ぺんちゃん日記

食と歴史と IT と。 Web の旅人ぺんじろうが好奇心赴くままに彷徨います 。

定期映画鑑賞会 眺めの会・8月下旬 ウルフ オブ ウォールストリート

8月3回目の眺めの会です。

今月はカレンダーの都合で眺めの会が3回あります。
今回は特に課題となる映画がなかったので自由に探してみました。
これまでを振り返ってみるとアジア圏のタイトルに偏っていて 洋画が少ないなと感じました。
もしかしたら私は心のどこかで洋画が苦手なのかも?
どうせならアメリカらしい映画を見たいな、スーツの似合うダンディズム漂うおじさまの映画ではどうだろう?
と思いついた最初のタイトルが「華麗なるギャツビー
アメリカの古典的名作だから絶対映画になっているだろうと探しました。
レオナルドディカプリオ主演の作品を見つけたので、決定だなと決まりかけました。
しかし、こんだけ有名な作品であるにも関わらず原作を知らないまま映画を見る態度がよろしくないなと急に回避してしまいました。
他に素敵なおじさんのスーツ映画ないか?と探して出てきたの今回のタイトル。
ウルフ・オブ・ウォールストリートです。
ウォール街で狼と恐れられたやり手の株式ブローカー ・ジョーダンベルフォードの実話を描いた映画です。
何やら随分破天荒な男の話だそうですが………?

今回の視聴プラットフォームは Amazon プライムビデオ。
HD 版が有料コンテンツとして配信されています。
字幕版を選択しました。
年齢レーティングが十八歳以上になっているので注意してください。
お子様は駄目ですよ。

ウルフ・オブ・ウォールストリート (字幕版)

ウルフ・オブ・ウォールストリート (字幕版)

  • 発売日: 2014/05/14
  • メディア: Prime Video

ウルフ・オブ・ウォールストリート

2013年に米国で公開された映画で実在の人物をモデルにした回想録の映像化です。
監督はマーティン・スコセッシ
脚本はテレンス・ウィンター。
出演はレオナルド・ディカプリオジョナ・ヒル他。
言語は英語でレーティングは18歳以上。
上映時間179分。

あらすじ。

22歳のジョーダン・ベルフォードは一攫千金を目指してウォール街投資銀行 LFロスチャイルドに入社したものの、初日にブラックマンデーが 発生して会社は倒産。
株の仕事を探してクズ株の取引で商売する会社に転職。
すると才能をたちまち発揮、巧みなセールストークで クズ株を売り続けて生活する。
いい車に乗っているというだけで寄り付いてきた男、ドニーをはじめとして、楽して儲けたい男達が次々集まってくると、ジョーダンは26歳で証券会社ストラットン・オークモントを設立する。
ジョーダンが経営する会社はドラッグとセックスにまみれたやりたい放題。
倫理観が完全に崩壊しているものの、業績は急上昇。
ジョーダンは年収4900万ドルを稼ぎだす。
儲けた会社の金でドラッグとセックス。
全社を挙げて飲めや歌えのセックスパーティー
パーティーでは美女と出会って妻と離婚。
新しい妻に大型クルーザーをプレゼントしてまたパーティー
違法な取引で稼いだ金はスイスの銀行に送金。
我が世の春を謳歌するが、彼のもとに FBI が捜査官がやってくる。

原作。

実話ということで原作があります。
憶測や噂話ではなく、ちゃんと主人公にあるジョーダン・ベルフォードが書いているものです。
日本語訳はハヤカワ・ノンフィクション文庫から出版されています。


見終わった感想そしてネタバレ。

控えめに言って クレイジー

世はまさに世紀末。
金と女と肉と酒。
ドラッグ・セックスそして詐欺。
20世紀末の米国によみがえる酒池肉林。
古代中国殷の紂王も羨む肉欲生活。
紀元前10世紀から3000年経っても人類のやることって変わらないんですね。
秩序崩壊には核戦争なんて必要ない。
しかもこれがほぼ実話って言う………。
ゴージャスな世界の中心にいる人なのに、これっぽっちも羨ましいとは思わなかったし、こんな人になりたいとも思いませんでした。
誰だって金持ちになりたいと思いますが、こんな金持ちだけは絶対にごめんです。
映画を見終わった直後はジェットコースターに乗っているような気分だったと軽い感想を出してしまいましたが、今こうやって書いていると、そんな生ぬるい程度じゃありませんでした。
ロケットで月を一周して大気圏からフリーフォールくらいが適切だと思います。

