ぺんちゃん日記

食と歴史と IT と。 Web の旅人ぺんじろうが好奇心赴くままに彷徨います 。

三国志を読み返す 宮城谷昌光・三国志 第11巻の感想

宮城谷昌光三国志、全12巻中の第11巻となります。

これまでの流れ。

諸葛亮司馬懿の宿命の対決は諸葛亮の病死で決着がつく。
蜀は撤退。魏延の反乱で戦力を大きく失う。
孫権と満寵の戦いは曹叡の救援により形勢が大きく動き、孫権は撤退。

危機を乗り切った魏はこの隙に遼東の公孫淵を滅ぼして版図を広げる。
この戦いで指揮をとった司馬懿は大いに名声を高める。
当面の間、魏は安泰と思われたが曹叡が突然病に倒れて死ぬ。
後を継いだのは曹叡の養子の曹芳。
まだ幼かったため後見人に曹爽と司馬懿が選ばれる。
曹爽は初めのうちは年上の司馬懿を尊重していたが、次第に派手好きで遊び好きな者たちを近くに寄せて司馬懿から軍事的権力を取り上げた。

孫権は国が疲弊していることは知りながら曹叡亡き後の魏の力を試そうと北伐を決断。朱然、諸葛恪などが魏に侵攻する。
曹爽の指導力では撃退できず、司馬懿が窮地を救う。
曹爽は強引に蜀を攻めて失敗するなど失策を重ねた。


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第11巻 三国志、事実上の終了。

魏では司馬懿が曹爽との宮廷闘争に勝利。司馬懿が老衰で亡くなると、権勢は長男の司馬師に引き継がれ、いくつかの政紛を重ねて司馬氏の威勢はますます強くなっていく。

呉では皇太子選びで国が分裂するほどの派閥争い。
末子の孫亮が勝利し、諸葛恪に政治を委ねたが、負けん気の強い諸葛恪は戦争に敗北したうえ、周囲と反目。諸葛恪は粛清される。

魏・呉・蜀、いずれも傀儡政権となり、主体性のある政治はできなくなっていく。
曹操劉備孫権そして諸葛亮三国時代の立役者の活躍を目の当たりにした世代がほぼ全滅。
群雄割拠、戦国物語としての三国志は事実上の終了となった。
しかし、俄然面白い。
司馬懿の一世一代の大芝居、ボケたおじいちゃんになるのが最大の山場。
司馬懿おじいちゃん、女の服を贈られたり、おもしろエピソードを持ってるね。

蜀の存在感が全くないので劉備ファンはつまらないだろう。


さて、ここからは三国志のオレオレ解釈です。

曹爽とゆかいな仲間たちが全滅。
浮華の徒はアクが強くていいキャラしてる。
みな、おしゃれで酒好き女好き。邸宅の地下に秘密の部屋作って夜な夜な集まって歌い踊って騒いだというのだから今時で言うならクラブに通い詰める感じ。
こんなだけど、何晏の本業は老子研究の学者。玄学の創始者のひとりとも言われる。曹操の養子で才能を愛され、曹操の娘を妻に迎えている。間違ってもブタ殺しの孫ではない。
参謀役の丁謐は頭が良すぎて口が悪い。政権中枢の自分より才能ありそうなものが司馬懿しかいないので低脳王朝だと見下してる。
鄧颺は乱暴で女好き。金にだらしがない。
桓範は才能はあるが自尊心が高い。ただし、彼は曹爽の田舎のパイセンだったから昇進しただけで愉快な仲間だったわけではない。

曹芳を含めて風紀を乱したのは確かだが、徹底的に族滅されるほどの悪事だっただろうか。
曹芳が英邁だったら司馬懿は逆に不安だったのでは。
司馬懿は歴史の勝者だからかっこよく(都合の悪いことは省かれて)描かれているけど、実際やってることはかなりえぐい。そして嘘つき。
「罪を赦す」と和睦を呼びかけ、投降したら前言撤回して死刑にした。なんと孟達、曹爽、王陵の3人がこの手口の犠牲になった。
蜀の費禕司馬懿のクーデターの是非を議論した。
国民は動揺せず人事が適切で曹叡の遺言通りに国を支えたと言う意見。
国が半分に割れるほど争い、クーデターの際には皇帝を不安定な立場にし、争った相手を族滅させるのはやりすぎという意見の二つ。
的を射た分析である。

司馬懿に近づくことで力を維持したのは郭皇太后
王陵の乱、張皇后の暗殺計画、いずれにも登場しないので何をしてたのかと調べてみるとなかなかの食わせ者。ここから活躍と言うか暗躍するようだ。
太后の存在意義は頼りない皇帝を支えることにある。
王陵が推薦する曹彪は血縁が遠いから味方する意味がない。
張緝と張皇后の計画は、言ってしまえば皇后と皇太后の勢力争い。
司馬氏の側につくのが有利だと考えたのだろう。
太后にとって皇帝はちょっとだらしないくらいが良い。
曹芳が酒浸りになったのは母のためだったりして?

