眺めの会(定期映画鑑賞会)4月上旬 300・スリーハンドレッド
古代ギリシャ熱、 高まる。
紀元前4世紀、古代ギリシャを舞台にした漫画『ヒストリエ』を読み始めたら、すっかりギリシャ熱が高まってしまいました。
なんでもいいから映像作品見たいなあと思ったので、今回の眺めの会はギリシャものから選びます。
ギリシャ神話的なファンタジー要素薄めで歴史資料が残っている話から選んだ結果、 スパルタ軍とペルシャ軍が激突したテルモピュライの戦いを描いたスリーハンドレッドとなりました。
Amazon プライムでは有料コンテンツとなっています。
私は字幕版を選びました。
15歳以上推奨のレーティングとなっています。
300・スリーハンドレッド。
2007年に米国で公開されたアクション映画。
紀元前5世紀にギリシャとペルシャの間に発生したテルモピレーの戦いを元に実写映画化。
監督はザック・スナイダー。
脚本はザック・スナイダー、マイケル・E・ゴードン、カート・ジョンスタッド。
原作はフランク・ミラー。
主な出演者はジェラルド・バトラー、レナ・ヘディ。
言語は英語で上映時間は1時間50分。
レーティングは15歳以上。
原作は1998年に出版されたコミック。

300(スリーハンドレッド) (Shopro world comics)
- 作者:フランク ミラー
- 発売日: 2007/05/18
- メディア: 単行本
あらすじ少し詳しく。
テルモピレーの戦いはギリシャの著名な歴史研究者ヘロドトスの著書『歴史』に詳しい。
ストーリーの顛末は教科書にも載っているので、ネタバレに関しては考慮しない。
紀元前5世紀、アジアおよびエジプトを征服したペルシャ帝国のクセルクセスが野望西に向け、ギリシャに進出してきた。
クセルクセスはスパルタの王レオニダスのもとに降伏の使者を送る。
スパルタは子供を厳しく訓練することで自立を確保しているギリシャ地方の都市国家。国民全てが屈強で勇猛な戦士であった。
しかし、その時スパルタはカルネイア祭。
神託により祭りが終わるまでは戦争はできない。
神託は法律と同じであり、絶対である。
アテナイなどの周辺国もオリンピック開催中。援軍も期待できない。
彼らにとっては命よりも宗教行事の祭りの方が優先されるのであった。
このままでは戦う機会がないまま征服されてしまう。
そこでレオニダスは「散歩」という名目でわずかな護衛を引き連れ、峻険な地形の テルモピュライへと向かうのだった。
祭りが終わるまで約一週間。
1日でも長く足止めすれば戦争の準備は可能。
レオニダスはペルシャが数の力を発揮できないテルモピュレーの狭い山道で最後の一人まで戦う覚悟だった。
ペルシャ軍はスパルタ兵の強さに手を拱いたが、急峻な崖の中に抜け道を見つけて裏に回り込むと形成は逆転。
レオニダスは命尽きるまで戦うが、部隊は全滅して敗戦する。
レオニダスは死んだが、その間に体勢を立て直したギリシャ連合はペルシャ軍をサラミスで迎え撃ち勝利する。
ペルシャ王クセルクセスは撤退するものの、戦いは完全に終わらず、1年後にも プラタイアの戦いが発生するが、ここでは描かれていない。
見終わった感想・容赦なくネタバレ。
歴史好きは見ない方が良い。
この一年で見た映画の中で最もつまらなかった。
簡潔に言えば「歴史上の国や英雄にリスペクトがない」
私は今、深い失望と憤りを感じています。
途中退場しなかった私を褒めてあげたい。
この企画でつまらなかったと意見表明したのは初めてではなかろうか。
筋肉好きは見ても良い。
筋肉は全てを解決する。
筋肉至上主義を貫いているのでマッチョが大好きな人は安心してみてください。
有利な地形で戦う設定ですが、小細工など全くすることなく筋肉の力だけで相手と打ち合うところが見られます。
私は肉体には全く自信がないのでスパルタ人にはなりきれない。
スパルタに生まれていたら谷底に投げ捨てられる赤ん坊のだったに違いない。
己の肉体で敵を打ちのめす快楽を知っている人が羨ましい。
筋肉が好きか嫌いかで評価がはっきり分かれるんじゃないかな。
邦画の悪い所が全部詰まってる。
監督は日本人なのか?日本ドラマフリークで影響を受けたのか?
