ぺんちゃん日記

食と歴史と IT と。 Web の旅人ぺんじろうが好奇心赴くままに彷徨います 。

眺めの会・10月下旬 『竜とそばかすの姫』

この2ヶ月間、ゴッドファーザー三国志など重厚長大な作品が続いて重たい気持ちです。
特に見たいタイトルもないのでプライムビデオの会員特典無料のコーナーから選びました。
つい最近テレビ放送もあった『竜とそばかすの姫』です。

視聴プラットフォームはアマゾンプライムビデオ。
プライム会員特典で無料で視聴できます。
年齢レーティングは PG 12です。

竜とそばかすの姫。

2021年に公開された日本の長編アニメ。
監督脚本は細田守

あらすじ。

幼い頃の事故で母親を失ったことをきっかけに歌うことができなくなった女子校生のすず。
親友の誘いでバーチャル空間「U」に入って仮想の自分「Belle」になってみると歌声が出せることがわかる。
Belle(ベル)の歌は徐々に人々を惹きつけ世界的な歌姫となるが、ライブに龍が現れ乱闘を起こし、ライブは中止となる。
傍若無人で嫌われ者の竜にベルは何となく心を惹かれる。

見終わった感想 ネタバレ含む。

歌の力ってすごいね。

すごく良かった。
すっごい盛り上がって感動のあまり涙腺崩壊しそうだった。
歌に入った時の盛り上がりがすごい。
乗り気が薄かったのが吹っ飛んだ。
歌が途中に挿入される作品でこんなに没入したのは初めてかもしれない。
ディズニーアニメのように 唐突に歌が始まると萎えてしまうタイプなんだけどこの作品には不思議とそういうのがなかった。
声優から歌手に声が変わるところも大きなギャップはなく、なめらかに合流して、終わるべきところで終わってた。
竜がベルに向けてアンサーソングを歌い始めたらどうしよう?
と、謎の不安に駆られるシーンが一箇所だけあったけど、蛇足がなかったのは本当に良い。
曲の音造りは日本人好みだし、歌詞も日本語だから翻訳による違和感もなかった。
多くの人はディズニーアニメを見た方が良いと言うだろうけど、 私には受け入れやすかった。
英語圏の人たちは最初からこういう体験をできているのだとすると羨ましい。
ネイティブっていいね!


結末は後から振り返るとよくわからん。
サマーウォーズと重なる部分もあって途中まで凡庸なストーリーだった気がする。
竜の正体に特別な伏線がないので驚いた。
母親の事故とか過去の回想に絡んでくるものだと身構えていたら唐突に東京の兄弟が現れた。
兄弟との出会いに必然性がなく、問題の提示と解決方法唐突で随分戸惑った。
偶然写り込んだ景色に見覚えがあるとか話ができすぎ。
東京まで会いに行くと言う行動も謎。
正体を明かして会いに行ったところで家庭内暴力が解決するのか?
必然性がいまいちわからない。何もかもが情動的で無計画。
気持ちだけで突き動かされている。
それなのに訳も分からず感動しちゃった。
だから、まるで狐に化かされたような気持ちになってる。
でも歌ってそういうもんじゃないの?
何の脈絡もないのに背中を押してくれるのが歌。
この人のために歌いたいって気持ちに説明は要らないでしょ。
むしろ彼らを助けるためにチャリティーライブなんかを行ってしまうほうが興ざめだよ。結局金かい!!って。
確かにロジックでは説明しづらい筋書きではある。
だからこそ歌は人を突き動かすと逆に証明しているとも言える。


フェイクニュースに対する向き合い方は時代に合っていると思う。
サマーウォーズからアップデートされたのはここ。
現代社会の根深い問題をちょっと意地悪な角度から、しかも嫌な感じなリアリティで再現している。
ちょっと悪ノリが過ぎてる気もするが私は好き。
細田守はインターネット空間の優しさとか悪意を描かせたら右に出る者はいないほどの腕前だね。
海外の SNSとはまた空気感が違うだろうから この辺の面白味は日本の 作品だからこそ味わえたと思う。
うちらが見てる景色をうちらの価値観で表現してくれるクリエイターがいるって素晴らしいね。


小さな仕掛けの密度の高さはサマーウォーズの時から好き。
駅の告白シーンで高校生男子がパニクっているのは完全にコント。
告白シーンはどんな作品であれそわそわして見ていられないんだけど、画面の左端を使って隠してくれてるのは優しさ。
女子グループのいざこざを信長の野望的ヘックス画面で表していたので本当にツボ。
あの年頃の女は一度くらいワルに恋をするってのは優しくないな。
大人の経験談でそれを言われては自意識が邪魔をして恋できなくなる。
青春の描きかたの是非は男女で評価が分かれるかもしれん。
人気 YouTuber を漫才形式で茶化す二人が悪意ありすぎて 失笑する。
繊細チンピラババアの見苦しいセルフブランディング( アバターを赤ちゃんにすれば不利になった時弱者ポジションを取れるテクニックでしょ? )を図星をついて一刀両断。
竜の少年の YouTube ウィンドウを人混みをかき分けるように一枚ずつどかしながら探すのは昭和にはない表現だったね。
細田作品はそんな例え方があるのかと毎回驚かされる。


今回の眺めの会は軽く終わらせてくれなかった。