やるべきことをやりきってから死んだ司馬懿
いくつもの暗殺計画を防いで天寿を全うした。
曹操献帝の裏工作で度々命を狙われたが それをきっかけに与党を皇室に送り込んだ。
司馬懿は出世が遅かったかもしれないが。曹操の近くで皇帝のあしらい方を学んでいたのかもしれない。

孫権老害化して晩節を汚してしまった。
若い嫁を猫可愛がり、孫のような年の子を溺愛。後継者選びを破綻させる。
袁紹劉表から学ぶことができなかった。
おまけに厳罰を好むようになり、皇太子の扱いのおかしさを指摘する者たちを次々と排除。教科書どおりの暗君。
まあ曹操ですら曹植に気持ちが傾いていたのだから理屈ではうまくいかないのが後継者選びということか。
結果、末子の孫亮が即位。諸葛瑾の子の諸葛恪が太傅として実権を握る。
奇しくも叔父諸葛亮と同じく幼帝の後見人となった。
野心家の諸葛恪は、魏の司馬懿の死後の魏の実力を測るために北伐を決意する。
思い返せば諸葛亮曹丕の死で曹叡に代替わりしたタイミングで出師表を書いた。
父親が常に諸葛亮と比べられ、弟の方が上と言われた悔しさを自分が晴らしてやろうと意気込む気持ちは理解してあげたい。
合肥にこだわったのも孫権が落とせなかった城を攻略することで尊敬する人を超えたいと言う出世欲だったろうか。
結局その野心は身を滅ぼす。

劉禅は四十歳で やっと政治に口を出すようになった。
諸葛亮に遠慮していたのは分かるが、その後も政治にはそれほど興味はなかった模様。
アホのふりをしていたと考えられなくもないが、輝くエピソードはない。

諸葛亮はなかなか子供ができず兄の諸葛瑾から諸葛喬を養子に迎えた。
その後、実子の諸葛瞻が生まれたので 諸葛喬の立場は宙ぶらりんとなった。
役割を失った諸葛喬は自分の境遇に歯噛みしたかもしれないが、呉にとどまっていたら諸葛恪の連座だったわけで 、諸葛瑾の血統を守ることはできた。
諸葛亮の実子の諸葛瞻は諸葛恪の危うさを案じる手紙を渡しているが諸葛恪には効かなかったようだ。

大まかな流れ。

呉は皇太子の孫登が死去したことで孫和を太子としたが、弟の孫覇も同格の扱いにした。
それは争いの種だと雇譚が諫めると、孫覇に近い全琮、孫弘、全奇 たちに讒言され、孫権の逆鱗に触れる。
厳罰を好むようになった孫権は雇譚、雇承の兄弟と張休を処刑。さらに同様の諫言をした陸遜までが流刑となった。
陸遜、雇譚に変わって歩隲が政治の中枢に就く。

司馬懿は呉との国境を守る将軍に王淩を指名した。
王淩は董卓を殺した王允の甥である。
王淩は呉の皇太子をめぐる内紛を察して孫権の暗殺を企てるが失敗。
怒った孫権朱然に命じて魏の領内を荒らす。

魏の朝廷では曹爽と司馬懿の対立が 進んでいた。
曹爽の取り巻きの 浮華の徒は法律を捻じ曲げて着服、賄賂、盗みを行うようになる。
その知恵を与えているのがかつて十常侍を粛清した何進大将軍の孫の何晏を筆頭として丁謐、鄧颺、桓範などであった。
彼らが風紀を乱していることに眉をひそめた皇太后司馬懿に接近しようとする。
丁謐の助言で皇太后の危険性に気づいた曹爽は皇太后と曹芳を離す。
曹爽は勝手に詔を乱発。独裁体制に入る。
司馬懿は病と称して家から出なくなった。

曹爽の専横は凄まじく天子のような派手な暮らしぶりだった。
曹爽は両親がはっきりしない養子の曹芳を廃して自分が天子となる正当性があると考えるようになっていた。
それを阻止できそうなものは司馬懿だと考えた曹爽は司馬懿の病が本当か確かめるために人をやった。
司馬懿はすぐそれと察するとボケた芝居をして騙した。
司馬懿の衰えぶりを聞いた曹爽は警戒を緩める。

