ぺんちゃん日記

食と歴史と IT と。 Web の旅人ぺんじろうが好奇心赴くままに彷徨います 。

久しぶりに三国志を読み返そう 宮城谷昌光・三国志

読み返したい。

久しぶりに三国志読みたいなー。
吉川英治版の三国志青空文庫で自由に読めるようになって、時間を見つけて美味しい所だけ拾って読んでます。
若い頃に何度も繰り返し読んだ三国志

三国志 (1) (吉川英治歴史時代文庫 33)

三国志 (1) (吉川英治歴史時代文庫 33)

これこれ、若い頃に読んだ文庫本。


でもちょっと待ってください。
三国志演義ベースの話も良いのですが、もっと深く突っ込んで読んでみたいという気持ちは出るものです。
なぜなら若い頃に「三国志が好き」と言ったら、あんなもん7割ウソとマウントを取られて悔しかった記憶がよみがえる空です。
そんなしょうもないツッコミ入れてくる人なんて、きっと誰かの受け売りで、どの点がどう違うか説明なんてできないと思いますが、 全く違う立場から描いた作品も読んでおかないと物語の奥行きが深まらないというのも事実です。
「じゃあ、どの三国志を読めばいいの?」
と言うとなかなか困ります。
昔は困りました。
リアル寄りで比較的読みやすく、全体を通して描かれている三国志となると意外と選択肢が少ないと思います。
そこにうまくはまるのが、宮城谷昌光三国志だと思います。
ということで、ここからは三国志演義ぐらいは普通に知っているけど、 もう一歩先に進みたい人向けの話です。
全く三国志を知らない人が手を出すにはハードル高い作品だと思いますよ。

合本 三国志【文春e-Books】

合本 三国志【文春e-Books】

紹介しているのは Kindle 版の全巻まとめたタイプです。


以前から読みたいなーと思っていた宮城谷昌光三国志
実は昔少し読んだのですが、その当時は玄徳が蜀に入ったあたりまでしか執筆が進んでおらず、それっきりになっていました。
続きから読むとしても、すでに本のページをめくれないので必然的に電子書籍で読むことになります。
途中から電子書籍って………半端すぎる。
そんな感じでクライマックスを前にして尻切れトンボになっていたの ですが、先日入院してストレス溜まっている時に完結していることを知りました。
全12巻セットで7000円台。
これなら買える !
退院できた開放感で全巻まとめて購入しちゃいました。
しかも、どういうわけかポイントで3000円位帰ってきました。

じっくり読み進めたいと思います。

好き嫌いがはっきり分かれるであろう作家 宮城谷昌光

宮城谷昌光先生、古代中国を彩り豊かに描いてくれる数少ない作家なので私は大好きなんですけど、割と癖の強い作家なんじゃないかと思います。
まあこんだけ売れている人を捕まえてとっつきにくいとは見当違いも甚だしいと言われそうです。

ページを開いた瞬間分かると思いますが、漢字の圧力がすごい !
生まれてから一度も見たことがない漢字がぞろぞろと出てきます。
中国の歴史小説なんだから、読み慣れない文字が出てくるのは当然でありますし、三国志を手に取るならそれくらいの覚悟はあるかと思いますが、そんな読者の 気持ちすら打ち砕きに来る難読漢字の数々。
この独特の漢字の使い方こそが、宮城谷昌光のテイストであります。
三国志が好き」という理由だけで手に取った人は高確率で投げ出すことだと思います。
まあ慣れてしまえば簡潔にイメージが伝わってわかりやすいのですが、 それは私が事前に白川静の漢字の世界をインストールしているからかもしれません。
これが宮城谷昌光のスタイルであり、一貫して描かれる世界観であります。
他の三国志作品との差異をつけるために奇をてらってやっているわけではないことだけは記しておきます。