倍返しより手数料50%。

ちょうど今、巨額の金を動かす男たちのドラマが大ヒットしています。
同じ金を動かすにしてもやり方がだいぶ違います。
倍返しなんてしても儲からないよ。
客に売りつけて50%の手数料を取れば確実に儲かる。
客が購入した株で利益が出たら、おかわり。
顧客には利確させないで新たな株を売りつけて投資させる。
すると自分たちはもう一度手数料が手に入る。
客は額面が増えたのを確認して喜んで今と変わりない生活をするが、手数料で儲けた我々は現金化して楽しむ。
自分達は客が儲かっても損しても手数料を確実に手にできる。
西部開拓時代にゴールドラッシュで確実に財産を増やしたのは開拓者ではなく彼らにつるはしとジーンズを売りつけた人達という話にも通じるところがあります。
肉食獣は奪ってなんぼ。
欲に目を眩ませてこっそり抜き取れ。
これがウォール街のやり方だ!?

控えめに言ってクズ。

スタッフを教育するために、電話セールスを実演してみせるエピソードがあるんです。
これがもう意地悪ったらないです。
電話の向こうにカモになりそうなお年寄りが悩んでいると、釣りのジェスチャーを始めて泳がせて泳がせて、当たりがあったら巻いて巻いてとやるんですね。
これがゲーム感覚で、職場一丸で騙されることを期待しているのです。
取引に成功して電話を切った瞬間に全員で雄叫びをあげる。
顧客の利益などかけらも考えてない。
もうこいつら人間じゃねぇ。

職場の士気を高めるためのパーティーイベントも最悪です。
1万ドルを見返りに女性の頭を坊主にするところを見世物にするのです。
女性は涙ぐみながらバリカンで刈られるのですが、終わった後に1万ドルを受け取ると気分は前向きに。
彼女は豊胸手術のためにどうしてもお金が欲しかったので現金を手にした瞬間に自分の未来が開けたということだと思います。
有無を言わせぬお金の暴力だけど誰も文句は言えない。
しかも彼女はその坊主頭を周囲の人に見せて、更なるビジネスのきっかけをつかむだろうことは想像できます。
そういえば何年か前の大晦日の番組で女性タレントがケツバットどころかタイキックされてネットで大炎上しましたね。

妻の叔母さんが急になくなった時、 妻はすぐさま葬式に行きたかったのに、ジョーダンはスイスに行くと言い出す所ももなかなかのクズ。
スイスの銀行にはおばさんの名義で預けていた多額の裏金があるからというのがその理由。
早く行かないと遺言の偽造ができなくなる !
墓参りはいつでもできるが失った金は返ってこない !
これを真顔で言うのがクズ。
億単位のお金を簡単に諦めるようなら成り上がることは可能でしょうけど、家族親戚よりもお金を選ぶことに何の疑問も抱かないのがひどい。
ディカプリオの演技が上手いんだ。
スイスに向かうために嵐の中を強引にクルーザーで進んだ結果、クルーザーの屋根に乗せていたヘリが吹き飛んでクルーザーがめちゃくちゃになった瞬間はスカッとしちゃいました。

二人目の妻から離婚を切り出された時は話し合いではなくドラッグに頼る。
クルーザーが嵐の中で転覆しそうになった時もドラッグ。
ストレスを感じたらすぐにドラッグ。
成功したらご褒美のドラッグ、記念日にもドラッグ。
ドラッグは友達。
ラリってる時の醜さと言ったら。
薬のやりすぎで立てないほどベロベロになった状態で地面を這いずりまわって車によじ登って運転して家に帰るところがあるのですが、これもまたひどい。
FBI が電話を盗聴していることを右腕のドニーに伝えたくて這いつくばってでも帰宅するのですが、それを伝えようにもろれつが回らない。
盗聴されていると知らずに電話しているドニーも同じように薬のやりすぎでハイになっているので話を全く聞きません。
それを止めるためにもみ合っている間にドニーの呼吸が止まってしまいます。
人が生きるか死ぬかという瀬戸際なのに、そんな時に限ってテレビで流れてくるのがポパイのアニメーション。
目の前には死にそうな人がいるのにテレビは能天気なアニメ。
大事な家族会議が突然始まった時に限ってテレビがバカ騒ぎするの、あるある。
アニメのポパイが何を喋っているかまでは分かりませんでしたが、ただひたすら不謹慎でした。
親がこんなになっている姿を子供が見たらトラウマですわ。

