眺めの会・4月上旬 『逆境ナイン』
思い出の作品、実写化されているのにまだ見てない。
今回は 情熱的で笑える作品を見たいなーと思いました。
前回の『ソウル・キッチン』もそういった作品だったから連続ということになるのかな?
情熱不足で物足りなかったか、あるいは面白かったので同じ路線を続けたかったか?
そこで思いついたのが『逆境ナイン』
原作は80年代末期にカルト的な人気を博した島本和彦の漫画。
野球漫画の常識を破って、試合中の競技内容についてほとんど描かずに徹頭徹尾精神論に終始した規格外の漫画でした。
弱小チームが猛特訓で競合に競り勝つ筋書きに食傷気味だった私にはドンピシャに入りました。
原作が本当に好きで人生を変えるほどだったと言っても過言ではありません。
野球の試合なのに112点入る、しかもそれを逆転するなんてある?
「こんな馬鹿馬鹿しい展開は漫画ではありえない、読者がついてこないからだ」
なんて台詞が組み込まれている漫画、ある?
その無理な展開を強引に押し通すパワーワードの数々。
すっかり思い出散歩してしまった………。
この逆境ナインは2005年に実写映画化されていたのでした。
好きだったという割には見ていないばかりか存在すら忘れてました。
ただし漫画の実写化作品を熱狂的な原作ファンが見るのは要注意。
不用意な改変で炎上した作品は数知れず。
ちょっと不安ではありますが、悪い噂は聞かない。
一般的には学園コメディ作品は失敗が少なく、原作が完結して時間が経っているので 大丈夫だと思います。
今回の試聴プラットホームは Amazon プライムビデオ。
有料コンテンツとなっています。
逆境ナイン。
2005年に公開された日本のコメディ映画。
甲子園に出場するために懸命に努力する高校生たちの斜め上の悪戦苦闘を 屁理屈の精神論で丸め込みながら進んでいく。
監督は羽住英一郎。
脚本は福田雄一。
原作は島本和彦。
主な出演者は玉山鉄二、堀北真希、田中直樹、 藤岡弘。
上映時間は115分で言語は日本語。
あらすじ。
勝利至上主義の高校、全力学園の野球部は万年一回戦負け。
野球部キャプテンの不屈闘志は校長に呼び出され野球部の廃部を告げられる。
野球部を存続させたい不屈は甲子園優勝を約束し、それを証明するために強豪高校の日の出商業に練習試合を申し込み勝利すると宣言する。
部員達を説得して猛練習に励むが、次々と「逆境」が襲いかかる。
見終わった感想 ガチガチネタバレ。
真剣にバカ、無理が通れば道理が引っ込む。
笑った。
原作は熱血スポ根とギャグの要素が融合していますが、映画版はコメディ要素が強い。
監督の サカキバラ・ゴウがボケキャラになっていたのが味付けを大きく変えたと思う。
監督ってもっとギトギトして 精神的圧力の強い人だと思っていたから驚いた。
ちなみに私は原作を熱血スポ根として楽しんだタイプ。
監督が謎の覆面レスラーとして登場した時は正直「なんじゃこれ?!」と思ったけど、その辺は面倒くさくなりそうなので後にする。
監督以外にも違和感のある場所はあったけど、新しい解釈を提示されたようで悪い気はしない。
コメディ部分は十分にバカバカしくて楽しめた。
監督の名言が出るときにドーンとエフェクトがかかるのは映画ならでは。
自業自得の石碑が最後まで残っていて笑える。
不屈がスナイパーの打球を受けて失神して目覚めるまでの時間が本当に一緒で暗転すらなかったところも good。
112点差のスコアボードを見て後ずさる姿も良かったね。
スナイパーの打球が投手に直撃した瞬間、映像がレントゲン写真になるの、 超笑える。
スタジアムに続々と救急車がやってきて負傷したピッチャーが運ばれていく描写は原作にはなかったと思う。
原作厨のめんどくさいところ。
さて後回しにしていた サカキバラ・ゴウ。
謎の覆面レスラーとして登場するなど、原作からはかけ離れている。
キザな態度で頓珍漢なことを言うボケキャラになっているせいで含蓄のある言葉が中身スカスカになってる。
こんな軽い人の言葉で発想の転換なんてできる?
試合を左右する決定的な場面なんだけどなー。
そこら辺がちょっと引っかかりつつ、コメディの空気感としては正しいかもと思ったり。
つまり読み違えているのは私。
ただ名言が幅広い層に受けていたのは事実。
私の解釈が偏っていたわけではないはずだ。
しかし映画では名言はそれほどクローズアップされていない。
あれは島本和彦の迫力ある絵柄があってこそ成立する島本芸なのかもしれないね。
原作厨としては寂しいが映画版の監督 (羽住 英一郎)の解釈ではそうだったのだろう。
私がどうしても織り込んで欲しかったのは、9回裏の攻撃で連続ヒットを繰り出す場面。
日の出商業キャプテン「偶然だ、まぐれはいつまでも続かない」
不屈「まぐれが10回でも続いた時まだそれを人はまぐれと呼ぶか?否!実力と呼ぶ ! 最後のバッターが誰になるかはわからんがお前は実力で負けるのだ」
飛行機がなぜ高く飛べるのかのところに続いて燃えるところだったと思うんだけど。
桑原さんの存在をカットしたのはかなり苦しいが、話を整理するために必然的にこうなる。
しょうがない。
問題は遊園地に行って部員たちに目撃されるまでの流れをどう整理するのか。
親戚の子と行くって………唐突だな。
マネージャーに汚名を着せてるし、無理があるなとモヤっとした。
日没で試合が翌日になった経緯がカットされていたのも苦しい。
映画としての流れはあれで正しいんだけど、男球を習得するきっかけが少し弱い。
あれは一晩眠って覚悟を決めたからこその盛り上がりだと思う。
男球の再現性はとても高くて満足しているけど。
いくつかケチをつけたけど、再現性の高い場面がたくさん見られたので満足はしている。
日の出商業との練習試合が決まったことを告げられた部員達の「無理だ~~~」の様子が思い描いた通りだった。あれは最高だった。
他にも気に入った場面がたくさん。
寝ぼけて腕を踏んづけるベキベキってとこ。
新屋敷と山下のキャラがちゃんと立ってて安心した。
サッカー部への風評被害が甚だしいが。
ハンダゴテでラジオを直している時に火傷のエピソードだけでなくダンプにひかれそうなところを救済する所まで再現されていて嬉しかった。
不屈役の玉山鉄二の演技は良かった。
「まだ左腕が残っている」
といったかっこいい役回りだけでなく。
「廃部だ !」「決定ですか ?」
「全然勉強してないんだ 」
などの弱気なところもうまく再現できてた。
舞台は三重県。
原作では全力学園の所在地は明かされていないが、映画版でははっきりと三重県ということになっている。
三重県出身としては心が騒ぐ。
伊勢うどんの看板が出てきてまさかと思ったが、なぜ三重県。
コンビナートとかジャスコとか、いかにも三重県。
主題歌が岡村孝子なところも含めて東海地方と縁が深い。