ぺんちゃん日記

食と歴史と IT と。 Web の旅人ぺんじろうが好奇心赴くままに彷徨います 。

眺めの会 (定期映画鑑賞会)7月上旬 東京オリンピック

東京オリンピックを振り返る。

いよいよ東京オリンピック開催まであとわずかですね。
大会開催は規定路線、粛々と遂行されると思います。
ここいらで一発、夏のオリンピックにちなんだ作品を見てみようと思いました。
情弱の私は Google 先生に問い合わせます。

すると前回の東京オリンピックが映画になってました。

監督は市川崑
オリンピック東京大会を最高の環境で撮影したものを映画的に編集した作品のようです。

東京オリンピックが開催されたのは1964年。
私が生まれる7年前。
遠いというほどの昔ではなく、記憶が鮮明というほど新しくもなく、私にとっては 少し距離感があるのが東京オリンピック
実は私は前回の東京オリンピックの事を全くと言っていいほど知らないのです。

そこで今回は、日本人が前回のオリンピックを見たような熱気で迎えて 体験したか、という気持ち半分。
それに対して今回の大会が冷ややかで見るに堪えない体たらくだったか、冷やかしてやろうという気持ち半分で見てやることにしました。

私はオリンピックには興味がないのでコロナ云々に関わらず否定的な態度であります。
しかし、ここまで多くの人がオリンピックに感動して命をかけてでも開催しようと するからには自国で開催される大会に何らかの魅力があるんだと思います。
この映画を見ることで私が知らなかったオリンピックの顔を見ることができるのではないかと期待しています。

視聴プラットフォームは Amazon プライムビデオ。
プライム会員は無料で見られます。
2時間を超える大作映画なので途中で休憩が必要です。


東京オリンピック

1965年に日本で公開された実録映画で、1964年に開催された東京オリンピックの映像を映画化したもの。
監督は市川崑
言語は日本語で上映時間は170分。
年齢レーティングはなし。

見終わった感想。

映像と音声の力を改めて思い知った。

東京オリンピックの空気感を見事に捉えた美しい映像でした。
半世紀後に振り返って見るには最適な映像だと思います。
オリンピックの記録は次々と塗り替えられるけど、その競技を固唾を飲んで見守った観衆たちの表情と記憶は普遍のものであります。

そもそもオリンピックの映画とは何?というモヤモヤはありますが、日本人にとって東京オリンピックとは何だったのかと言うまとめとして優れていると思います。

スタジアムを訪れた人々が好奇心で瞳をキラキラさせているの。
生まれて初めて見るたくさんの外国人、何を競っているのかよく分からない競技。
分からないんだけど目を奪われる。
鍛え抜かれた肉体と全力を尽くす選手たちの熱い闘志は見れば分かる。
高性能のカメラを使ってズームとスローの映像が伝える美しさ。
私にとって東京オリンピックのイメージが白黒の映像だったのに、こんなに美しいカラーが残されているとは思いませんでした。
私の記憶本当にあてにならない。

誰がどうやってメダルを取ったか、そんな経緯はほとんど無視して、それぞれの競技が持つダイナミックさと美しさを非常に丁寧に切り取っていました。
特にズームが良い。
選手の表情、手元とか下半身だけがズームしていて緊張感とか躍動感が間近に見えてめっちゃ迫力ある。
うるさい実況と解説がないことで映像に集中できるのが良い。
あんまりズームしすぎるので試合がどんな状況かよくわからないのだけど 、試合の内容とメダルの行方だけを気にするのは 野暮ってもんよ、と思うのは私がスポーツに興味がないからでしょうか。
オリンピックの描きかたが非常に文系的ではあると思います。
子供の頃に運動会の度に虐殺された 運動音痴の私は、先生から繰り返し「参加することに意義がある」なんて言われましたが、まさしくその文脈の延長にある編集の仕方でしょう。
体育系の人たちがこれを見たら怒るかも。
メダルを取ったあの選手がクローズアップされていないとか、あの競技が軽く扱われてるとか勝敗を分けた一瞬の駆け引きが分かってないとか。

でもこれ映画ですから。
筋書きのないドラマってキャッチコピーは好きじゃないけど、スポーツをドラマティックに描いたものですから。

聖火リレーのストーリーが持つ力強さ。

東京オリンピックはアジアに初めてやってきたオリンピック。
ギリシャからもらった聖火をランナーたちがつないでつないでユーラシア大陸を乗り越えてやってくるというロマン満載の力強いストーリーに圧倒されて感動しちゃいました。
トルコからインドを抜けて日本にやってきた聖火をみんなでつないで開会式の点火退場に持ってくる。
晴れ渡る富士山の麓を駆け抜けるランナーの姿が印象的。
これぞ日本の心。
なるほど、偉い人たちが聖火リレーにあんなにこだわるのが全く謎だったのですけど、多感な時期にあんなものを見てしまったら意地でもやりたくなりますわ。
確かに小学生の頃に学校の先生などからオリンピックの聖火リレーについて熱く語られたような気がしますが、子供だったし興味なかったので記憶から欠落してました。
はるかギリシャから野を越え山越え海越えて人の手を介してやってくるのだというストーリーはロマンたっぷりでした。