クズといえばベルフォートの右腕のドニー。
ジョナ・ヒルが最高の演技で存在感を放っていました。
彼のほうが圧倒的にクズ。
ベルフォートに悪い遊びを教えたのはこいつ。
悪い奴だが 頭は回るし胆力がある。
同じアパートに住んでいてスポーツカーがかっこいいという理由で話しかけてきた偶然が生んだ関係にしては世渡りがうまい。
がっついた連中の中で働いても蹴落とされない程度にはキレるやつ。
この映画の2回目を見るつもりはないけど、彼の視点で描かれているならもう一度見てもいいと思います。
たぶんもっといかれた作品になると思います。

控えめに言って依存症。

クレイジーなクズだと思いますが、ナチュラルボーンクズではなく最初の職場で依存症になるほど破壊された ということは冒頭で分かります。
最初は酒も薬もやらなかったし、セックスにのめり込んでもいなかった。
最初の上司から業界で生き残るためにはこれが一番だと教え込まれたわけです。
狂ってないとストレスか罪の意識で自殺してしまうのだそう。
エリートの世界ってこんなにやばいの?
金融業界に対する熱い風評被害を感じてしまいます。
しかもタイトルにウォールストリートとありますが、正確に言うとウォール街の話ではないそうですよ。
ウォール街、完全にもらい事故じゃないですか。
世界経済がこんなでたらめな連中の口八丁によって動かされているなんて認めたくありません。
でも強い欲望が動かしているのは間違いないです。
株取引はギャンブルじゃないはずなのに、成功と報酬が気持ちよくて何度も繰り返すと依存症になってしまうところ問題ですね。
勝利の美酒に酔いしれると言いますが、 ボロ勝ちするとドラッグに引けを取らないほど気持ちいいのかな。
年収50億、多分裏の金を入れたら倍とか3倍もあるでしょうが、そんだけ稼いだならもういいじゃんと小心者なら思うのですが、 賭けに勝つと大金が手に入る気持ち良さは途中では降りられないのでしょう。
これはもう依存症。
ギャンブル依存的なマネー依存。
おばさんからは依存症を指摘されて本人も認めているのにやめられない。
アルコール、ギャンブル、セックスは依存症として認知されているけど、経営者が会社のために働きづめることはなかなか問題にできない。
お金を生み出して人を雇う優秀な経営者を社会は望んでいるから。
そして成功してしまうと、お金と権力が生まれるので誰も止められない。


世界中に存在するストラットン・オークモント社。

大変クレイジーな映画ですが、こういうノリの職場は日本でもたくさんあると噂を聞きます。
某広告代理店とか全裸になって一発芸とか大好きそう。
考えることをやめて裸になれる人は出世できるとか法則でもあるのかな?
全裸だけでなく土下座も大好きなんですよね?
まあテレビの広告屋だけではなく、営業の色が強い新興企業は多かれ少なかれこういう空気があると聞きます。
生命保険の外交員とか、不動産販売とか、大手通信会社の代理店とか、風説の流布してたIT 企業とか、あと振り込め詐欺の電話オペレーターとかこのまんまだと聞いたことがあります。
絶対参考にしてるよこれ。
ストラットンオークモントの劣化コピーがこれだけ社会に溢れているとなると、人間にとって根源的な何かがあるのだと思います。
体育系の人たちが全裸で大騒ぎして連帯感を生み出しているのは新卒でこういう上司に気に入られるための練習をしているのだろうか。
こんな世界に放り込まれたら速やかに逃げ出します。
あっち側の人でなくて良かった。
でも苦労して入社した会社だったら、やめられないまま洗脳されてただろうか。
もう彼らの考え方が謎すぎて理解はできそうにありませんが、行動原理は分かったように思います。
こういう組織は日本にも沢山あるので、少しでもこういう気配を感じたら尊王される前に逃げ出してくださいね。

