12倍!辛い! ウソ?ホント? 辛(つら)さをキムチの辛(から)さで乗り切る韓国
ポン・ジュノ監督の映画パラサイトが大ヒットしていますね。
その影響もあって,映画のテーマである韓国の格差社会についての話題もいくつか耳にするようになりました。
今回は私も乗っかろうと思います。
先日はラジオで次のような話を耳にしました。
- 韓国では不況になるとキムチが辛くなる。
- ストレス発散のために辛いものを食べる。
- 現代のキムチは戦前と比べると12倍辛くなっている。
聞き流していたので記憶違いしている部分もあるかもしれませんが、今でも記憶しているくらいなのだからインパクトのある話題だったのは間違いないです。
で、この話、 へーそうなんだと思うと同時に、眉唾だなあ本当かなとも思いました。
特に3つ目のやつ。
いくらなんでもそんなに変わらないだろう?
人間の味覚が12倍も変化するのはいくらなんでも差が大きすぎる。
一人当たりの消費量ではなく、国全体の生産量で見ていて、人口増加による消費量の増加が出ているだけでは?
もしくはキムチだけではなく他の食べ物にも転用されて幅広く消費されるようになったので増えたとか。
ラジオで流すからにはニュースソースがあるのでしょう。
そのものズバリの論文を見つけられるとは思いませんが、戦前から現在までの韓国の唐辛子の消費量の推移くらいは調べられるだろう。
となったので、調べてみました!
その結果。
わかりませんでした!
統計データを見るのって難しいですね。
国ごとにデータの取り方が違うので単純に比較できない。
唐辛子はピーマンの仲間なので、パプリカと唐辛子が一緒に集計されていたり、 生と乾燥では重さが全然違うので、唐辛子用の乾燥チリペッパーだけを知ることが素人にはできない。
世界で一番多く唐辛子を消費する国はハンガリーです!なんて情報が出てきてびっくりしたよ………。
様々なデータを入手して欲しい情報だけ絞り込むのは高度スキル です。
文系すごい。
手詰まりになったので、12倍辛くなったのは事実として、昔が全く辛くなかったのではないかと仮説を立てました。
そういえば韓国の歴史ドラマを見ても、辛い料理はほとんど出てこないです。
キムチの歴史を調べてみれば良いのではないでしょうか。
韓国農水産食品流通公社のサイトによれば、 16世紀あたりで日本から(豊臣秀吉の朝鮮出兵によって?)唐辛子が持ち込まれ、19世紀末までは糸状に細長く切った唐辛子を飾り付け敵に使っていたが、20世紀に入ると辛いキムチが朝鮮半島南部を中心に徐々に広がり、朝鮮戦争で全土に広がったということです。
次の記事によると、キムチは南に行くほど辛くなる傾向があって、 北朝鮮まで行くとほとんど辛くないのだそうです。
これは、伝統的に唐辛子のキムチが消費されていたのは、プサンを中心とする地方だったので、 南に行くほど影響力が強く、きっかけが朝鮮戦争だったので北朝鮮までは波及しなかったからということです。
辛くなったのは南北分断後という話なら、お年寄りにとっては激辛キムチは子供の頃から慣れ親しんだ思い出の味ではないとのコメントを得られそうですね。
「こんなものは本物のキムチとは言わん!」みたいなおじいさんはいなかったんかいな?年をとるほどにおふくろの味が恋しくなるものじゃないんでしょうか?
個人ブログではありますが、キムチの歴史について丁寧に書いた記事があります。
ここでも韓国人が辛さを好むのはストレス解消のためで、辛さを飛躍的に伸ばしたのは1963年に登場した激辛インスタントラーメンきっかけとあります。
魔除け的な意味合いで赤い唐辛子(そしてニンニク)を好むのはイタリアも同様ですね。
世界は繋がってるんだね。
ちなみに 現在最も一般的なキムチは白菜を使ったキムチですが、その白菜を朝鮮半島に伝えたのは日本の統治を受けていた時代。
その日本が白菜を好むようになったのは、日清戦争で日本兵が中国で白菜を知ったからだそうな。
食文化と戦争、意外と密接な関係があるものなんですね。
白菜って、ものすごく日本食との親和性が高そうなのに、日本で一般化したのは明治以降で意外と新しいというのも発見でした。
白菜については Wikipedia を参照しています。
ということで、きっかけとなった疑問。
韓国人は不況になるとストレス解消のために辛いものを食べたがるので昔に比べるとキムチやその他の韓国料理が爆発的に辛くなった。
というのは、それなりに信憑性のある説だということは分かりました。
辛いという漢字はつらいと同じなのが面白いですね。
いかがでしたか?
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ここまで読んでくださってありがとうございました。