ぺんちゃん日記

食と歴史と IT と。 Web の旅人ぺんじろうが好奇心赴くままに彷徨います 。

眺めの会(定期映画鑑賞会)10月下旬・午後の部 クレヨンしんちゃん アッパレ!戦国大合戦

オトナ帝国の逆襲と合わせておすすめされる作品。

2週間に一本の映画を見る[眺めの会]。
今回は漫画祭り的なスタイルで二本立てです。
午前の部では『クレヨンしんちゃん オトナ帝国の逆襲』を鑑賞しました。
正直なところ、クレヨンしんちゃんをなめてました。
経年劣化によりまぶたのパッキンが緩くなったとはいえ子供向けアニメで泣かされるとは思いませんでした。
ということは今回の作品『アッパレ!戦国大合戦』も評判通り期待して良さそうですね。

今回も視聴プラットフォームは Amazon プライムビデオ。
プライム会員なら会員特典で無料で視聴できます。


映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦。

2002年に日本で公開された長編アニメ映画でジャンルはコメディ。
言語は日本語で上映時間は95分。
原作は臼井儀人の漫画でテレビシリーズにもなっており、劇場映画版としては10作目。
監督・脚本は原恵一
主な声優は矢島晶子藤原啓治、奈良橋美紀など。

あらすじ。

ある日しんのすけは、飼い犬のシロが庭に開けた穴から戦国時代に滑り落ちてしまう。
そしてしんのすけは合戦を見物している間に井尻又兵衛という侍の命を救ったことで、春日常に招かれる。
春日城で出会った姫・廉姫は先日野原一家全員が揃って見た夢の中に出てきた美しい女性だった。
しんのすけは又兵衛と廉姫が互いに思いを寄せていることに気づいたが、又兵衛は身分の違いを理由に引き下がる。
その頃ひろしとみさえは失踪したしんのすけを探すため、わずかな手がかりでマイカーを強引に庭の穴に進めてタイムスリップに成功する。
無事合流した野原一家は春日城の侍館に招かれて春日城の城主に面会する。
21世紀の話を聞いた春日城の城主は廉姫との政略結婚で隣国の大大名との同盟を中止して婚約を解消した。
野心溢れる隣国の大名は、これを口実に圧倒的な軍勢で侵略してきた。
絶体絶命の春日城。
又兵衛と廉姫の運命は?
野原一家は現代に帰れるのか?


見終わった感想、ネタバレあり。

歴史おじさんの私には大満足。

これは衝撃です。
子供向けアニメ、でいいのかな?
完全にガチの戦国合戦ドラマじゃないですか。
本当にこれが子供のために作ったアニメなの?
大人向けの実写映画として制作しても全く遜色ないがっちりした世界観でした。
しかも合戦の様子が大河ドラマよりも断然リアル。
歴史小説が好きな私にとっては大好物の作品です。
プライム会員になっていればこれを好きなだけ見れると思うと急にお得に感じてきました。
これは2回目どころか3回目もありですわ。

賛否両論あるかもしれない。

私は大喜びしましたが、本来のターゲットであるお子様達は楽しめたのでしょうか?
上映当時の様子が分からないので何とも言えませんが、好きな子は歴史オタク一直線で、合わなかった子は置いてけぼりでポカーンだったのではないでしょうか。
そりゃあサブタイトル戦国大合戦と入っているんだから、当然壮大な合戦絵巻であることが分かって見ているのだとは思いますが、クレヨンしんちゃんの下品でおバカな笑いを期待して映画館を訪れた子供は空いた口が塞がらなかったんじゃないでしょうか?
子供を戦場に立ち入らせるわけにはいかないので合戦に絡ませる理由付けにはだいぶ苦労した跡が見えます。
しんちゃんの活躍時間は短いし、保育園の仲間との絡みも控えめでした。
ゲストキャラクターの又兵衛はおじさんだし、物語のテーマも大人の恋。
これをクレヨンしんちゃんでやる意味はあるのだろうか?

