ぺんちゃん日記

食と歴史と IT と。 Web の旅人ぺんじろうが好奇心赴くままに彷徨います 。

眺めの会(映画鑑賞会)10月下旬・午前の部 クレヨンしんちゃん モーレツ!オトナ帝国の逆襲

年に三度はお勧めされる傑作アニメ映画。

2週間に一本のペースで映画を見るイベント、眺めの会です。
ここ3回ほどリアル寄りの実写映画が続いたので、ここいらで気楽に見られる子供向けアニメでも見てみようかと思いました。
評判が良くて見るべきアニメタイトルはたくさん思いつきますが、最近立て続けに様々なメディアから『クレヨンしんちゃん オトナ帝国の逆襲』をプッシュされたので選んでみました。
この作品、何かにつけて大人達がお勧めしてくるんですよね。
たぶん1年に3回くらいは推薦されます。
クレヨンしんちゃん世代ではないし・子供と一緒にも見たことがないので、ずっと見る機会がありませんでしたがちょうど良い機会だと思いました。
子供向けの作品なので90分。
近頃の映画は120分を超える作品がゴロゴロあるのでちょっと物足りない。
作品を丁寧に作りこめる時間ですが、引っかかるところのないままエンディングを迎えそうで少し怖いです。
どうせ近頃暇すぎてやることないので、午前と午後に分けて二つの作品を鑑賞することにしました。


今回も視聴プラットフォームは Amazon プライムビデオ。
プライム会員なら無料で視聴できます。
全年齢対象です。


映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲。

2001年日本で公開されたアニメ映画でジャンルはコメディ。
言語は日本語。
上映時間は90分。
原作は臼井儀人の漫画でテレビシリーズにもなっており、劇場映画版としては9作目。
監督・脚本は原恵一
主な声優は矢島晶子藤原啓治、 奈良橋美紀。

あらすじ。

春日部銀行に大阪万博に模したテーマパークができた。
そこを訪れた大人達は懐かしさに心を奪われ夢中で通い詰めるようになった。
このテーマパークは謎の組織イエスタデイ・ワンス・モアの指導者ケンが日本を昔懐かしい昭和に巻き戻して21世紀に向かわせないために作ったものだった。
ケンは金儲けに消耗して心をなくした21世紀を、匂いのない世の中だと嫌って、20世紀の臭いを世の中に放って社会を変えようと考えていたのだった。
大人達はケンの策略にかかり、仕事も子育ても放棄して、昔懐かしい昭和のおもちゃ と遊びに夢中になってしまった。
捨てられて困り果てた子供達は組織の構成員に捕まって、車に運ばれて20世紀の記憶を植え付ける収容所へと送られる。
捕獲から逃れたしんちゃんと仲間たち(春日部防衛隊)は大人達が集まる20世紀博の会場に向かう。


見終わった感想ネタバレ注意。

文句なしの傑作。

クレヨンしんちゃんを甘く見ていました。
まさかここまで心を突き刺してくるとは予想外。
危なかった。
もう少しまつ毛が短かったらポロリしてた。
ギリギリまつ毛の表面張力に引っかかって助かりましたが、実質泣いてました。
完全子供向けアニメでこんなことになるとは………。
大人側から見た評価は間違いなく大傑作です。
だからといって子供置いてけぼりのような話ではないと思います。
ちゃんとクレヨンしんちゃんらしい下品な笑いどころがたくさんあるし、 アクションシーンが要所に盛り込まれていて集中力を切らすことなく楽しめると思います。
当時の子供に直接ヒアリングしたわけではないので想像ですけど。

