ぺんちゃん日記

食と歴史と IT と。 Web の旅人ぺんじろうが好奇心赴くままに彷徨います 。

眺めの会(定期映画鑑賞会)6月下旬 パラサイト・半地下の家族

いよいよあの話題作に挑戦。

PC が破壊されて映画どころじゃないなと定期映画鑑賞会・眺めの会の6月下旬はパスしようかと頭をよぎりましたが、結局タブレットでできることは少なく、ビデオ鑑賞を中心に日中を過ごしていることに気づき感想文を後回しにしてでもとりあえず実施することにしました。
今回挑戦するのはアカデミー賞受賞で話題になった韓国映画、パラサイト・半地下の家族です。
まさにネット配信が開始された直後で、しかもプライムビデオが先行開始ということなので パスしている場合ではありませんでしたね。
韓国の社会問題をぶった切っている作品だと聞いて配信されるのが本当に楽しみだったんですよね。
今回の配信プラットフォームを Amazon プライムビデオ。
字幕版で画像は SD 版での視聴となりました。


パラサイト 半地下の家族(字幕版)

パラサイト 半地下の家族(字幕版)

  • 発売日: 2020/06/19
  • メディア: Prime Video

パラサイト・半地下の家族。

概要。

2019年公開の韓国映画でジャンルはコメディサスペンス。
上映時間は2時間11分でレーティングは PG 12。
監督はポンジュノ。
主演はソン・ガンホ、チェ・ウシク、イ・ソンギョン。

あらすじ。

韓国で生計を営むキム一家は貧困家庭で 、貧民街のアパートの半地下に住んでいた。
家族は全員失業中で低賃金の内職で生き延びていた。
ある日、大学受験に失敗して浪人中の長男のもとに家庭教師のアルバイトの話が持ち込まれた。
長男は大学生でないことを気にしたが、美大受験に失敗して浪人中の長女の助けを借りて在学証明書を偽造してもらい、大金持ちのパク家の娘に英語を教えることになる。
家庭教師としてパク家に潜入することに成功すると、パク家の妻は育ちがよく人を疑うことを知らないことに気づく。
そこでパク家の御曹司の絵画の教師として妹を紹介し、車の運転手として父を、家政婦として母を順番に紹介していくと家族全員が職を得ることに成功する。
キム一家は仕事ぶりもよく、雇い主のパク家との関係も良好で、人の良いパク夫妻の目を盗んで豪邸を我が家のように使って好き放題に暮らす。
そこに突然追い出したはずの、前の家政婦が訪れてきて、 豪邸に秘密があることが発覚する。
その隠された中から飛び出した恐ろしい事実に、キム家とパク家の運命が大きく狂わされ、やがては社会を震わす大事件を引き起こすことになる。

見終わった感想。

監督からはネタバレしないようにとお願いされている作品だったので、差し障りのない程度にしておきますが、きっと随所にネタバレ漏らしてしまうでしょうからご注意を。

いろんな意味で感情を揺さぶられる。

見終わった後のざっくりした感想を一言で言うと「いろいろ詰まった不思議な映画だった」という感じでしょうか。
韓国の超競争社会の過酷さを描いたメッセージ性の高い作品だと聞いていましたが、実際に見てみるとスリル満点。
緩急が鮮やかと言うか、ドキドキした後に笑わされ、ハラハラした後にまた笑わされて。
後からジャンルを見たらサスペンスコメディと書いてあったのでまさにその通りだなと思いました。
特にキム一家が大富豪の家に雇われて潜入していく様はスパイ映画を見ているようでした。
火薬や暴力や爆風に頼らずとも、CIA が出てきて国家権力が絡んだ陰謀ストーリーにしなくても、こんなにハラハラさせられるとは思いませんでした。
核のボタンを奪い合う場面などは本当は笑っちゃいけない悲しい問題にもかかわらず大爆笑してしまいました。
あの報道官のパロディのクオリティの高さといったら。
そこからのジャージャー麺、日記の行方とドタバタコントにも程がある。
8時だよ全員集合かと思ったよ。
だからこそ、そこからの落差がすごいんですけどね。

最高の暮らし。

あの豪邸は本当に素晴らしいですね。
絵に描いたようなお金持ちの屋敷です。
パラサイト一家が庭を眺めて過ごす場面は本当に素敵だったです。
誰もがあんな生活に憧れるはずなのに、屋敷の住人はその素晴らしさに気付いていない。
主人は仕事と家族サービスに忙しく家にほとんどいない。
娘は受験のストレスでそれどころじゃない。
息子は庭にテントを張って入りたがらない。
妻は家政婦にまかせっきりで興味がない。
そこにパラサイト一家は幸せな家庭を再現してくれています。
きっと屋敷の方もああいうハートフルな家族に住んで欲しいと思っていることでしょう。
日が暮れてリビングで一家団欒する姿も実に家庭的です。
とっても広い部屋なのに肩を寄せ合ってあれこれと話し合います。
お父さんはその中で、自分が罠にかけて追い出した運転手の心配をします。
きっと自分が失業した時の辛さを知っているので他人ごとではないのでしょうね。
自分が仕事を得るためと言っても悪事を働いたことは変わらず、罪悪感が消えないのでしょう。
そんなことからも 彼らが悪人でないことが伺えます。
そこでお母さんの名言。
「金持ちなのにやさしいなんじゃなくて、金持ちだから心に余裕があって優しくできる」「私だって金持ちになればもっと優しいよ」
このしっとりした手触りは万引き家族を思い出さずにはいられません。
きっと現代人はこんな時間を求めているんでしょうね。


分からない部分も多い。

日本は韓国と文化的にも近いので通じる部分は多いのですが、それでも分からない部分もたくさんありました。
まず日本には半地下というアパートがない。
坂の多い街で半地下的に見える住宅街とか、むしろおしゃれなアピールポイントだったり、2階建ての電車に乗った時の経験ではホームに立つ人の足だけが見える景色は貴重な旅のイベントだったように覚えていたり、半地下のネガティブイメージを掴みかねてしまいました。
映像を見てみれば、家の窓の目の前で酔っ払いがゲロしたり立ちションしてくる汚い治安悪そうな町と分かりましたけどね。

物語の中で重要なファクターとなる半地下特有の消せない臭いもイメージできません。
韓国の人にとっては 「あー、あれのことね」と分かるらしいのですが。
もしかしてシアターで鑑賞したら匂いが出てくるイベントでもあるのでしょうか?

