映画鑑賞会5月下旬・鴨川ホルモー
隔週土曜日の定例映画鑑賞会、今月下旬に選んだタイトルは「鴨川ホルモー」です。
本当は歴史的教養を満たすために「太陽の王子 ホルスの大冒険」 を鑑賞する予定でした。
ところが、検索窓に「ホル」まで打ち込んだら、予測リストに「鴨川ホルモー」が表示されました。
この作品、以前に原作者がラジオのゲーム番組で話していたエピソードが面白くて気になっていたんですよね。
その時はWikipedia で調べるところまでは行ったのですが、書籍の購入までは手が回らず、それきりだったことを思い出しました。
実写映画化されているなら話は早い。
原作を読むより安く早く体験できるので、これも良い機会と方針転換して、こちらを鑑賞することにしました。
今回のプラットホームはアマゾンプライムビデオです。
映画の感想。
全体的には。
結論から言うと楽しめました。
何にも知らない人が偶然地上波放送で見たとしても満足感は得られるでしょう。
なお、原作は未読のままの感想です。
式神を操って対戦する競技と説明されてもイメージがつかめませんでしたが、映像になってしまえばとってもシンプル。
よくある戦術型 シミュレーションゲーム みたいなもんです。
将軍の周りに小さな兵隊が集まっていて、号令一つでわらわらと動き出すタイプのあれです。
それをチームプレイで対戦するのだから 面白いに決まってます。
ジャンルで言えば大学生ながらもスポーツものの学園ドラマですからね。
男女混合チームで攻撃ユニットと回復ユニットが力を合わせますから恋心も動きます。
それを京都の名所各地で繰り広げて SF とコメディで人気俳優が演じるとか、もう説明している本人が訳が分からないほどの詰め込み方です。
エンターテイメント要素盛り沢山なので、大抵の人はそれなりに楽しめるはず………なのですが………。
視聴者にも式神を見る神秘体験までの試練。
式神に認められるまでが長い。
サークルの勧誘で「式神」なんて言葉を出したらあからさまに怪しいわけですよ。
そんなものがあるなら見せてみろよと思うのも当然。
我々観客だって同じ。
一刻も早く式神と言うものの姿を見て安心したい。
それがどんなものか分かれば面白さがある程度想像ついて進んでいける。
しかし、サークルの会長は「今は見せられない」とはぐらかしたまま新入生に式神を操るための呪文を教えていくのです。
その期間が半年 !
当然我々観客も、一度も式神を見せてもらえないまま、物語上の半年を共有します。
もうこれは修行です。
その「見たくても見れない」「見たければ信じて言われるとおりにしろ」という半ば洗脳じみた行為を物語上の登場人物だけでなく観客にも付き合わせるのはひどいと思います。
しかもカルト宗教についていく疑似体験として、ひたすらシュールで寒いギャグを見せつけられて耐えなければならないのです。
私も本当に何度も途中で停止ボタンを押しかけました。
最高潮は「レナウン ワンサカ娘」を熱唱するところ。
確かに悪酔いした男子大学生はあんなノリで脈絡のない事をしますね。
はい、はっきり言いましょう。
主演の山田孝之含む男達10人が全裸で歌いながら踊り狂います。
もうとても視聴に耐えられない………。
こんなに滑りまくった寒いコメディ見たことない………。
乾いた半笑いも出ませんでした。
確かに興奮した大学生集団にとってはあるあるなので共感する人もいるでしょう。
しかし、茶の間の視聴者が付き合うには厳しい。
我々が式神の姿を見るために、あの厳しい選別をくぐり抜けねばならないなんて監督が鬼でしょう。
その一方で、私にそれを耐えさせたのは会長役の荒川良々の怪演です。
新歓コンパの場面から一貫してリアリティがすごい。
理性的で狂的、素晴らしい。
式神が見えた。
儀式が終わると式神が見えるようになります。
監督の意図は式神の操作権限を手にしたときの爽快感を味わってほしいのだろうなと汲み取ったので式神がどんな姿をしているのかを書いてしまうのは壮大なネタバレかもしれません。