宮城谷作品のもう一つの特徴として、時代の遡りが激しいことが挙げられます。
祖父の時代から描かれるのは普通です。
大河ドラマでも主人公が生まれたあたりから描くので得意風変わりなスタイルではないはずですが、何しろ祖父と父の活躍がかっこいい。
祖父の世代をここまで丁寧にかっこよく描く作家もなかなかお目にかかりません。
主人公が交代したんじゃないかと勘違いすることもしばしばあります。
この描き方はよく考えれば当然で、どんな家柄のどんな人間関係で育まれたか、その前提が共有されることで主人公の人間像が的確に伝わってくれます。
特に歴史ドラマでは重臣たちと家の関係、諸外国との関係などはある程度の期間を遡っておくと非常に理解しやすいです。
その時代は主人公が全く活躍しないので「これを読みたかったんじゃないんだけど?」と思う瞬間もあるかもしれません。
三国志に至っては曹操爆誕した瞬間どころか、祖父が子供の頃から始まります。

もう一点、宮城谷作品の特徴をあげてみますと、 登場人物たちを少し離れたところから俯瞰してみることが多いと思います。
主人公に一方的に肩入れするあまり、ライバルをわかりやすい悪人にしたてたり、負けた側を道化にしない冷静さがあります。
善人悪人に関わらず必死に生きた人物にリスペクトを忘れないので、読んでいて不愉快になることは少ないかと思います。
その副作用として、胸がすくような冒険活劇のように消費しづらいので、気持ちを入れ込んでいる人にとっては不完全燃焼しがちかもしれません。

黄巾の乱その前に。

三国志演義劉備を中心に回っていくのに対して、この三国志の主人公は概ね曹操です。
玄徳は各地を放浪して中央政府からは遠かったので、玄徳を追いかけると後漢王朝の命脈がわかりづらくなるというのが理由のようです。
物語の始まりは、なんと曹操のおじいさん、曹騰が若かりし頃です。
どんだけ壮大なスケールで描くんだと目の前にした時途方に暮れてしまいます。
とはいえ、三国志演義を読むだけでは黄巾の乱が抑えが違った理由とか、十常侍とは何か、とか、何かと不明なことも多いのも事実です。
三国志の時代から遡って知ることで、三国志をさらに深く知ることができるのです。

物語の序盤、曹操劉備が活躍し始めるまで、知らないエピソードと馴染みのない名前ばかりで退屈かもしれません。
その空白を埋める絶好の作品なのですが、それでもしんどいかと思います。
地方では異民族が暴れまわってきて、大きな武功を立てた将軍もいるはずなのですが、そこには全くフォーカスせず、 京都の中の出来事を描き続けます。
宮中でドロドロと政治駆け引きがあるばかりで、華やかな一騎打ちが好きで三国志を読みたい人には辛い展開となっています。
と言うか、フルスロットルで面白いなら三国志はここから始まるわね。

この作者の特徴とも言えますが、妙にマニアックな豆知識が作品中で始まったり、本筋とは関係ない人物の活躍が取り上げられたり、「ちょっとその前に彼の不思議なルーツを紹介しよう」と歴史が遡ったりします。
各章ごとに立ち止まって3回くらい読み返すと「あーそういうことか」と一気に飲み込めるのですが、歴史の流れを大つかみするまでは大変かもしれませんね。
副読本として Wikipedia を開いておくと、クリックしたり戻ったりで情報を整理しやすいです。
小説に副読本ってなんやそりゃ?
むしろ Wikipedia を読みやすくするための副読本として選んだ方が良いかもしれません。

物語が中盤になって戦国乱世になってくるとすいすい読めるようになってきます。
三国志演義では全く活躍しない人物が意外と有能だったり、 大活躍した人物がほぼ手柄の横取りで全く絡んでいなかったり、熱烈な三国志演義マニアなら怒り出すんじゃないかと言う展開も読むことができます。
私はまだ最後まで読み通していないのでこの辺にしておきます。