ぺんちゃん日記

食と歴史と IT と。 Web の旅人ぺんじろうが好奇心赴くままに彷徨います 。

鶏が生食できるあるいはできない理由を調べる。

生食による食中毒が増えている。

近年グルメブームもあって様々な肉を生で食べるチャレンジが繰り返されています。
これまで毒があるとして刺身にできなかった穴子やウナギなどが今ではメニューに並んでいます。
また、昔は鶏は生では絶対に食べるなと口を酸っぱくして教えられたものですが、今では鳥刺しが当たり前のようになっています。
昔の教えとは何だったのか。
本当は生でも大丈夫だったのか。
それとも生で食べられるような技術革新があったのか。
伝え聞くところによると鹿児島宮崎などでは昔から鶏を生で食べる風習があったとも言うし、何が正しいのかさっぱり分からない。
気になったので調べてみました。

食中毒の正体。

鳥刺しの食中毒の原因を調べてみると、理由のトップはカンピロバクターということでした。
カンピロバクターは加熱すれば死滅しますが、生のまま食べることで食中毒を発生させます。
感染してしまうと2日後から三日後くらいに嘔吐下痢腹痛などの症状が出ます。

カンピロバクターの厄介なところは微妙でも体内に入れば感染することです。
人間には抵抗力があるので菌が付着した肉を食べたとしても微量であれば制圧できるはずなのですが、カンピロバクターにはそれが通用しません。
新鮮だから大丈夫ということはないのです。

www.fukushihoken.metro.tokyo.jp


患者数はノロウイルスに次ぐ第2位となっています。
近年は概ね横ばい傾向ですが、直近では増加傾向が見られて注意喚起がなされています。
発生件数そのもので言えば、平成初期のほうが圧倒的に多いのですが、加熱不足でなく避けられる生食が主な原因となっているのなら、より広く楽しまれるようになってくればさらなる増加が想定されます。
また、カンピロバクターに感染するとギランバレー症候群と言う重篤な症状が発生することもあるので、安易な気持ちで食べてしまうと後々激しく後悔するかもしれません。

カンピロバクターはどこからやってくるのか。

鶏の内臓にはカンピロバクターが生息しているので、自ずと鶏肉は菌に汚染されることとなります。
食中毒になる原因は他にもサルモネラ菌などがありますが、どちらも内臓に生息していて肉についているわけではありません。
では、なぜ肉ではなく内臓にいる菌が肉に付着するのか?
それは解体処理中に様々な媒介を経由して腸内の菌が肉の表面に付着するのです。
例えば、包丁やまな板のような道具。
解体する時に包丁で内臓を傷つけてしまうと、包丁が汚染されてしまいます。
その包丁で解体すると、 肉の表面に菌がついてしまいます。
表面に細菌がついた肉をまな板に置くと、今度はまな板が汚染されて、次に処理する肉が汚染されてしまいます。
これでは、鶏の感染率が低くても、一羽でも失敗してしまえば全部危険な肉になってしまいます。
では、内臓が一切つかなければ安全か?
答えは残念ながらノーです。
内臓の なかの消化物、早い話が鶏糞の中にも菌が生息しているので、体の表面に付着している可能性もあるのです。
このように、あらゆる経路でくっついてくるので、厳重に管理していない限りは汚染されているものと考えた方が良いでしょう。
特に大量生産されている一般の鶏肉は中抜きと言って機械で一気に引き抜くような解体方法なので、内臓及びその中身の衛生管理まで考慮されていません。
では一体どの程度の鶏肉が汚染されているのか?
厚生労働省の資料によりますと、市販鶏肉のカンピロバクター汚染率は低くても20%、中には60%を超える検査結果もあります。

www.mhlw.go.jp

農場の段階でも20%から50%と比較的高い汚染率が出ていますので、鶏はカンピロバクターがいる動物だと考えた方が良いでしょう。

安全に食べるには。

カンピロバクターサルモネラ菌は肉の内部には生息していないので、表面を十分に加熱して殺菌した後に中身だけ取り出せば安全ということになります。
これは牛肉などでも行われているですね。
他にも表面を炙るたたきで調理すれば危険性は下がります。
加熱が不十分であったり、調理器具や調理者の手が汚染されたらリスクはゼロにはなりませんが。


気になるのは鹿児島の鳥刺しです。
表面を加熱してから切り落とすトリミングという方式では可食部分を廃棄してしまうことになりますが、そんなもったいないことを昔からやっていたとは思えないのです。
何か安全なさばき方があるのではないかと考えます。
ふぐだってさばき方さえ間違えなければ美味しく食べられるのですからね。
フグのように内臓を傷つけない解体方法を探ってみます。

その結果わかったのが外はぎと呼ばれるさばき方があることがわかりました。
内臓には一切手をつけずに、手足から順番にもぎ取っていく方法です。
なるほど、このやり方ならリスクは下がります。
と思いきや、外脛なら安全というわけではなさそうです。

https://www.pref.ehime.jp/h25122/2541/tyousa/documents/h20tokunaga_1.pdfwww.pref.ehime.jp


肉をバラバラにする段階だけでなく、羽をむしる工程から適切に衛生管理がなされていなければ容易に汚染されてしまうということで。
一方でカンピロバクターが全く検出されなかった 処理場もあるので設備の運用が正しければ安全と言えるのかもしれません。

鳥刺しの安全性。

結局のところ鳥刺しが安全であることは確認できませんでした。
鹿児島では過去数十年に渡って鳥刺しによる食中毒事故が起きてないということなので適切な衛生管理さえしていれば安全に食べられるはずなのですが、簡単には真似できないノウハウだということなんでしょう。