私は映画は修行の場ではないと思うので、そこは無視してネタバレしちゃいます。
まさか式神がこんなに可愛いフォルムをしているとは予想してませんでした。
CG であることを隠しもしない、つるっとした質感でした。
てっきりハリーポッターに出てくるあれ(名前は知らないけど使い魔的なやつ)みたいなゴツゴツした怖いルックスだと勝手に想像してました。
後から思うには、殺し合うにしても殺伐感がなく、子供にも安心なテレビゲームらしいといえばらしいですね。
ストーリーは動き出す。
式神が姿を現し始めたら、物語はトントン進んで盛り上がってきます。
チーム形式のテレビゲームらしく、活躍する人がいれば足を引っ張る人もいて、下手なプレイヤーはチームメイトからも邪魔にされて罵られたり。
こんなにうまく話が転がるのは、運動部のような縦社会ではないので監督がいないんですね。
先輩すらも指図は一切しないんです。
だからスタンドプレイやり放題。
その代わり、各プレイヤーが状況判断の責任をすべて負うことになるんです。
もし、チームに監督がいたら、話の流れが勝利至上主義になってエースプレイヤー中心の戦い方になるだけでなく、 敗北の要因がどこにあるかを監督が明かすことになり、 チーム内の人間関係も監督が面倒を見るようになってしまいます。
文化系ならではのフラットの関係であるからこそのトラブルが物語を動かしてくれます。
負けたら終わりのギラギラした状況ならこうはいかない。
負けると悔しいし、不甲斐ないプレーをした人は式神から「懲罰を受ける」のですけど、痛みを伴うなど気が重くなるような性質のものではありません。
ホルモーの目的は優劣を決めるスポーツではなく、良い試合をして神様を喜ばせるところにあるという設定が良かったですね。
勝ったり負けたりすることで人間関係に変化があって ハラハラする展開になるものの、最後はちゃんとイライラの原因が駆逐されて「ざまあ ! 」と叫んでスカッと終わってくれます。
そのお騒がせの人達も決して悪人ではないし、人生が狂うような人も出てこないし、誰かが決定的な迷惑を被ることもなかったし、コメディ映画らしく気持ちよく終わってくれたと思います。
原作の実写化について。
この映画は小説を原作にしています。
私は原作を未読のまま映画に入ったので特に混乱することもなかったのですが、ご多分に漏れず原作のファンからは怒られているのでしょうか?
きっと原作にはこれはないわ、と感じた演出もたくさんありましたし、欲を言ってしまえば残念なところがたくさんあります。
120分の長さで予算内で制作するには切り落とさなければならない要素がたくさんあると思います。
だからどんな改変でも我慢しろというわけではありません。
私なりの実写映画化の合格点は「原作は面倒だから読まない人が見てくれるか」 と考えてます。
そして勝利条件は「原作を手にとって読んでもらえるか」です。
原作ファンの方たちにとってのご褒美は式神が動いている映像と「ゲロンチョリー」 でしょうかね。
二人の敵に挟撃されて「バゴンチョリー」されて立ち尽くしているシーンなどはよくできていると思いました。
振り付けはダンサーのパパイヤ鈴木さんですが、大変良い仕事をしたと思います。
ああいうのは実写ならではですよね。
随所に散りばめられたツッコミどころ。
この映画はコメディ映画なので随所にネタが散りばめられています。
多感な年頃を関西で過ごした昭和生まれの人達にはツッコミ入れたくなること請け合いです。
どこからともなく実況席が現れて実況を始めたり、ワンサカ娘の歌が挿入されたり。
超残念なことに、私には分からないネタの方が多かったですけど。
千年の歴史がある伝統的な催し事とか大きく出てる割には昭和の歌で喜ばせるとか時代感が中途半端すぎる。
試合がストリーミング配信されてノート PC で試合を観戦するとか、どうなってるの?
京都の良さは古いと新しいが融合しているところにあると見るなら、式神も意外と新しいもの好きで、俗っぽい趣味を持っているのかもしれませんね。