ぺんちゃん日記

食と歴史と IT と。 Web の旅人ぺんじろうが好奇心赴くままに彷徨います 。

眺めの会(定期映画鑑賞会)1月中旬 劇場版 SPEC 結

去年の宿題を回収。

高校生娘に勧められてうっかり手を出してしまった連続テレビドラマ『 SPEC 警視庁公安部公安第五課未詳事件特別対策係事件簿』 が最終章を目前にして宙ぶらりんになっていたので走り終えました。

yasushiito.hatenablog.com

正直劇場版 SPEC 天がそれほど心に響かず、2週間に1度の機会を利用してみたいと言うほどの気持ちが起きませんでした。
そこで年末年始の休みを利用して4日連続鑑賞会の一部として楽しもうかと考えていたのですが、予想以上に慌ただしく、おまけに肛門まで痛めてしまったので何一つ鑑賞できませんでした。
しかも前回の「男はつらいよ」の感想を書く時間も取れなくて、 締め切りギリギリまで 遅れてしまいました。
次のタイトルが決まらないなど、準備不足もあることですし、ちょうど良い機会だと思ったのでチョイスしました。

テレビドラマで人気を博した SPEC の劇場版の最終章で、起床転結に当たる結 の作品となります。
このシリーズの特徴として、ナンバリングが独特で見るべき順番は分かりにくいのですが、『結』に至っては更にわかりづらく、前後編に分かれていて、前編が漸ノ編、後編が結爻ノ篇となっております。

これ、一本じゃ終わらんのか~~~い。

何の予備知識もないまま見てしまったので、『話がすごい盛り上がってるんだけど、残り時間で終わるんかいな?」 とやきもきしたら肝心なところでぷっつりと終わったと言うショッキング。
どうやら劇場公開日は一か月遅れで後編が出たようですね。
これを劇場で前編だけ見せられた人はどう思ったのでしょう?

まあ私はプライム会員特典で無料で見れたので時間以外に盗まれるものはありませんでしたけど。

ということで、今回も視聴プラットフォームは Amazon プライムビデオ。
プライム会員は無料です。
前後編に分かれているので、見る順番だけは気をつけて。


映画「劇場版 SPEC~結(クローズ)~ 漸(ゼン)ノ篇」

映画「劇場版 SPEC~結(クローズ)~ 漸(ゼン)ノ篇」

  • 発売日: 2014/09/27
  • メディア: Prime Video

劇場版 SPEC 結。

2013年日本で公開されたサイキックバトルアクション映画。
TBS のテレビドラマから始まって劇場版としては2作目。
前後編の2部構成に分かれていて後編で完結となっている。
監督は堤幸彦
脚本は西荻弓絵
主な出演者は戸田恵梨香加瀬亮向井理など。
言語は日本語で上映時間は前編が95分、後編が91分。


あらすじ。

超能力を使った犯罪を捜査する公安部・通称ミショウに配属された当麻と瀬文は事件を追いかけるうちに、超能力者をスペックホルダーと呼んで都合よく利用する謎の組織とスペックホルダーを統率して対抗しようとするニノマエの対立に巻き込まれていく。
スペックホルダーの当麻は刑事として正しい道に進もうとする。

見終わった感想そしてネタバレ。

邦画の良い所と悪い所が全部詰まった2本。

前回の記憶を振り返ってみると SPEC 翔と SPEC 天の順番を間違えてストーリーのギャップが埋まらなくていまいちだったことを思い出しました。
それであまり期待していなかったこともあって予想以上に楽しめました。
プライムビデオで無料で視聴できたことを思えば満足に足りると思います。

私は少年ジャンプのバトル漫画が豪華俳優陣で実写化されたと想像しながら視聴しました。
空想上の原作漫画と重ね合わせながら見るだけのリテラシーがあれば原作漫画の面白さも理解できるし、実写化で原作の世界観をぶち壊されることもなかったのでダブルでお得だったかと思います。
もしこれがジャンプ漫画の実写化だったら頑張ったほうだと思いませんか?
ハリウッドに比べれば CG がしょぼいとか批判はあるでしょうけど、こういう世界観の作品は邦画でしか作れないでしょ?
日本人が日本国内で戦う作品は日本人が作るしかない。
監督がやりたかったことはわかったので納得したまま終われました。
肝心のメッセージが説明的で長ったらしい台詞を絶叫する繰り返しだった所などは邦画特有のダメなところだったと思います。
回想シーンがやたら差し込まれてテンション下がるところも Bad。
前後編に分けなくても密度高く描けたでしょ。
インディーズならともかく、商業でベテラン監督が作るべき作品か否かという評価が分かれるのは仕方ありませんね。
純粋な映画ファンなら激おこな要素はたくさんあります。

ありそうでない SF 能力バトル。

このシリーズはできそうでできない、ありそうでない形で完結しました。

長期にわたって製作されて大きな進路変更もあったことでつかみどころが難しいシリーズだと思いますが、私としてはコメディー要素満載の SF サイキック能力バトルと 受け取ることにしました。
何も知らない人に見せたら週刊少年ジャンプのバトル漫画が原作だと感じるのではないでしょうか。
大人向けの独特なテイストの刑事ドラマとして連載が始まって、ある程度人気が出たところでテコ入れでバトル漫画に進路変更するところとか、能力がインフレしすぎて収拾がつかなくなるところまで実にジャンプ的。

