ぺんちゃん日記

食と歴史と IT と。 Web の旅人ぺんじろうが好奇心赴くままに彷徨います 。

眺めの会・1月上旬 えんとつ町のプペル

あの話題作がプライムビデオに登場。

2022年元旦は土曜日。
しかも、眺めの会にぶつかっています。

そこに浮上してきたのが、プロデューサーが炎上体質なことで何かと話題な 『えんとつ町のプペル
アマゾンプライムビデオで無料で見られることに気付いて挑戦しました。
制作指揮を取ったのは芸人キングコング西野亮廣
SNS で口論になることが多く 悪い意味で目立つ人です。

この作品でも平常運転。
プロモーションのやり方の脇が甘々で 、自身のオンラインサロンのメンバーにチケットを手売りさせたり、映画公開前に台本を無断で販売するなど、 倫理とか業界の常識をぶっ壊して大炎上。
作品公開前から場外乱闘で キンコン西野を好きか嫌いかで作品の評価が真っ二つ。
良くも悪くも話題作でした。

騒動は収束してきてるし、いっちょかみするには最適の時期です。


配信プラットフォームは Amazon プライムビデオ。
プライム会員は無料で視聴できます。
全年齢なので家族で見てもオッケー。


えんとつ町のプペル

2019年に公開された日本の長編アニメ。
原作は西野亮廣の絵本。
監督は廣田裕介。
脚本は西野亮廣
主な声の出演は窪田正孝芦田愛菜立川志の輔

あらすじ。

立ち並ぶ煙突から出る煙が空を覆い尽くす町、えんとつまちで暮らす子供ルビッチ。
ルビッチには友達がおらず、ハロウィンの夜にも煙突掃除の仕事だった。
その帰りに困った人を助けたのがゴミでできたゴミ人間だった。
ルビッチは記憶のないゴミ人間にプペルという名前をつけて友達になる。
えんとつ町は異端分子を厳しく 取り締まることもあってプペル及びその友達のルビッチは仲間から厄介者の扱いを受ける。
さらにルビッチが煙の向こうに星があると信じていることが発覚して 危険人物として追いかけられる。
それでも広い空に星があることを信じるのをやめないルビッチが 奔走した結果、煙突の煙の秘密にたどり着く。
ルビッチが自分を信じて大きな行動に出る。

見終った感想 - ネタバレするよ。

エンタメ度は高いが まとまりに欠ける。

エンターテイメント作品としてよく出来ていましたね。
結末に向けての盛り上がりは感動的だったし、 アクションシーンはハラハラした。
ゴミ輸送トラックから地下に入ってもぐらと出会うまでの怒涛のアクションはこれでもかってくらい畳み掛けてきました。

キャラクター同士の掛け合いは少々説明的でダレることもあるけれど 肝心のところではちゃんとボケとツッコミが成立していて面白い。
人間同士の絡み合いがハリウッド的で、よく言えば教科書に忠実で手堅い作り。
悪く言えばいつかどこかで見たような テンプレの連続で強烈な作家性はない。
誰も見たことがないものを見せたいと言う大きな風呂敷を広げた割にはやってることがラピュタの二番煎じというのが何とも。
「なんじゃこれ?!」というインパクトを残す場面を一か所くらいねじ込んでも罰は当たらなかったような気はします。

芦田愛菜の声は最初聞いた時は「うん???」となったけど、物語が進むにつれてしっくり来たのでよくやったと思う。
声優たちの演技は説明的なセリフを上手にフォローしていたよ。
父親の紙芝居の五七調の古めかしい語り口も 絵本で見た時は「こりゃないわ」と思ったけど、噺家の力ってのはすごいもんだね。
きっちり世界を作ってた。
でも令和を生きる子供たちに 単調な昔話ってのはずれてると思うな。
家族感とか父親像も古くて時代に合ってないし。

ハロウィンの夜に子供たちが街でダンスするところは良かったですね。
物語はそこから始まるので、この映画はミュージカルとか舞台を強く意識した作品なのかと思ったけど、ダンスはこれでおしまい。
この空気感は悪くなかっただけに消化不良でしたね。

