ぺんちゃん日記

食と歴史と IT と。 Web の旅人ぺんじろうが好奇心赴くままに彷徨います 。

Stay Home で映画を見てしまった オールド・ボーイ

目標だった GW 中十本映画を見るチャレンジは今回で10本目。
無事達成となりました。
まだ韓国映画を見ていないことに気がついて、今回は韓国映画からオールド・ボーイ選んでみました。
日本で出版されている漫画 ルーズ戦記オールドボーイ(原作:土屋ガロン、作画嶺岸信明) が原作になっています。
そういえばこの漫画、 TBS ラジオのアフター6ジャンクションにて、知る人ぞ知る伝説の漫画家・狩撫麻礼という内容の特集の中で紹介されていたことを思い出しました。
その時にこの作品も紹介されていて、すごく面白そうだったんですよね。
原作未読で事前情報なしのままの体当たりとなります。
今回も Amazon プライムビデオで字幕版を選択して視聴します。
原作は2013年にも米国で映画化されていますが、これは韓国版です。
あと対象は15歳以上なので気をつけて。


オールド・ボーイ (字幕版)

オールド・ボーイ (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video


オールド・ボーイ

2003年公開の韓国映画
監督はパク・チャヌク、脚本はワン・ジョユン、イム・ジュンヒュン、パク・チャヌク
原作は土屋ガロン嶺岸信明
主演はチェ・ミンシクカン・ヘジョン、ユ・ジテ。
上映時間は120分。

あらすじ。

酔っぱらっては迷惑をかけるだらしない中年男 オ・デスは、突然何者かに拉致されてホテルのような一室に監禁される。
定期的に与えられる食事以外は何もない生活。
そんなある日、部屋のテレビの報道番組から、世間では自分が妻を殺害して逃亡したことになっていることを知る。
娘はどうなった?どうすればここから出られる?誰がこんな罠を仕掛けた?首謀者の動機は?
何もわからないまま続いた監禁生活は15年。
ある日突然ビルの屋上で解放される。
男は首謀者に対する復讐を試みる。

原作。

結局原作は読んでいませんので、原作との相違は不明です。
Wikipedia によれば、原作は舞台が日本なことに対し、映画では韓国となっている他、監禁された期間が10年から15年に延びています。
無料の試し読みの範囲だけでも雰囲気が違うので、映画オリジナルの脚色はそれなりにあると思います。

原作コミックは AmazonKindle 版 を利用するのがイージーだと思います。
全8巻です。


見終わった感想。

なんだこれは。
見たというより見てしまったと言うべきだろう。
ホラーともバイオレンスとも言い難い、見てはいけない何かを覗いてしまったおぞましさ。
ただ呆気に取られて 脱力に身を任せるエンディング。
この映画をお勧めしません。
見ない方がいい。
胸糞が悪くなるから。
人の心の根っこから抉り取る 残虐性をここまで丁寧に描くとはね。
ぶっ壊れるってこういう感じか。
以前にこの感触体験したなと思い返したら、ブラッド・ピット主演のセブンだった。
そういうタイプの結末を好む人だったとしても、やっぱり胸糞が悪くなると思う。


まあ私はそれを知らずに見てしまったので、ほんのりとネタバレしつつ感想を書くことにします。

首謀者の動機が分かってからの追い込みがすごかったです。
謎が次々と解明されていく展開は衝撃の連続です。
後味が悪いだけで鬼気迫る作品ではあるのです。
監禁したかったのではなく解放したかった。
復讐しているつもりが復讐されていた。
謎は明かされたのではなく初めから知ってた。
前半で登場する意味深なメッセージの数々が予想を超える意味を持って返ってくる。
見事なもんでしたよ。

アクションシーンの見所は監禁部屋の謎が解明された後の暴漢達との格闘ですかね。
スクリーンの横幅いっぱいを使って引き気味に撮影されていたところがかっこよかったです。
それ以外はバイオレンス成分が強め。
ある程度のグロ耐性は要求されます。

