ぺんちゃん日記

食と歴史と IT と。 Web の旅人ぺんじろうが好奇心赴くままに彷徨います 。

オッドタクシー :冬の夜が長い人が見るアニメ

おすすめしたいアニメがある。

SNS で「伏線が優れた作品」 の話題が出ていました。
俄然興味が湧きますよね。
そこで複数の人がお勧めしていたのが「オッドタクシー」でした。

あーあれね、知ってるよ。
タイトルだけ。
プライムビデオのおすすめの度々出現していたから。
ちょっとだけ気になったものの、 外国映画だと思っていたので スルーしてましたけどね。
そんなにいいならちょっと見てみようかな。



クリックしてみたら、「日本のテレビアニメだったんか~~~い」

そして再生3分でやられました。
なんだこのシャレオツな曲は。
これは本当にアニメの OP なのか?
OPってもっと アッパーでしょ?
こんなにアーバンでいいの?
チルいよ。
アニメの絵とすごく剥離があるのに、不思議としっくりくる謎の違和感。
「暗渠」っていうだけでもいいもん。
このOPの勢いだけで30分乗り切れる。


4話くらいまで見たところで「最終話まで行けそうだな」と判断したので日記にしてみます。
シーズン1で完結しているので手を出しやすい と思います。

こんな作品。

物語の主人公は夜の東京を走るタクシードライバーの中年男性・小戸川。
ちょっと偏屈で人付き合いが悪く友達が少ない。
そんな小戸川が大都会東京で暮らす様々な社会階層の人々を乗客として運び、 奇妙な縁でつながっていき、やがて大きな事件へと巻き込まれていく。
ちょっとダメな大人が うまくいかない日常を踏みしめながら都会で懸命に生きていく群像劇スタイルの物語でもある。
その苦しみ方も 、ソシャゲ中毒、 SNS での承認欲求中毒 、婚活詐欺 、アイドルの推し活、奨学金の借金etc現代社会の病理っぽい問題が多い。

ストーリーで言えば夜10時のドラマ枠でありそうな内容。
なぜアニメ化した?!
アニメってだけで見ない人は決して少なくないし、実写の方が人気出たと思うんだけど。
もったいない気持ちになるのは貧乏性だからか。
アニメなら見るけど、日本のドラマはつまらないから見ないという人も一定数いて、そういう 人達にはリーチしやすいかもね。

そして何故か登場人物全員が擬人化された動物。
小戸川がセイウチ、 ヒロインがアルパカ、敵のギャングがマントヒヒ。
擬人化はめちゃくちゃうまい。
アルパカの可愛さが綺麗に表現されてる。
動物好きにはたまらないだろうね。
各キャラクターの特徴がはっきりしていて覚えやすくていいのだけど、ツッコミどころではある。
最終的には動物であることに意味がついているので アニメで擬人化されていることに納得しないわけにはいかない。

感想 わずかにネタバレ。

小戸川がつっけんどんで口が悪いのだけど、そこから始まるキャラクター同士の掛け合いがテンポ良くて気持ちいい。
次々と登場人物が現れて人間関係が生まれていく展開の速さと情報密度が刺激的。
手の込んでいるドラマにありそう。

この物語に絶妙に味付けしているのは小学生の頃の辛い思い出の自分語り。
たかが消しゴムを手に入れるために親のカードでオークションサイトから10万円支払う 泥沼にグサッときたね。
目立ちたい、ちやほやされたいのにそうできない鬱屈した自意識の噴出が自分の胸に刺さりすぎる。
その他の登場人物もそれぞれ過去を抱えている。
どれも自分の体験とは少しずれているのに、わかりすぎてしまう。
誰もがそんな傷を抱えたまま大人になって、やっぱり子供の頃と同じような失敗を繰り返して都会で苦しんで生きているんだなぁと 安心するやら凹むやら。
駄目な大人も頑張っているんだよ。
頑張るほど抜け出せないのがダメな大人の特徴だけど。

小さなトラブルが絡み合っている段階では面白いのだけど、発砲事件まで展開すると少し大味と言うか、現実離れしてくる。
ギャングたちと駆け引きするところはスリリングで痺れるのだけど、 苦い日常喉の奥に流し込むようなテイストが失われていくのは残念。
なんかケチつけてるみたいだけど、すんごい面白いことに間違いはない。
最終回までハラハラして、風呂敷はいい感じに畳んだので 完成度の高い作品だったと思う。

伏線の見事さは2週目を見ないとわかんないと思う。

コミック版もあり。

コミック版が出版されていて、全3巻でちゃんと完結してます。
漫画連載が 人気爆発になってからのアニメ化というわけではなく、 アニメ放映の前段階としての出版のようですね。

試し読みで おもしろさの片鱗はつかめると思います。
漫画は所々ハードな劇画調。
リアルなセイウチの指が変なのがちょっと怖い。
アニメは全編デフォルメされていて見やすいです。