春、曹爽と曹芳は曹叡の墓参りで高平陵に行き、洛陽を離れる。
司馬懿はその隙をついて皇太后に面会。曹爽を追い出すクーデターに誘う。
司馬懿はさらに高柔と王観を味方につける。
仕事ぶりが清潔な二人を参加させることでクーデターの正当性をアピール。

かろうじて洛陽から逃げ出した桓範は曹爽に詰め寄って天子とともに許昌に向かって司馬懿と対決すべきと提案した。
陳泰と許充は皇太后には皇帝を廃して別の皇帝を立てることが可能だから、曹芳を抱き込む価値はないと忠告する。
困惑した曹爽は抵抗せずに曹芳を返せば貴族としての身分を保証されるのではと考える。
桓範は声を荒らげて止めたが曹爽は聞く耳を持たず司馬懿と交渉する。
司馬懿は曹爽にすぐさま引退して謹慎するなら助けると返す。
受け入れた曹爽は邸宅に軟禁される。
曹爽シンパの悪行は側近だった何晏が減刑を期待して容赦なく取り調べる。
曹爽らは反逆の罪で死刑となった。
結局、何晏も同罪として死刑だった。

司馬懿の粛清は苛烈で曹爽の親族末端にまで及んだ。
さらに曹家と血縁関係の深い夏侯玄の軍権を取り上げる。
夏侯覇は蜀に亡命。
夏侯覇夏侯淵の子であり蜀は父の仇敵であるはずだが、夏侯覇の子女が張飛に嫁いで娘を産み、その娘が劉禅に嫁いだ縁を頼ったのだった。

七十歳を迎えてすっかり衰えた孫権は自制が効かなくなっていた。
皇太子の孫和よりも弟の孫覇をひいきして国が割れるほどの派閥争いを起こしていたが、その下の孫亮が生まれると愛情はそちらに移った。
皇太子の孫和を嫌っている全公主は孫亮をやたら褒めたので孫権は孫和と孫覇の二人とも疎ましくなった。
そこで喧嘩両成敗とばかりに皇太子孫和を廃し幽閉、孫覇を毒殺した。
そして末子の孫亮が皇太子となった。

王淩の甥の令狐愚は司馬懿董卓同様の倒すべき国賊と考えた。
王淩は国境で防衛しているので兵力は持っている。
曹操の晩年の子の曹彪が評判良く、出自不明の曹芳に対抗できると考える。
令狐愚が曹彪を口説く。
このころ魏は呉の江陵を攻撃。呉が皇太子のことで混乱していて勝利する。
呉がやり返しに来ると睨んだ王淩は司馬懿に出陣を打診。
この機会に司馬懿をおびき出して殺すつもりだった。
しかし、司馬懿に見破られる。

曹彪が乗り気になった時、暗殺計画を進めてきた令狐愚が病で死ぬ。
計画が座礁した王淩は焦って仲間を集めたが人選が甘く密告されてしまう。
司馬懿は王淩の乱の討伐に向かう。
司馬懿は洛陽に暮らしていた王淩の子の王広を使者として速やかに降伏すれば助けると約束する。
王淩はそれを信じて降伏したが司馬懿は約束を破って一族全てを処刑した。
曹彪も反逆に加担したとして自殺に追い込んだ。
魏の実権は完全に司馬懿のものになった。
ほどなくして司馬懿は老衰で死んだ。

呉では孫権がいよいよ老衰のため病床につくことになった。
皇太子の孫亮家督を継ぐが、幼いので母の潘皇后、孫弘、そして孫権の娘の全公主、孫峻などの密室政治が始まった。
孫権孫亮の太傅を諸葛恪とすると、孫弘は諸葛恪の清廉さを恐れた。
孫権はかつての皇太子両成敗事件を反省して孫和を許そうとしたが、孫峻はこのまま孫亮にするべきと軌道修正する。
孫弘は孫権崩御した隙に諸葛恪の失脚工作を行うが失敗して殺される。
孫亮が即位。諸葛恪が太傅として実権を握る。

諸葛恪は魏の司馬懿と王淩が死んで守りは手薄だったので動く。
堤防の建築を始めて牽制すると、魏の新しい将軍である諸葛誕はこれを攻撃。
諸葛恪は丁奉を差し向けると魏は大敗北して撤退。
司馬師は敗北の任命責任を取って自身と弟の司馬昭を降格した。