官能シーンも丁寧に描かれていましたよ。
そこに辿り着くまでにふたりの距離感が近づいていく心情が描かれてましたからね。
絡みも結構攻めてました。
おっぱいも拝めるし。
めっちゃいやらしいので一人で見てくださいね、約束ですよ。
あの場面をしっかり印象付けておくことで後々のおぞましさが増してくるのですね。
心の準備ができた証の歌の意味は日本人には伝わりにくかったですが、車の中で歌い出したところは盛り上がりました。
あの盛り上がりは2回目以降を見る時には全く別の感情が沸き起こると思いますが。

そうなんです。
この映画、1回目見る時とそれ以降は見る時の気持ちが全く違う。
世の中は知らない方が良いこともある。
その線を越えれば後戻りはできないとわかっちゃいるのに。
人は謎に耐えられずに開けちゃいけない箱に手をつけちゃうんですよね。
例えば勝手にスマホを開いたりとかですよ。
そういう意味ではラストのオ・デスの方が我々より救われてるじゃん。
いやー監督はひどいなあ。
あんな手があるなら 私にもやってくれないかな(わら)。


ただ冷静になってから思い返してみると、色々突っ込みどころがあるのも特徴です。
物語は泥酔しきった始末に負えないおっさんが交番に保護されるところから始まるのですが、これが主人公。
後に何十人もの荒くれ者達と切った張ったする男に、どうやったらなれるんだ?
志村けんのコントに出てくる酔っ払いみたいな男がですよ?
覚えきれないほどの浮気相手がいる?
確かに監禁中はひたすら筋トレで肉体改造していますから、過去の自分が壊れるほどの精神的変化はあったことは伺えます。
ただ、 練習相手がいないので格闘技の習得は全てイメージトレーニング。
吉本新喜劇の空手の通信教育かよ。
それが「通じた」はやはり笑いどころです。
あの酔っ払いの演技は素晴らしかったですけどね。
ああいう超うざい酔っ払い、本当にいそうだもん。
あの卑近で実感のある導入があるからこそ、ありえない奇妙な事件に気持ちが入ったのではありますが。

物語の核心に近いところでも設定が雑。
睡眠ガスで眠っている間に細工するのも古いですよね。
作品が20年前に作られたことを考慮しても古い。
原作が描かれた時代ならわからんでもない。
でも当時にはなかった携帯電話などが話に盛り込まれているし、そこまで原作に忠実に再現したとも思えない。
催眠術って、なんじゃそりゃ?
想像妊娠って、そういうドラマ昔流行った時代あったなと思い出しちゃったり。
ミドとの出会いも唐突すぎる。
たまたま店に来た行きずりの客を若い女が部屋に連れて帰るとか、いくらなんでも。
危うく途中でしらけそうになりましたが、観客に与えられた「首謀者の動機の謎」の怪奇具合が大きすぎて強引に説得されかけました。



さて、ここからは本筋には関係ないけど映画を見た後の反省。
恐ろしいのは、映画を眺めている我々も、ほんの些細なきっかけで復讐する側される側になってしまうことですね。
人生の歯車って簡単に狂っちゃう。
運が悪ければ、歯車ごと吹っ飛んでしまう。
小学生の時に漏らしてしまったことで、一生あだ名がうんこマンとか。
結婚して子供ができてもコミュニティ内での関係性が変わってなかったら悲惨すぎる。
本当の暴力って、悪意をもって行うよりも無自覚な方がえぐいかも。
取っ組み合いの喧嘩よりも、何気ない「いじり」の方が心に深い傷を残すものですから。
いじめとか痴漢とかハラスメントの類はやめましょうね。
といったところで、やってる本人は自覚がないから怖いんだ。
自分に置き換えてみたら、恐すぎて急に息苦しくなってきた。


いろいろケチはつけたけど、悪い映画ではなかったですよ。
万人向けじゃないってだけで。