詭弁の天才が欲望に火をつける。

世の中は金だ。
これがすべてだ。
金さえあれば何でも手に入るし逆転できる。
俺はイケてる未来を手に入れる。
チンケなあいつらとは違うんだ。
人生の勝者は俺だ。

大変マッチョで男性的な考え方ですね。
人間の価値を所有資産に変換すれば簡単に比較できて優劣をつけられる。
俺はあいつより強いと明確に分かる。
女も男も強いものの下に集まってくる。
下品だなとは思うが逆から見ると、金がないと何もできないし何一つ手に入らないというのも紛れもない事実。
嘘は言ってない。
「金のない生活と金のある生活、どちらかを選べと言われたら何回でも後者を選ぶ」
私も一瞬言いくるめられそうになりました。
二元論だから詭弁だと言い返すには一瞬冷静になって考えないと出てきません。
ジョーダンのすごいところは、このような詭弁を柔軟に使い分けて、空気感を読みながら相手の欲しがっている言葉を察して 使い分けるんです、ここだけは本物。
スタッフのハートに火を点けるスピーチも絶妙に上手いです。
マシンガンの引き金を引いて打ち込むのはお前たちだと煽ります。
彼らの仕事は電話セールス。
まずは電話をしないことには始まりません。
そこで、電話のダイヤルをプッシュすることをマシンガンの引き金を引くことに例えてスタッフを煽ります。
ここにある電話はただの箱だが、ここに命を吹き込むのは君たちだ。
電話しろ、しゃべれ、相手に打ち込め 、一発でも多く打て。
拝金主義者と思うなら、マクドナルドで働け!

といった具合に。

FBI に追い詰められて辞任する時のスピーチも見ものです。
スピーチしている間に気持ちが高まってきて結局辞任を撤回するんですけど、 みんなで胸を叩きながら歌うと超盛り上がってやる気出る!
歌の魔力って強い。
この歌は最初に入社した会社の直属の上司が教えたものですが、それがここで出るとは思わなかった。
実はエンドロールの終わりの方でも流れるんですけど、もうその時はキターーーーーー!って感じで盛り上がってしまいました。
この映画を見終わった人、絶対みんなでこれ真似してると思います。

意義のある3時間だったか?

この映画は3時間もあるんですよね。
その間に丹念に描かれるのはドラッグとセックスと嘘。
中身が空っぽすぎて3時間があっという間でした。
大抵の映画は途中で音楽が挿入されてぼんやりするタイミングがあるのですが、この映画はそういう場面が用意されないまま3時間。
でも全然疲れない。
考えないから。
やり手のビジネスマンの映画と聞いて学びを期待した人にとっては拍子抜けです。
しかも勧善懲悪でもない。
結局ジョーダンベルフォートは刑期20年と予想されていたにも関わらず、司法取引で四年で出てきてしまいました。
世の中は不公平だ。
しかも一度は過去に成功した男としてセミナーでボロ儲けしています。
そして暴露本を自分で出版してまた儲けて、映画化されてクズっぷりが話題になって本がまた売れてセミナーに客が来る。
彼が経済誌に取り上げられてボロッカスに叩かれた時に、彼の奥さんが「悪い噂も話題の一つ」と諭しました。
彼女の言うとおり、ワルかっこいい奴がいるという噂を聞いた優秀な人たちが続々と入社希望して会社は大きな飛躍を遂げたのでした。
私が映画を見て悪口を言っているのも彼にとっては良い宣伝になっている、つまり私が養分にされていると思うと複雑な気持ちです。
需要と供給の関係だ………。


そろそろ最後。
3時間もあったので7000文字近く打ち込んでしまいましたが、学びと成長がありました。

悪口も評判のうち。
借金も金のうち。
0はいくつ掛けてもゼロだけど、マイナスはマイナスをかければプラスになる。
だから借金も失敗も怖くないから飛び込んでみることにします。
この映画はとても大切なことを私に教えてくれました。
ちゃんちゃん。