そして超絶競争社会の中を完全に勝ち切った人の存在。
金持ちのパク家の旦那さん、容姿端麗・頭脳明晰・しかも人格もしっかりしている完璧超人。
日本のドラマでは金持ちキャラは悪いことをして儲けていて嫌な奴であることが多いのですが、彼は人の反感を買うような振る舞いはしません。
むしろ良き父良き夫として生きています。
こんなの架空の物語だけに存在する生き物でリアリティーが感じられませんが、実際にはいるらしいですほんとかよ。
まあそれは良いとして、演じているイ・ソンギュンがうっとりするようなイケボじゃないですか?おじさんのハートに突き刺してくるなんて本物。
一発で名前を覚えてしまいましたよ。

もちろん共感できる社会問題ネタもありましたね。
無料 wi-fi が届く場所を求めてうろうろするところとか、災害時に体育館的な場所が避難所になって雑魚寝するなどは日本でもあるあるな感じでした。
富豪のパク家の奥さんが情熱的で騙されやすいところは日本人も他人ごとではない。
特に日本の場合は知らない人の話ではなくファーストレ(ry。

韓国を取り巻く問題。

韓国社会の生きづらさは韓国人が自虐的にヘル朝鮮と呼んでいるらしいですね。
Wikipedia の項目にもなっています。

ja.wikipedia.org

パラサイト一家は貧困に陥ってはいるものの、致命的な失敗を犯したわけではありません。
むしろ十分な才能がある。
お父さんは温厚で人格にも優れて努力家です。
運転手で働く可能性を見つけたら即座に高級車のショールームに出かけて運転の勉強を始めます。
しかも見事に期待に応えて「本物」知っている金持ちの眼鏡にかなう働きぶりを見せます。
お母さんもお見事。
あの広い屋敷の手入れを一人でこなせるなんてハイパー主婦じゃないですか。
誕生パーティーのために庭に会場を作るテーブル運びでものすごいパワーを見せてくれます。
なんじゃこりゃ。
と思ったら、設定ではお母さんはハンマー投げのメダリストだったんですね。
お父さんと口喧嘩になった時に力勝負なら絶対負けないと自信をみなぎらせていたので、何らかのバックボーンがある人だなとは思いましたがトップアスリートだとは思わなかった。
その説明を見落としてしまっていたのでしょうね。
中庭でハンマーを投げて遊ぶシーンを見た時に「素人にできるわけないじゃん」とツッコミを入れてしまいました。
地下の家から避難する時にお父さんが真っ先に救出したのがメダルだったのですが、誰の何に対するメダルかわからなかって不思議だったんですよ。
元メダリストにも仕事がない、というのは理不尽なものです。
息子も成績はいいのに受験は失敗。
そして、兵役の義務があるので受験勉強は一旦中断せねばならず、また受験失敗。
怠けているわけでもなく、出来が悪いわけでもないのに報われない。
報われないよ。
最後のお父さんへの手紙であのような結論になるのも仕方がない。

半地下については知らないわけにはいかないと思い調べてみました。

少し調べてみたところ、朝鮮戦争時代の名残のようでした。
韓国では家屋を建築する際に 防空壕として地下室を作らなければならないと法律で定められていたそうです。
高度成長期に都市部に人が集まったことで住宅が不足したので、半地下を賃貸物件にする文化が出来上がったのでした。
半地下は湿度が高く、洗濯物が乾きにくかったり、年中カビに悩まされたり、様々な問題があるので 賃料は他の物件に比べて安いということもあって低収入の人たちの賃貸物件となったようです。
そんなことから、韓国では半地下と聞けば貧困層ということだそうです。
住居建築の際には半地下を作らなければいけないという法律はとっくの昔に廃止されたということなので、半地下があるアパートというだけで築数十年になるということですね。
そりゃあきっついわ。


www.fnn.jp

正義か悪か傍観者か、全部嫌だな。

やっぱり一番強烈に印象付けられたのはインディアンですよね。
悪のインディアンが抱えているケーキを正義のインディアンが取り返すとパーティー会場は拍手喝采という筋書き。
悪いインディアンの一人は金持ち。
もう一人は生活苦の労働者で、業務命令でやむなく演じている構図です。
子供にはどちらも悪いインディアンに見えるのでまとめて退治されます。
ケーキを持っているのは富裕者層だけなのに。
我々だってブラックで環境に置かれればケーキを持っていない悪いインディアンなってしまいます。
物語はその後、大波乱が起きて「本物」の正義のインディアンが現れました。
我々は正義のインディアンの戦いぶりをしっかり見届けたのではありますが、映画鑑賞している我々がそこに拍手喝采するのは間違ってるなと思うのです。
でも私は SNS などで拡散されてくる悪いインディアンの話が出るたびに、うっかりすると拍手してしまうのです。
正義のインディアンの勇気を待ちわびているとすら言える。

でもケーキが欲しいんだよな(マジ顔。