ぺんちゃん日記

食と歴史と IT と。 Web の旅人ぺんじろうが好奇心赴くままに彷徨います 。

眺めの会・12月上旬 サマーウォーズ

12月なのにサマーかよ!

ここ最近の眺めの会は実写映画、特に海外作品率が高くて アニメーションから遠ざかっていました。
今回は日本のアニメを選びたいと思います。
相変わらずメタバースが話題なので、『レディプレイヤーワン』に引き続いて細田守監督の長編アニメ『サマーウォーズ』で行こうかと。

毎年夏が近づいて細田守監督の新作が公開されると、サマーウォーズがテレビ放映されるので、非常に今更感があると言うか、何か見てもいないのに見た気になってまだ見てませんでした。
プライムビデオで無料で視聴できるんですね。
以前は有料だった気がするのですが………無料に越したことはない。
こんな真冬にサマーの映画を見るのはいかがなものかとも思いますが、見たい時に見るのが私のスタイル。
細田守監督の最新作『りゅうとそばかすの姫』も仮想空間が舞台となっていることをたった今知って驚愕している映画弱者の私に寛大なる処置を。

この作品が公開されたのは2009年。
東日本大震災より前の作品ですね。
日本の作品の場合、震災より前か後かで受ける印象が大きく変わってきます。
IPhone はガジェットオタクの間で大人気でしたが、世間的にはまだガラケーの時代。
メタバースと聞くと新しい流行に感じますが、この作品が公開される少し前、2008年頃にかけて Second Life と言う仮想空間が社会現象になりました。
そんな時代の空気感を思い出しながらみたいと思います。


サマーウォーズ

2009年に公開された日本の長編アニメ映画。
監督は細田守
脚本は奥寺佐渡子。
主な声の出演は神木隆之介桜庭ななみ谷村美月
上映時間は115分で言語は日本語。
年齢レーティングは全年齢。

あらすじ。

インターネットが急速に進歩して社会に欠かせないインフラとなった。
特に仮想空間OZでは自身のアカウントで現実の自分と同じ体験ができる。
買い物、スポーツ、コミュニケーション、仕事まで行える。
そのOZのメンテナンスのバイトをしていた高校生の健二は 憧れの先輩夏希から特殊任務のバイトを頼まれ、彼女の親戚が暮らす長野県上田市武家屋敷に滞在することになる。
慣れない大所帯の対応に戸惑う健二のOZアカウントが何者かにハッキングされ、 OZワールドは大混乱。
その影響は現実世界にも及びつつあった。

見終った感想 ネタバレを含む。

最高の夏物語。

面白かった!
日本の夏を彩るジュブナイルアニメだと思います。
緩急のメリハリが効いててテンポがいい。
辛いものを食べた後に甘いものを食べるような永久ループ的楽しさでした。
田舎の古民家で高校生と親戚達が力を合わせてゲーム機をカチャカチャ。
彼らの目標は世界の危機を救うこと。
このスケール感のギャップがたまらない。

仮想世界で発生する大問題がいい具合に風呂敷が広がったところで、現実世界の小さなトラブルで矮小化。
この現実と非現実のせめぎ合いが テンポ良くて気持ちいいよ。
その象徴が大型サーバの熱暴走。
氷柱で冷やしていたものの、親戚の兄ちゃんがお婆様の遺体が痛まないように冷やすために持って行ったのが原因。
仮想空間に足を突っ込んでない人にとっては、目の前のおばあさまの方が大切。
それもそのはず。
高校野球は行われているし、テレビ中継も平常通り。
街の様子も多少混乱してるけど、 何気ない日常が続いている。
息子?の試合結果が気になってのめり込んでいるうちに普段通りにせんべいかじりながら中継見てる。
笑いどころ突っ込みどころではありますが、世界崩壊の直前って案外こんなもんかもしれない。

