ぺんちゃん日記

食と歴史と IT と。 Web の旅人ぺんじろうが好奇心赴くままに彷徨います 。

「歴史好き」とは言いづらくなってきた

いつ頃からか歴史ブームがやってきて、歴史関係のバラエティを見ない日はないですね。
以前は自己紹介で「時々歴史の本を読む」と言うと 少し間を置かれた感じがしたのですが、趣味の一つとして認知されたことで楽になったなぁと思ってました。
好きな戦国武将の話をしていればなんとなく通じ合えます。
TV ゲームの話に流れても娯楽のためのフィクションという形で消費できるのでみんなでワイワイと楽しめたんですね。
割と最近まで。

でも去年あたりから、周囲の空気が変わってきました。
世間話で「昨日何をしていたか?」の話題になった時「 Wikipedia で歴史のページを見ていた」などと返してしまうと、こんな反応が返ってくるんです。

「私も最近歴史関係のやつ、よく見てるよ」

歴史関係って言ってもジャンルが幅広いので落ち着いて話を聞いていきます。
相槌を打っていると次のように流れていきます。

「インターネットってすごいね。YouTube すごく面白いもん、わかりやすいしさ」

「最近はずっと YouTube ばっかり見てるよ」

「私、今まで歴史の勉強なんて全然してこなかったけど、 YouTube だとすごく楽しく勉強できるんだ」

「明治時代の日本って凄かったんだね。
こんなに大事なことなのに、学校では全然教えないなんておかしいよ」

「あなた、そのチャンネル見てないの?
結構有名なとこだけど。
○○さんも同じところ見てるんだよ。
すごく話が合うから」

「テレビじゃやってないことも教えてくれるよ。
中国とか韓国が変な事やっていることとか。
一度見てみてよ」(満面の笑み)

『やはりそっちか。しかも結構進行している』

世間話の上で歴史関係の話を触れてしまうと高確率でこんな惨事になってしまうんです。
つまり、世間話として通用する程度には市民権を得ている。
たぶん10年前だったら、憚られて口にできなかったヘイトスピーチも声をひそめることなく話せるようになってしまっている。

こういうの、 SNS ではおじさんばっかりのイメージですけど、女性もたくさんいますからね。
世間話の範疇で、良かれと思って話しているんだろうけど、ただただ困惑するしかできない。
ドラマティックにデコレーションしまくったハイパー歴史コンテンツとして、わかって消費してくれれば良いのですけど、そんな空気感じゃないんだよなぁ………。

「本当の歴史を教えてあげるから。今気づかないと恐ろしいことになるから」

とか言って真剣に説得してくることもあるくらい。
本気で私のためを思って助言してくれているので簡単に無下にはできないですし。
ここまで行くとカルト宗教の味がします。
ヘイトスピーチを聞かされるだけでもしんどいのに、仲間だと思わないでくれよ。

こういうの、どこから手をつければ良いのでしょう?

まさか頭ごなしに「そんなん歴史じゃない」と言ったら余計に反発するだけだし。
「ちゃんと研究を重ねた歴史学者の話でなければ信頼性が薄い」と言っても、肩書きが立派そうな人が積極的に絡んでるんですよね。

そして最悪なことが「自分だってハイパーエンターテイメント歴史バラエティをガッツリ楽しんでいる」ことなんですね。
史料が少ないのをいいことに古代を想像して楽しんでます。
近年、歴史研究が進んだことで、これまで一般的に語り継がれてきた戦国武将の歴史物語の内容に誤りがあることが分かってきました。
と言うか、以前から分かっていたけど、周知が届かずに半ば放棄されていたのですね。
だって私、三国志演義の7割が嘘だと知りながら全力で楽しんでました。

自分がやっていることセーフだけど、あんたらのはアウトというわけにもいきません。
程度の差こそあれ、私も某掲示板と接触した時は夢中になりましたからね。
やっぱり壮大なヨタ話は面白いもん。
中二病のように誰もが一度は通って、大人になって黒歴史となるタイプの一つだから、必ず目が覚めるし、その時は過去の自分が恥ずかしくなるのだから気が済むまでやらせてあげたいという気持ちも働いてしまいます。
こうやって逃げて野放しした結果が歴史修正主義の花盛りなんてね。
私は歴史認識について議論したいわけじゃないんだ。
巻き込まれるのも嫌だし、仲間だと思われたくない。
自分勝手だけど。
そんな無関心が「歴史好き」と言いづらくなってしまう社会を誕生させてしまうとは。