ぺんちゃん日記

食と歴史と IT と。 Web の旅人ぺんじろうが好奇心赴くままに彷徨います 。

石器時代でどこまで豊かな生活が可能か『Primitive Technology』

現代テクノロジーを失ったとして、どこまで行ける?

今回は私が大好きな YouTube チャンネル「Primitive Technology」(プリミティブ・テクノロジー)の紹介です。

プリミティブ テクノロジーはオーストラリアで暮らすジョン・プラント氏が運営するYoutubeチャンネルです。

人類の知恵と自然からの拾得物を利用して野外活動して遊びます。
遊びの内容は多岐にわたっていて、

  • 木を擦り合わせて火を起こす。
  • 石を叩いて石器を作る。
  • 泥をこねて壺を作る。
  • 蔓を編んでかごを作る。
  • レンガ・瓦を焼く。

しまいには家を建てます。


作業はいずれもたった一人で行われており、 限られたリソースの中で試行錯誤を重ねて進みます。
人手があれば簡単な作業も 創意と工夫で乗り切ります。

人類は石器時代にどこまで豊かな生活が可能でしょうか ?

書籍もあるでよ。

さて、そのプリミティブ・テクノロジーが本になりました。
と言っても刊行されたのが3年前、日本語翻訳版が一昨年。
非常に今更な話題です。


私は Kindle 版を購入。
書籍と Kindle 版では少々レイアウトが違うようです。
電子書籍向けにデザインされていてクリック一発で見たいページにジャンプ、 YouTube の動画を開けます。
文字は読みやすく拡大表示の必要はなさそうです。
書籍と Kindle では少しだけ Kindle 版が安いです。


YouTube 動画の副読本。

動画では足りない情報を補う本となります。
このチャンネルの特徴として、ほとんど解説がありません。
ジョンプラントは一切喋らないし、ナレーションもありません。

ボディランゲージに徹したことで言語の壁を越えて視聴者の好奇心を掻き立てたのですが、何をやっているのか分かりづらいという不満もあったことでしょう。
この本を読めば不明快のままなんとなく流してしまった途中の作業の必要性がわかると思います。

そして実践へ。

内容は比較的実践的なのかな?
道具の役割ごとに章立てされていて,そこからさらに種類ごとに紹介されます。
論文ぽい形式で導入・手順・結果と進んで行きます。

動画では表現できない情報が掲載されているのがテキストの強みだと思います。
例えば、斧の柄の最適な長さは動画では伝わりづらいので。

導入

動画を開いて、ここを読めば誰でもプリミティブ・テクノロジーを楽しめます。
実践したい人だけでなく、娯楽として消費したい人にも楽しい内容となっています。
YouTube への短縮 URL が掲載されていて、クリックで動画を視聴できます。

内容は

  • 道具の活用法。
  • 難易度。
  • 必要となった理由。
  • 苦労したところ。

など。
家に煙突をつけた理由が熱効率ではなく煙たいからと知ってなるほどでした。

道具と材料

完成までに必要なものがリストアップされています。
材料は自然から調達するので読者が住んでいる地域によっては入手困難なものがあるかもしれません。
その場合、代替になる素材を考えなければならないでしょう。
その他にも、作業に必要な道具もリストアップされます。

現地に出かける前に確認しましょう。

作業手順

作業手順がテキストで記述されています。

百聞は一見にしかずで動画を見た方が分かりやすいのではありますが、動画ではよく見えない細かいテクニックまで書いてあります。
この作業がどんな効果をもたらすか、土の種類はどんなものを選ぶのが良いのか などなど興味深いことが書いてあります。
要所では拡大イラスト、写真が掲載されています。

アドバイスの項では失敗しやすいポイントや試行錯誤を繰り返したことについて触れられています。
豆知識としても面白い。

あなたなら買う ?

ちょっと厳しい評価ですが全体的に中途半端な印象を受けました。
もう少し突っ込んだ内容を期待していたんですけどね。

これは私が実践しない側の人間だからかもしれません。

YouTube と密接な関係にあるので YouTube なしではほとんど無価値な本になってしまいます。
アーカイブ性が低いと言うか………。

いつまでもあると思うな YouTube
そういった観点から見れば書籍版には DVD を添付してもバチは当たらないと思います。
動画が無料で公開してるんだから本気出せば自分で焼けますけどチャンネルのファンが記念品として購入する意味が薄い。
お布施みたいなもんだから怒ったりはしないけど、興味本位で購入した人にとっては割高に感じるかもしれません。
ちなみに英語版ならもう少し安い。日本語版でも知らない単語が頻出するから 日本人にはおすすめしないけど。


実践したい人にとってもノウハウが少し薄いかな?
"マッチもナイフもなしで身ひとつで生き残れるか"とかさすがに煽りすぎ。
そういう趣旨の本じゃないと思うんだ。
法律と自然を守って安全に野外工作する本だと私は認識しました。
気候風土に合わせた創造する余白がたっぷりとってあって、自分で手を動かしながら考えるのがこの本の魅力。
この余白を楽しめる人が本当のお客様。
ノウハウを知って楽しむタイプの人には意義が薄いし、作業をトレースして楽しむタイプの人も不満があるかもね。

あくまでジョン・プラント氏が自然からの拾得物だけを利用して文明的な道具を作るために試行錯誤した記録だと理解して読んでほしい。