子供も多分好き………だと思いたい。

子供の頃の衝撃って大切にしてあげたいです。
大人が本気で真っ向勝負を挑んでいるのだから、子供達だって全部は分からなくても感じるところはあるんじゃないかと思います。
スターウォーズとかガンダムって結局大人になっても大好きでシリーズがずっと続いているし、途中でシリーズから離れた人にとってもファーストインパクトの記憶は良き思い出として残っているものですから。
アッパレ戦国もそういった作品の一つとなり得る力を持っていると思います。
子供は背伸びしたい生き物です。
子供だからといって、あからさまな子供向けの作品を見せられるのって子供にとっては嫌なものですよね?
大人が見るような物語を自分たちの好きなキャラクターで置き換えてみるのは、大人の世界を覗き見しているようで少しドキドキするのかなと思いました。
「しんちゃん」自体が大人の女性をナンパするマセガキですもんね。
よくわからないけど好きと言う出会いは長きにわたって財産となるに違いありません。
少なくとも私が子供の頃にこれを見たらガチめの歴史オタクになっていたと思います。
たぶんそうなった子供がたくさんいたことでしょうね。

やはり見どころは合戦シーン。

この作品の見どころはもちろん大迫力の合戦シーンです。
鉄砲で威嚇しながら間合いを詰めて、弓矢とスリングで攻撃して相手を削る様子はドラマでは地味すぎてなかなか再現されない描写です。
青竹を寄せ合わせた 衝立は初めて見ました。
隊列を組んでやりで叩き合うところもなかなかお目にかかれない。
刀を振り回してド派手に切り結んだ方が見栄えも良くて盛り上がりますからね。
時代劇のチャンバラもかっこよくて独特の型があるのではありますが、そういった系統の作品とは明らかに質が違います。
お城と周囲の田園風景が描かれているのも魅力です。
あの舞台を実写で用意するのはまず無理でしょうから、アニメだからこそ可能だったと思います。
嫌がらせで畑を荒らす場面も大合戦的な戦闘場面にしては地味すぎて採用されなさそう。
女たちが塩の効いた握り飯を作るところもね。
さすがに雲梯から焙烙玉などは過剰演出だと思いますが、南蛮渡来の派手な鎧を含めてうまくできてますね。

ストーリーはストレート。

筋書きはとてもストレートでシンプルです。
タイムリープ的な時代物としては何度も繰り返されている展開です。
とてもわかりやすくて混乱することはないでしょう。
大人には少しまどろっこしいかもしれませんね。
又兵衛と廉姫の心理描写も子供にも分かりやすくしてあるために大人にとっては説明しすぎで興をそぐかもしれません。
その辺は往年の戦国ドラマも同じような展開でしたから、安心して見られると考えることもできます。
結末の唐突さがびっくりすぎて混乱しましたが、タイムリープもののたたみ方としては妥当なのかなと思います。
あんまり綺麗にまとまると野原一家が現代に帰りづらくなりますからね。
しんのすけが変えてしまった歴史を元に戻すための責任の取らせ方もありがちと言えばありがちです。
全く伏線がないところはひどいと思いますけど。

クレしんだからこそできた。

アッパレ戦国を見た直後は「こんな作品見たことない」と吹き上がりましたが、単純に私が知らないだけで70年代くらいには骨太の超対策戦国アクション映画では「こんな世界観」は再現されていたような記憶もあります。
その頃のドラマの中心は時代劇でしたからね。
黒澤明の映画はこんな感じだったでしょ。
我々が古い作品を忘れてしまった上に見たがらないだけでした。
たった今気づきましたが、合戦シーンで黒と赤の鎧で戦うのは黒澤明の影響か。
過去の作品を再評価する機会になったのは良かったかなと思います。
昔出来ていたことが今できなくなっている寂しい話ですけどね。
あの当時の作品は迫力がありますが、相当無茶な撮影で役者に負担をかけているので同じことを今やるのは難しいでしょう。
役者と馬を怪我させるわけにはいきませんからね。
どうしてもやりたいなら CG かアニメしかない。
CG 再現すればリアルなんでしょうが、どこまでも力を注げてしまうので莫大な予算でもない限りやりづらいと思います。
アニメにしても同様ですが、クレヨンしんちゃんの画風なら適度な具合に抽象化できるのだと思います。
これが実写の時代劇だったら、時代劇ファンの大人だけが見て、その良さが子供達にも大人の興味ない人達にも伝わらなかったと思います。


繰り返し見る。

これを書きながらもう一度見ています。
時代考証などを含めて考察するのも楽しいです。
プライム会員特典で何度でも見れるので今後の教材としても使います。
勉強がはかどるわ。