ルビッチがゴミ収集車を見つけて 駆け下りる場面がテレビゲーム的で面白くはあったけど、 テレビゲームが作品の世界観と遠すぎてまとまりがない印象。
こんな具合に各パートが趣味趣向を凝らしてキラリと光るものを感じるんだけど、全体で見ると、とっ散らかって あわただしく感じました。
まあとにかく散らかしっぱなしで見る方は大変。
やりたいことがたくさんあるのはわかるけど詰め込み過ぎたんじゃなかろうか。
星の存在を信じて空ばかり見ていた父親が突然海を見に行って 帰らないという展開が唐突だし急に現れる黒船には困惑しました。



ストーリーを読み解こうとしたら 迷宮入りした。

立ち並ぶ煙突から吹き出る夥しい煙、そして街に溢れる大量のゴミ。
煙突と煙は工場の象徴。
大量生産と大量消費、ゴミの山はここから生まれます。
これは経済成長を至上命令とする資本主義が引き起こした不都合な現実に対する反対声明 !!
だと感じたのですが、物語が進むにつれて理解不能になりました。

えんとつ町には王様がいるのですが、 既に権威は失墜してご先祖様が残した言葉通りの政治を行っているだけ。
良い伝えによれば、 海外の熾烈な競争社会に恐れをなしたご先祖様は 独自通貨を発行して 鎖国するとともに、煙を蔓延させて国民が外の世界に興味を持たないようにしたとのこと。
これが超競争社会の海外の資産家には都合が悪く、圧力をかけられたので煙でごまかしているという話………らしい。
外の世界を信じたルビッチの父親は海を見に行ったまま行方不明となり、その海の霧の向こうから巨大な船が現れたことで街の人々は外の世界の存在を知り体勢が崩されます。

我々日本人には馴染み深い、徳川幕藩体制鎖国と黒船による開国からの明治維新を想起させる構造です。
私の歴史認識では、工場が立ち並んだのは明治維新後の富国強兵が始まり。
大量生産大量消費により安く早く作れるようになったが、 世界が経済競争になると豊かさと引き換えにごみがあふれたと考えるのですが、プペルの作者にとっては違うようですね。
海外との交流を断ち切って自給自足の生活を送りながら外圧を恐れているのに 自分の国をゴミだらけ煙だらけにするのは誰得。
腑に落ちないので私が重要な場面を見落としたか勘違いしたと思いたい。

思いつきの暴力革命。

環境テーマを引っ張り出しておきながら、煙突の下で何が行われているか描かれていないし、誰がゴミを捨てているのかも描かれていないのが無責任で軽薄。
プペルはゴミの山から生まれたというのに、そのゴミの正体が明かされないのは何とも片手打ち。と言うか、ゴミの問題は職人が服を使い捨てている場面でしか描かれていない。
SNS でバズってるウケが良さそうなテーマのおいしいところだけつまみ食いして、 なんとなく悪そうな古いものをぶち壊して スッキリしたいだけだからこんなことになる。

煙突の煙が重たい諸問題のメタファーだというのは分かります。
地上が現代で、地下が過去、空が未来だというのも分かります。
スコップは古い地層を調べて歴史から学んで 未来に希望を感じたしね。
遠い未来に輝く星の存在を信じて、 近い未来で燻っている問題を吹き飛ばして 未来を見せたいと言う狙いは筋は通っています。

それを爆薬で吹き飛ばすのは手段としておっかない。
気球で空に浮かぶのは人為的に時代の流れを早送りすることを意味して、 その近い将来に大きな爆発を起こすことを暗示しているようではないですか。
これは革命の予告ですよ。
しかも、とっても無邪気に「やってみなければわからない」と 思い込みで挑戦する革命です。

それを作者が体現したのが業界の慣例を破っての台本販売というのは笑えない。
確かに炎上爆発しましたけどね。

本気で取り組んでいるが 伝説にはなれていない。

結局いちゃもんばかり付けてるけど、私の価値観ではアナ雪のストーリーだって ちぐはぐで意味不明、にもかかわらず世間は名作としているようだし、 どこかで何かが当たるかもしれない。
アニメ、絵本、ミュージカル、グッズと展開するならば目指すところはディズニーだと思うんだけど、目標はあまりにも高い。
ルビッチが見た星は相当遠い場所にありそうです。
でも、今はまだ伝説にはなれていない。