大人なら絶対「持っていかれる」昭和レトロ。

この作品では敵の組織イエスタデイ・ワンス・モアが「匂いで子供の頃の記憶を呼び戻す」という離れ業で攻撃してきます。
こいつは強力です。
フェロモンで男を誘惑して味方につける敵は度々見かけますが、思い出に耽らせて無力化するとはね。
昔懐かしい物って本当に心を持って行かれますよね。
中学生の時点でも大掃除の途中で幼少期の写真を発見すれば持っていかれるくらいですからね。
大人が積み重ねた記憶となれば油断しなくても自分の思い出の世界に振り込んでしまうものです。
エスタデイ・ワンス・モアの策略は、テーマパークの中に暮れなずむ昭和の街並みを完全に再現して母親の作ったカレーライスの臭いを漂わせる完全犯罪とも言うべき狡猾な手口。
しかも人間がセンチメンタルになりやすい夕暮れの空を常に映し続けているというあざとさ。
時代設定は大阪万博の辺りですから、昭和40年代だと思われますが、まだ生まれていなかった私でも心奪われるの不思議です。
2001年の作品で35歳くらいのお父さんが子供を連れて見に行くとなれば、だいたいそのくらいでしょうかね。
今のしんちゃん世代だと昭和末期でファミコンがあった時代なので感覚が全然違うかもしれません。
実は私もギリギリわかる程度の世代でした。
それでも心にズドンとくるので、昔懐かしさに関しては何らかの共通点があるんだと思います。

子供も楽しむ昭和の大人。

大人達がレトロを楽しむだけでなく、子供達もしっかり昭和の大人を楽しめます。
食事も与えられないほど育児放棄された時はヒヤヒヤしましたが、食料目当てに無人の夜のバーに忍び込んで大人の恋愛ドラマのコントで遊んでいるのを見てほっとしました。
子供は入れてもらえない夜の店、子供だからこそ入りたいものですね。
そして飲酒。
ただの烏龍茶だと言ってましたけど、あれ間違えてウーロン杯?
場の雰囲気に酔ったとしておきましょう。
喫煙に厳しい世の中でなければ、きっとタバコの真似をする可能性だってありましたよ。
私もタバコ型のチョコ、ポケットに入れてましたもんね。
大人達は子供に帰りたがっていたのに、子供達は大人になりたがっているのが面白いですね。
バスの運転だって子供の憧れ。
ボーちゃんだって園長先生の運転を毎日観察していましたもんね。
そしてバスガイド。
子供達にはなりたい大人像があるって事です。
ひろしも子供の頃は特撮ヒーローになりたかったわけですし、それもかっこいい大人になりたい憧れなんですよね。
実のところ、大人達は昭和に帰りたいのではなくて、 理想の大人になりたいのではないですかね?
20世紀が良かったというより、夢を持った毎日がかけがえないものだったのではないかと思います。


21世紀を迎えるにふさわしいい内容だった。

2020年になって思いますが、この作品が2001年に世に出たのは意味があったなと思います。
令和になって平成を振り返ったように、21世紀を迎えるにあたって20世紀を考える時間が必要だった。
大阪万博から始まった時、真っ先に思いついたのが愛地球博でした。
愛地球博は2005年。
当時の話題のけん引役はワールドカップ愛知万博でした。
その都度大阪万博が引き合いに出されたので、この映画も愛知万博の未来を楽しむストーリーだと早とちりしたので昭和から離れなかったところで驚きました。
牧歌的な昭和の風景と活気のある大阪万博は、不景気な話ばかりの平成も未知数の愛知万博より魅力的に見えたかもしれません。
大人達が醸し出す空気が 懐古主義だったらそれを見る子供たちが将来に不安を感じるのも当然です。
子供達に未来への希望を持ってもらうためには、大人たちに自分たちの過去をポジティブに見直す必要があったかと思います。
結論としては、21世紀を否定する相手を否定して未来を肯定したので子供たちの 21世紀に対する挑戦心が生まれたのではないかと思います。