邦画のダメな表現技法を使い切っていました。
そのせいで筋書きに関係なく映画がつまらない。
Wikipedia を15分眺めただけで夢中になれる話をここまでつまらなくできるなんて芸術的だわ。
説明的なセリフ。
自分の気持ちを絶叫。
わざと敵に囲まれて大立ち回り。
見せ場を分かりやすくストップモーション。
有効に働いていない恋愛要素。
強引に突っ込まれる女性の活躍。
しらけるほどの現代的倫理観でお涙頂戴。
よくもまぁこんだけ突っ込めたなと。
国産の壮大な歴史スペクタクルドラマを見ている気分でした。
それはそれでひとつの積み上げられた型とも言えるので、洗練されているとも言えますが、私は好きじゃない。
少なくとも洋画では見たくない。
歴史に対するリスペクトがない。
ペルシャ軍の描き方が差別的で不愉快極まりない。
ファンタジー作品なら好き勝手に敵国を悪魔に仕立て上げてもいいですけどね、 同じ悪でも、もう少しマシな悪の描きかたがあるってもんでしょうよ。
村を襲って死体を木に吊るすペルシャ人のやり方をなじるわりには自分たちだって石垣に死体を埋め込んでるし。
実はこの作品、叙事詩だという前提があればフォローできないこともないのですよ。
片目を負傷してスパルタに帰された隻眼の戦士が語り部となって、自分の見た戦いの様子を市民たちに伝えている、そういう映画なのですね。
だから当時のスパルタ人は世界をあいう風に見ていたということを表しているだけで、制作側に差別の意図はないと考えることもできるのです。
しかし、「これはスパルタ人が語り部から受け取ったイメージです」というコンセンサスを観客と結べていないから事故るんです。
観客たちが「俺たちは誇り高きスパルタ人だ」と思い込んでいれば作り手の意図通りに受け取れるのですが、歴史バトルアクションとして客観視してしまうのでどうしても腹が立つのです。
私アジア人ですので。
レオニダスの妻も何がやりたかったかわからん。
レオニダスが帰らない覚悟で戦地に赴いているのに援軍の手配に奔走。
それはそれで健気な妻だけど、結果的には身体と引き換えに協力を得るのはどうなのよ。
援軍が到着する前にレオニダスがペルシャ軍を撃退していたら何と言い訳するつもりだったのか。
よしんば妻の働きで援軍が間に合ったとしても、レオニダスがそれを知ったらどう思うか。
きっと「あの時」ことが傷になるので、どっちに転んでも失敗パターンじゃ。
案の定、レオニダスの政敵にまんまとハメられて、聴衆の面前で恥をかかされ、カッとなって刺し殺すのだから、女は感情的で政治はできないという結末になりませんかね。
あまりに酷い扱いだから、史実で動かせないのかと調べてみましたが、そんな記録はなくオリジナルな模様。
これでは愚妻の烙印を押すために登場させたようなもんじゃん。
スパルタ人は勇敢な王を見捨てる形にもなっているし、レオニダスはあの悪役の言うとおり、法律を破って勝手に戦争した暴れん坊の王 という形になりませんかね。
この人物の掘り下げ方、誰得?
動物部隊のサイと象が一瞬で敗れ去るのも残念。
封神演義の終盤のやられ役でももうちょっと粘るぞ。
兵力が300人しかいないから犠牲者を出す演出が難しいのは分かるけど、そういう使い方をするなら出さない方が良かった。
動物がかわいそうなだけだった。
相手を間抜けに描くことで自分をよく見せるのは好きじゃない。