そして迎えた開会式。
街を行き交う人々の表情の明るさから、祭りの前の高揚感がビシビシと伝わってきます。
開会式の入場の選手たちのかっこよさ、入場行進曲の素晴らしさ、どれをとってもピカイチです。
つい20年前まで世界は戦争のために集結してきましたが、オリンピックはスポーツで競い合うために集まった平和の祭典。
選手達にとっても晴れやかな舞台。
選手団の清々しい入場行進を見たらアンチオリンピックの私ですらテンションぶち上がったのでオリンピックの力ってすごいですよ。
コロナで苦しんでる今、世の中はとっても冷たい目でオリンピックを見ていますが、いざ開会式を迎えたら熱狂してしまうかもしれません。

代償としての演出の過剰さ。

選手たちの走る時の足音とか砲丸投げの玉が着地するドスンという音、あるいは体操選手の衣擦れの音など、目の前でなければ聞こえない音が伝えてくれ臨場感。
しかし、これがどうもあとから付け足した合成された音声だと気づいて、そこからは気になって集中できませんでした。
実録なのに、そこにないものを付け加えて捏造するのはダメでしょ。
機材の都合で後から調整して重ねただけで、実際は生の音声が大部分かもしれませんが、明らかに聞こえるはずのない音が入っている。
砲丸投げの玉をペチペチ叩く音とか、選手本人ですらあんなにリアルには聞こえていないはず。
それが過剰すぎて特撮映画を見ているみたいで、実はこの映像はみんなフィクションなのではないかという疑念すら湧いてきました。
体操の床とか、衣装と床が擦れ合う音がすごい。
真っ黒な背景の前での演技だったので別撮りだったかと思います。
もしかしたら何らかの処理で背景を落とせたのかもしれないけど、アナログの時代に無理だったんじゃないかな。
多分そこだけは個別に撮影したなと思います。
大会中の演技を使わないことで体操競技の美しさやより鮮明になったことは事実。
黒の背景に白い衣装で体のラインがきっちり出る。
決めのポーズのバランスのキープの仕方の難しさ伝えてくる。
演出として優れすぎてて他の感動的な場面も同じように別撮り、つまりヤラセに見えてしまった。

まあそりゃあ映画なんですから。
時代劇だって聞こえるはずのない人が切られる音が 聞こえるわけだし、映画だという前提で見ていれば問題はない。
でもなー、実際に競技したスポーツの映像の上に作った音を乗せるのはなあ。
コンサートの口パクみたいで萎えるよ。
たとえ品質は落ちてもリアルにこだわって欲しかった。
ここまで酷評しておいて全然別撮りでなかったら超ごめんなさいですけど。

女子バレーボールの紹介が始まった時に、画面が真っ暗になって音声だけになってしまったので通信エラーでも起きたのかと焦りましたが、すぐに演出だと分かり、それが音声だけでバレーボールであることが分かった時は思わずニヤリとしました。
音声の演出でよかったと思える部分です。

何気ない瞬間こそ残したい。

競技場の外の様子も記録されているのは良かったですね。
当時の東京の街並みとか、建物の看板、車のデザイン、人々の服装などなど、 何気ないところに情緒は宿ります。
轟く号砲に驚いて子供が泣きながら耳を押さえる姿は時代感あって良い。
開会式会場で解き放たれた大量の鳩が目の前を飛び交うことにちょっと迷惑そうな顔の外国人も印象的。
道沿いで孫の手を引くおばあちゃんは何を見たか。
大会の運営を手伝うボランティア、選手村で楽しそうに食事をする選手たち。
そして忘れてはならないのはオリンピックの犠牲になった人たち。
オリンピックは国民のすべてを幸福にしたわけではなく、 始まりは破壊によって生まれた。
映画の冒頭が競技場建築のために巨大な鉄球で破砕される古いビルの姿から始まったことは覚えておきたい。

是非見て欲しい。

冗談でも当てこすりでもなく非常に感動的なオリンピックが描かれていました。
オリンピックあり派なし派、党派性にかかわらず見てほしい映画だなと思いました。
170分の超大物で、劇場では途中休憩が挟まれたほどの作品なので手強いですけどお願いします。
評判の良い作品のようなので、地上波で放送されまくってるかもしれませんけど、普段テレビ見ない人は是非。