ぺんちゃん日記

食と歴史と IT と。 Web の旅人ぺんじろうが好奇心赴くままに彷徨います 。

眺めの会( 定期映画鑑賞会)7月中旬 黒部の太陽

ダム熱 高まる。

ダムがマイブームです。

「ダム見学を趣味にする人の気持ちがわからない」

という話題から ダムの面白さを話していたら、こっちの方に熱がついてしまいました。
最終的にはダムの良さが通じたらしく今年の夏休みの行楽の予定はダム見学にしようかなと言ってました。
しかもどうせ行くなら日本一のダムが良いとのことで黒部ダムに行こうかとしているようです。
羨ましすぎる。
ダム初心者だから今のところ興味の先がダムカレーとパワースポットのようです。
大自然の真ん中に唐突に現れる灰色のコンクリートの壁が醸し出すギャップ萌え を理解するには自分の目で確かめねばなるまい。
行けばわかるさ。

そんな話があったのでダムに関わる映画を見たいと思いました。
ダム視点 で描かれた映画を探しましたが意外とない。
黒部の太陽がまさにそれなんだけど、あれは黒部ダムの建設に必要なトンネル工事の話だから黒部ダム本体はほとんど出てこないのね。
まあそれでも 難工事として語り継ぐべき話だから 日本の歴史の一部として振り返っておくべきではないかと思いました。
調べついでにディアゴスティーニ辺りが「週刊世界のダム」なんかを出していないだろうかと期待しましたが、さすがにありませんでした。

ということで今回のタイトルは『黒部の太陽』です。

先々週は前回の東京オリンピックの映像を映画作品化した『東京オリンピック』だったので、2回続けて昭和の高度経済成長期を描いた作品を見るということになりますね。
黒部の太陽東京オリンピックよりも少し前の時代となります。
オリンピックだけでも大工事だったと思いますが、それより前にこんな大工事があったんですね。


視聴プラットフォームは Amazon プライムビデオ。
プライム会員は有料で視聴できます。
3時間を超える超大作なので予定のない日を選んでチャレンジしてください。


黒部の太陽

1968年に公開された日本の映画。
昭和31年から7年かけて日本の立山連峰の実際に作られた黒部ダムを舞台にした話。
建設工事の記録を書籍化したものを原作としている。
監督は熊井啓
脚本は井手雅人熊井啓
原作は木本正次。
主な出演者は三船敏郎石原裕次郎
言語は日本語で上映時間は196分。

あらすじ。

北川は水力発電のために計画された黒部ダム建設のトンネル工事の責任者を任される。
それは日本列島を分断する・糸魚川-静岡構造線断断層帯を貫く難しい工事だった。
そんな折、北川は娘の縁談の相手として岩岡剛を紹介される。
岩岡は建築の設計士だったため、その工事は不可能だと見抜く。
岩岡は父を憎むあまりトンネル工事とは距離を置いていた。
岩岡の父は トンネル工事の指揮をとっており、トンネルを貫くためには現場の労働者の犠牲すら厭わないほどの鬼監督だったからだ。
しかし岩岡は北川をはじめ数々の工事関係者のひたむきさに情熱が湧いてきてトンネル工事に参加するのだった。

見終わった感想 ネタバレを含む。

人間と自然との壮絶な戦い。

三船敏郎石原裕次郎、当時の大スターが共演している夢のような作品。

黒部ダム建設がどのように行われたか、その記録をドラマ形式で再現したものです。
元祖プロジェクト X と申しますか、おじさん達が無理難題な仕事を頑張って達成するお話です。
現場関係者の話をまとめているので、 現実に即した話と言えるでしょう。
関わったゼネコンたちの協力を仰いでいるので、 作業工程と工事の内容についてはしっかりしているでしょう。
ただし現実の話なので誰かを一方的に悪者にするわけにもいかず、ぼんやりとした描き方だったかなと思います。
物語の理屈も背広側に寄っていて、大多数の労務者の気持ちはあまり描かれていません。
下請けで働いている人達は素直に楽しめないかもしれませんね。
それは私が IT土方として、具体案が何も決まっていないにも関わらず「やる」って事と納期だけが決まったデスマーチプロジェクトに放り込まれた経験があるからかもしれません。
背広を着た人たちが土下座する半沢直樹のような刺激を求めてはいけません。


早いうちに総合評価を残しておきますと「長いわりには薄かったかな」という感じです。

歴史の教養として習得するのは悪くない。
一つ上の世代達の話まで振り返って戦前のダム建設のあり方と歴史もチェックできます。
貫通した時にみんなで樽酒を開けて酌み交わすところで、柄杓では間に合わなくてヘルメットで汲み上げてるところが、プロ野球のペナント優勝のビールかけのようで めちゃくちゃ楽しそうではありました。
でもそれ以上の感動はなかったかな。
当時の関西の深刻な電力不足がもう少し伝わっていれば気持ちも変わったかもしれないけど、 電力不足による停電に悩まされた経験のない我々にとっては「何でそこまで無理してダムなんかこさえにゃならんねん」と思っちゃいます。
調べてみると昭和30年頃の関西の電力不足は本当に深刻で週に2日の計画停電が行われ、それでも足りずに停電するといった有様だったようです。
そのためにまともに工場が立てられず、経済発展が立ち遅れていたという事情があったようなんですね。
さすがに50年経過すると 注釈なしでは難しい部分がありました。


脚本はよろしかったと思います。
石原裕次郎が演じる岩岡が理想と現実の間でぶつかる姿を見せることで話がうまくまとまっていると思います。
ダムの建設と人の命のどちらが大切か。
戦前の工事は 戦争に勝つためという大義名分で、死ぬのなんか当たり前という現場でした。
戦争が終わった今、人々の生活に必要な電力の為という大義で、やはり無理な工事が行われていることに対する憤り。
土建屋の仕事の光と影が描かれていました。
青年岩岡は父親世代の仕事方針に対立していることで親を乗り越える成長物語にもなっていると思います。
血も涙もない親だと思っていたが最後の最後に昔の事故をずっと悔やんでいることが分かったところで ホロリときましたね。
三船敏郎が演じる北川も愛する娘の病気にも立ち会えない仕事人間の辛い役目を背負わされていました。
トンネルが開通して活気立つ群衆たちの中で娘の死を知らされる悲しみ、その気持ちを押し殺して労務者等に「おめでとうございます」と労いの言葉をかけなければならないやるせなさ。
対比が効いてて映画としても良かったと思います。
労務者等の樽酒を酌み交わす姿が本当に嬉しそうで「あんな酒を飲んだら またトンネル工事に関わりたいと思うだろうな」と伝わる場面だっただけに一層引き立ちました。
黒部ダムが完成して人間は自然に勝利し、北川が言うとおり「人間はお金と時間と情熱さえあればできないことはない」ということを実現させましたが、 がん(白血病)には勝てなかったところもうまく処理できていたと思います。


たくさんの人生を踏み台にして完成した黒部ダムですが、お金はちゃんと出ていたようで良かったですね。
人が逃げて3交代のところを2交代でやらせるとか給料アップでなければやっと連ですわ。
関西電力の社長、湧水に阻まれて工事が難航した時の会議で予算の都合で引っ込めていた案に対して「お金の事は我々が考えること」と豪語して、 できるやり方があるならやれと後押しした ところは現代よりマシかもなと思いました。

最後にどうでもいいことを言わせて。

フォッサマグナって、一度覚えると絶対使いたくなりますよね。
フォッサマグナ
中学生の教科書にも載ってるらしいですよ。