手触り的にはシティハンターを思い出しました。
連載初期は都会の隙間で生きる大人たちのちょっと切なくてハードボイルドなテイストで一話完結の形で描いていましたが、連載を重ねるにつれて物語が大きくなっていたように記憶しています。
さすがに CITY HUNTER は核戦争ほどにスケールがインフレなどしませんでしたが。

奇想天外荒唐無稽のインフレっぷりは テニスの王子様にも通じるところがあります。誰だゲームセンターあらしって言ってるのは。
リアルから荒唐無稽の振れ幅が大きい作品がギリギリ許されて続編が制作されるのもジャンプ系列の人気漫画ならでは。
ただ SPEC のように、大人が主人公の刑事ものが少年ジャンプで連載できるかといえば難しそうです。
かといって刑事ドラマで能力バトルをやりたいと言って実現するかといえば、それもまた難しい。
漫画には漫画の、ドラマにはドラマのヒット法則があるから、法則から崩れた企画が通りにくいでしょうからね。
そういった意味で、ありそうでなかった作品だったと思います。

ユニークな俳優が揃っているところはドラマ中心のシリーズだったことが大きいのではないかと思います。
もし漫画原作の実写化だったとして、こんなに豊富な人材を揃えることができたでしょうか。
漫画原作だったら、原作ファンの怒りはこんなものですんだでしょうか?
漫画原作だったら実現できなさそうな要素がたくさんあります。
そういった意味で、できそうでできなかった作品だったと思います。

テコ入れでバトル形式になってしまって読むのをやめた作品もたくさんあるので、刑事ドラマを期待していた人の失望感は分かります。

振れ幅の大きさの違和感をどうするか。

当麻紗綾のキャラクター造形はエキセントリックでありながらもずば抜けた才能を秘めているというところもあって、とても振れ幅が大きいです。
ましてや物語後半では、人類の命運を背負って、異世界の扉を開けたり世界を導くような現実離れした能力を開花させます。
ここまで行くとギャグパートとシリアスパートを演じ分けるのがとても難しい。
漫画だとデフォルメキャラにできるので全く違和感なく物語を進行できるのですが、実写では無理。
戸田恵梨香はキャピキャピギャルから化け物キャラまで 振り幅の広い当麻紗綾を演じきりましたが、きっと楽しくて難しかった仕事だと思います。
ギャグとシリアスの切り替えは、この作品に限らず、漫画原作を中心に、避けては通れない表現だと思うので、日本の映画関係者は何とかして欲しいところです。
これができないと漫画のデフォルメ描画場面の表現でことごとくこけると思うのです。
それができないから、シリアスパートではセリフを絶叫するしかない。
この作品でも 物語の核心に迫るほど、長いセリフを絶叫する傾向ありました。

書道シーンが最高。

このシリーズを通しての最大の魅力は、当麻紗綾がクワッと目を見開き、 事件のキーワードを書道をするところだと思います。
舞い散る半紙と明快な推理、もう最高。

あの文字、ドラマのシュールコミカルさもあって、ぱっと見では子供が遊びで書いているように見えますが、細部までデザインが考えられていてアート性の高い 美しい文字だと思います。
誰が書いているのか気になって調べましたら、 中塚翠涛という書道家だそうです。

www.suitou-nakatsuka.jp


後編では書道する場面も含めて過去の作品まで見ることができますが、惜しいことに前編では見られません。
あの演出なしで一本が終わるなんて、観客に対するお預けもいいところでしょう。
野々村係長の手紙で過去を振り返るところに30分使うくらいなら、小さい推理くらいは入れられるでしょ。
あの野々村係長の手紙、本当に長い。
追伸と言いながら進捗率50%くらい。
それは追伸とは言わない。
変なところに時間と予算を突っ込み過ぎている印象が拭えないので、 自然と口が出てしまいます。

コミカライズされてた。

この作品、コミカライズした方がわかりやすくて親しみやすいのではないでしょうか?
と思ったら、当たり前のようにコミカライズされているんですね。
しかも劇場版 SPEC 天も含めて。
ファティマの予言当たりは劇中でも漫画家されてましたし、意識してないはずがありませんね。



実写のイメージが強すぎるから可愛い絵柄だなぁと感じてしまいましたが、 どうなんでしょう。
イメージを膨らませる手助けにはなると思います。

完結してくれたのでめでたい。

長編シリーズって完結させるのが難しいので、完結まで持っていけた手腕に拍手を送りたいです。
俳優が駆け足でスターダムにのし上がりギャラが高騰して続編が進まないまま立ち消えする恐れも十分にあったので、ちゃんと終われて良かったですね。
それ以外にもキャストの不祥事、主要キャラの中の人がお亡くなりになる、監督が風呂敷をたためないまま逃亡、という話は枚挙にいとまがありません(具体例なし)。
アメリカの人気連続ドラマですら最後はがっかりのパターンはありますよね。
プレッシャーによく答えてくれたと思います。

最後を見届けた今はとても気持ち良いです。