続柄がよくわからない親戚達と時間と空間を共有するの、 冷静に考えれば大嫌いなのに 悪い気がしないのがアニメーションの不思議な力。
お盆で帰省する前にサマーウォーズを見ておけば 親戚付き合いも少しはマシに感じるかも。
サイバー空間の戦争をテーマとするなら、東京が舞台でも問題ないのに田舎にしたことで、仮想世界と現実世界だけでなく都会と田舎、新しいものと古いもの、匿名性と血縁関係、若者と年寄りなどなど様々な対比を描ける舞台となったと思います。
葬式そっちのけで戦を優先するのはいかがと思うけど。
冠婚葬祭の場面では男たちは本当に役に立たないw。
でも負け戦を目前にしてみんなで腹ごしらえする姿はなんだか感動的だった。
ばあさんの手紙のマジックかもしれない。
結果的にはあれで形成が変わったので、黒電話で尻を叩かれた人達もこんな感じで戦をしていたのでしょう。


喜怒哀楽の 描きかたもよかった。
おばあさんが急に亡くなって夏希が縁側で泣いている場面。
彼女を慰めるために健二がそっと寄り添って指を絡ませる二人の後ろ姿がとても切ない。
あの距離感と指を絡ませ方グッときますね。
エンディングでそのカットが山下達郎の歌とともに流れるのですが、セリフがないと 最高のラブシーンの見えるんですね。
実際の場面では夏希は悲しみに打ちひしがれて号泣してるんですけど、背中だけ見るとラブラブに見えるところが はっとなりました。
あと忘れられないのが、ばあちゃんの誕生祝いの紅白饅頭の注文を葬式饅頭に変えなきゃていう何気ないつぶやき。
何やるかわかんない時に不謹慎の方向で気づきを発揮するタイプこそ絶対私。


諸悪の根源を米軍に定めて真偽不明で有耶無耶にするところは実に日本的。
ここに力を注いだところで勧善懲悪のテンプレに収まるだけという気がしないでもないのでこれでも良いか。
現実世界と仮想世界をいったりきたり、二つの世界で色々なことが起こるのでガチャガチャしている感じは否めない。
これだけの情報量をよく詰め込んだなと私的には感心するのですが、 インターネットの使われ方が分かっていない人には置いてけぼりかもしれません。

数学オリンピックの要素はよく盛り込めた。
数学オリンピックを扱った映画ってあんまりないと思います。
侘助おじさんのことを「先輩」と呼んでいたから、もしかすると彼も数学オリンピックの選手だったかもしれないですね。
カーナビが誤動作する時に道の行き先案内の標識がパズルみたいにシャッフルされる演出がすごく好き。
あと花札も。
花札は古くて新しい。
小学生の頃にじゃりン子チエを見て興味を持って覚えたものの、 今ではきれいさっぱりルールがわからない。
もっと上の世代なら教養として知っているだろうけど、自分の世代まで降りるとこんな調子なので、今の若者はもっと分からないと思います。
格闘ゲームで勝負をつけるよりも、こっちの方が老若男女幅広く楽しめますよね。

レディプレイヤー1と比べるのはあれですが、アニメの手触り感の優しさも含めてとっつきやすい。
アニメ絵とドット絵の抽象度の高さがいいですね。
イカ釣り船のおじさんのアバターイカスミ色の黒頭巾をかぶった サムライだったのが個人的にツボ。
みんな自分のプロフィールをうまい具合に抽象化してアバターに取り込んでました。
ガラケーのドット絵で表示される夏希のアバターが可愛い。
クジラからもらったレアアイテムを装備した姿は神々しかったけど、ドット絵になると 途端にビックリマンチョコみたいになるんだね。
海外作品では 未来はリアリティある映像であるべきと考えるようですが、日本では可愛いが正義ですよね。

サマーウォーズとレディプレイヤー1、どっちが好きかと問われたら圧倒的にサマーウォーズです。
レディプレイヤー1は現実世界がクソすぎて仮想世界に夢を託すディストピアものなので比べるのがおかしいかとは思いますが、 世界の楽しみ方もエンジョイ勢とガチ勢の違いくらい剥離があるので。
日本のプレーヤーはレアアイテムをゲットできた人を見ず知らずのプレイヤーたちが祝福するんだそうな。
日本のゲーム動画配信プレイヤーはファンタスティックなプレイでアピールするのに対して、海外では強さを誇るのだそうだ。
人々の仮想空間に対する付き合い方もサマーウォーズのOZの方がバランスよく融合できていると思います。
仮想世界は闘技場でもなければカジノでもありません。
田舎の人たち、OZ ワールドに夢中になってないだけでみんなアカウントは持ってましたからね。
それくらいがちょうどいいですよ。


いやー楽しかった。