昔はよかったコンテンツは嫌い。

面白いかどうかは別として、昔はよかった系のコンテンツは嫌いです。
確かにこの作品で描かれる昭和の場面は幸せに満ちているようにも見えます。
しかし、それはみんなの漠然とした記憶の中でろ過された楽しかった瞬間の記憶をまとめて具現化しているからに過ぎません。
冷静に思い返せば、昭和なんて良かったことよりも嫌なことの方がずっと多かったはずです。
人間関係が面倒くさくて喧嘩と噂話ばっかり。
学校では暴力と体罰が普通だったし、交通事故は日常茶飯時。
欲しいおもちゃは手に入らず、甘いものも滅多に食べられない。
あの大人たち、共通の遊びが見つかったとはいえ、よく喧嘩せずに仲良く遊べたなあ。
21世紀は清潔だし快適だぞ。
ボットン便所に出会うことはなくなったし、大抵の場所にはエアコンがあるぞ。
大人達だってエアコンとウォシュレットのない世界なんて行きたくないでしょ。
都合の悪い所は目をつぶって美味しいところだけつまみ食いして現代の悪い点だけを批判する態度はよろしくない。
そういう駄目な所があったからこそ、人々は変化して、その結果として今がある。
現在の否定は過去の自分の否定でもあるのです。


本筋とは関係ない引っかかったところ。

わざわざ書くほどでもないのですが、なんとなく印象に残った場面を散発的に書き留めておきます。
ポジティブ・ネガティブは脈絡がありません。


夜の BAR で一杯やるのはやばいなあと思いましたが、それ以上にギリギリなのがコンビニのところ。
大人達が子供の世話を放棄してしまったため、食べ物がなくなった子供たちはコンビニに向かうのですが、そこは既に不良達に占拠されて商品が完全に荒らされてました。
子供達が略奪行為………?
そして、しんちゃん達も同様に、背に腹は代えられないのでバレないようにこっそり忍び込んでお菓子を持ち出してました。
見えないところでお金を置いていってるのかもしれませんが、もしかして万引き………?

そしてもう一つ、みさえが食事を与えずネギを渡すところ、子供が見たら震えるほど怖かったんじゃないかと少し心配しました。
ひろしがお菓子を取り上げて一気食べ尽くして威嚇するところも表現としては分かるんだけど子供に見せるには少し心配だなぁと思いました。

夜のデパートに忍び込むのは、やっちゃいけないとはいえ夢ですね。
特に寝具売り場の豪華なベッドで眠るのは私もやってみたい。
確か初代透明人間も無人になったデパートに潜り込んでましたね。
ネネちゃんがトオル君の横で寝ているのはご愛嬌としておきましょう。

そしてワクワクしちゃうのがバスの乗っ取り。
大型車を奪って逃走するのって子供心に憧れますわ。
後ろから追跡してくる車を体当たりで排除して逃げ切ったり、乗り移ってくるところを退けたり、すごくマッドマックス感があってよろしかったです。
2000GT にぶつけたところは愕然としてしまいましたが。

後はタワーの上での鉄骨渡り。
鉄骨の上を列をなしてわたって「早く前に行け」と急かすあたりは完全にカイジの鉄骨渡りでした。
もう落ちそうで見てられなかったですけどね。
こっちのおまたがヒュンするわ。

肝心のところには触れてない。

まぁ色々書きましたが、実はひろしの回想シーン含めて肝心のところには全く触れてません。
ネタバレどうこうよりも実際に見て欲しい。

最も泣けると思われるひろしの回想シーンは人それぞれで思い返すところが違うと思います。
是非一度鑑賞して味わって欲しいと思います。
仕事とかマイホームとか全く別の体験をしていたとしても自分の体験を重ね合わせて共感できますよね。
この映画を見に来るからには、子供と何らかの接点があるはずなので。
心に刺さる名セリフもたくさん登場します。
ネットを探せばたくさん見つかるのですが、読むだけで済ますのにもったいないです。
それも実際に アニメの中で体験してほしい。
私にとっての絶対おすすめの一本であることは間違いないです。