糾弾して、百獣の王を尊敬していない、それゆえ見舞にも来ない、と言った。ちょうどそこへ狐もやって来て、狼の言葉の 最後のところを聞きとった。ライオンは狐を睨んで吼えかかったが、 狐は弁明の機会を願い出て言うには、「ここに集う者の中、私ほど役に立つ者がありましょうか。八方走りまわり、医者から王様の治療法を尋ね、そして見つけたのですから。
すぐにその治療法を言ってみろ、とライオンが命じると、狐の言う には、
「狼を生剥ぎにして、まだ温かい皮で身を包むのです」 たちまち狼は骸となって横たわった。狐が笑って言うには、
「だから主君に対しては、悪意へとけしかけてはならない。善意へと動かさねば」
人に企む者はわが身に企みを引き寄せる、ということをこの話は説 き明かしている。

機転の利いた弁舌で大逆転する話。
権謀術数の話としてよくできていたので選出です。
教訓としては、権力者を私欲のために利用すると逆に身を滅ぼすという意味なのだが、権力者が愚かなら普通にそそのかして利用できるので教訓としてはありがたくないと思う。
中国の古い話ですが、殷の紂王の親戚の比干は賢者として認められていましたが、王を諌めたために陥れられて殺されました。
紂王は「賢者の心臓には7つの穴がある」とそそのかされて、それを確かめたくて彼の心臓をえぐりだして眺めたと伝えられています。

第270は壁と杭。

杭によって力まかせに割られそうになった壁が、「何もしていないのに、どうして僕を割るのだ」と叫ぶと、杭は答えて、
「悪いのは俺じゃない、後ろから俺をがんがん叩く奴だ」

弱い者がさらに弱い者を叩く。
くさびのように鋭利だから悪い奴らに利用されているのか、悪いことをしているのは分かっているのに言い訳しているのか。
色々想像の余地があって味わい深いので選出。

第290話牛と肉屋。

第274話から第4部です。

牛たちが、天敵ともいうべき職業の肉屋を殺そうとした。角を研いで、いざ戦わんと集結しおわったところ、中に一頭、久しく大地を耕してきた、ひときわ年とった牛がいて言うには、
「この連中は手練の技でわしらを屠殺するから、苦しまずに死んでいける。しかるに、下手くそな奴の手にかかったら、二度殺されるよ うなものだ。たとえ肉屋がいなくなっても、牛を殺す人間はなくなり ませんぞ」

肉屋を支持する豚」のような話。
どうやらこれが元ネタではないらしいが、あまりにも似ているので選出。
明らかに詭弁なのだが、大きなデメリットの後に小さなデメリットを見せれば、そちらの方が合理的に思えるのが不思議。

選出外の鉄板エピソード。

有名なエピソードは感想と相違点だけに絞って紹介します。


オオカミ少年
狼が来たと村人たちを騙してからかっていた話。
嘘つきが得るものは不信感だという話。
狼に襲われていたのはオオカミ少年が飼っている羊。
村が襲われたわけではないところが予想外。


うさぎとかめ。
ウサギとカメが競争した。
うさぎは自分の才能を過信して途中で眠ってしまったが亀は粘り強く進んだので先にゴールした。
素質も磨かなければ努力に負けるという話。


見逃せないエピソード。

本文全体を紹介しきれなかったけれど、私の胸に刺さったエピソードを集めました。
私の下手くそな要約であっても軽く触れておきたいです。
私が要約するので話のニュアンスがねじ曲がっているかもしれませんので、是非とも書籍で確認して欲しいです。

守銭奴
守銭奴が全財産を貴金属に交換して城壁の外に埋めた。
守銭奴が足繁くそこに通っていることに気づいた男が盗み取った。
守銭奴が激しく泣き崩れたが、周囲の人が慰めるのは「どうせ使わないんだから、そこに石でも埋めておいて宝石を持っている気分になっていれば良いじゃないか」

使わない金は持っていないのと同じなんだ、という話は身につまされる。
貧乏性だから景気良く使えないのよ。
近年では「株で儲かったらそのお金をどうする?」という問いかけに「その金でまた株を買います」と答える人に全く違和感がないですからね。


第287話アラブ人とラクダ。
アラブ人がラクダに尋ねた。
荷物を運んで歩くなら上り坂と下り坂のどちらが良いか。
するとラクダはピンと来て平らな道はないのかと返した。

3番目の選択肢。
答えは2択とは限らない。
人生には三つの坂がある、上り坂、下り坂、平らな坂。

最後に。

今回も傑作エピソードをたくさん見つけられました。
さすがにパターンが分かってきたので「いいね」ボタンを我慢するコツもわかってきましたが、 いやそれでも選出しすぎだろ。

追記。
300話から400話まで行きました。

yasushiito.hatenablog.com



イソップ寓話集 (岩波文庫)

イソップ寓話集 (岩波文庫)



イソップ寓話集 (岩波文庫)

イソップ寓話集 (岩波文庫)

  • 作者:イソップ
  • 発売日: 1999/03/16
  • メディア: 文庫