一方で勝利した諸葛恪は蜀の姜維に協力を求め北伐を行う。
諸葛恪はたちまち魏に深入りしたが、難攻不落の合肥の城が手薄であることを知ると、これを取り囲み、援軍を待ち伏せる。
呉と蜀から同時攻撃を食らって司馬師は頭を抱えたが、虞松の意見を取り入れて合肥は落ちるものとして後回しにした。
蜀に全兵力を集中させると、蜀の姜維は驚き、急な出陣で物資が不足していることを考慮して退却した。

守備兵わずか3000人の合肥の城は援軍が必ず来るものだと信じて粘り強く戦う。
諸葛恪は今の勢いなら助けに来る魏の本体を叩けると自信を持って待ち受ける。
しかし一向に敵は現れないので士気を失い、合肥の城すら攻めあぐねる。
諸葛恪軍は疫病に悩まされ20万の兵力が半減。悪い報告をすると叱責したので誰も意見を言わなくなった。
諸葛恪は作戦を変えて城壁より高い丘を作る。
遅れていた援軍が蜀を退けて到着したので諸葛恪は撤退した。

虫が治らない諸葛恪は素直に撤退せずに国境沿いに駐屯して街を作ると言い出す。
しかし、孫亮にも不評で都に帰るべしと詔が来る。
敗軍の将なのにやる気を失わない諸葛恪は帰国しても復命せず、謝りもせず、 大船団を組んで徐州を攻めるという。
諸葛恪は反対するものはことごとく処分したので急速に求心力を失う。
孫亮の許しを得た孫峻によって諸葛恪は誅殺。
呉の諸葛家は滅亡した。

魏では司馬師の権力の前に曹芳すら逆らえず、皇帝がないがしろにされることを憂う李豊が司馬師の暗殺を計画していた。
李豊は曹家と血縁関係の深い夏侯家の夏侯玄、張皇后の父張緝を仲間に誘う。
しかし暗殺計画は露呈。関わった者は処刑される。
張皇后の父親まで参加していたので張皇后が廃止され王皇后が立つ。
曹芳はすっかり大人しくなった。

第12巻に続く。
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眺めの会・10月中旬『ゴッドファーザー PART II』

ゴッドファーザー三部作の2作目です。
三部作とは知らず軽い気持ちで手を出してしまいました。
片足を突っ込んだらもう抜けられないんだからヤクザの手口ですね。

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視聴プラットフォームは Amazon プライムビデオ。
プライム会員は無料で視聴できます。
今回も字幕版を選択。
年齢レーティングは PG 12です。

ゴッドファーザー PART II。

1974年に公開されたアメリカのギャング映画。
日本では1975年に公開された。
ゴッドファーザー3部作のうちの2作目で、ゴッドファーザーの続編となる。
監督はフランシス・フォード・コッポラ
脚本はマリオ・プーゾフランシス・フォード・コッポラ
主な出演者はアル・パチーノロバート・デュバルロバート・デ・ニーロ
上映時間は200分で言語は英語とイタリア語。
年齢レーティングは PG 12。

あらすじ。

コルレオーネファミリーのドン・ヴィトーは幼い頃、父親が敵対するマフィアのドンに殺される。
国からも追い出され単身で渡米。
懸命に働いて妻と一人の子供を得るが、やがて犯罪に手を染め、マフィアとしての実力と名声を高めていく。
時は現代に戻り、ヴィトーからファミリーを譲り受けたマイケルはネバダ州のリゾート地で賭博を主体とするフロント企業のボスになっていた。
ユダヤ系マフィアとの関係が悪化するとファミリーの中でも意見が対立。
マイケルは犯罪組織に関わっていることをリークされて議会で証言を迫られる。

見終わった感想 当然ネタバレあり。

壮大な人生ドラマ。

前作は暴力オブ暴力。
突然飛び出してくる暴力とマフィア同士のピリピリしたのドツキ合いの要素が強かった。
今作ではファミリーの栄枯盛衰を描く歴史ドラマ的作品だという印象を持った。
二つの作品を合わせたことで全体像が大きく変わった。
うん、これは名作だ。
権力闘争の本質をマイケルというひとりの英雄の人生を使って壮大に描いたドラマという意味で。

主人公マイケルはコルレオーネファミリーの一員としてドン・ヴィトーの背中を追いかけながら働き、頭角を現していた。
そしてヴィトーから譲り受けたファミリーのドンとしての役割を果たすべく家業に力を注いでいく。
ここまでが前作。
しかし ファミリーの舵取りは想像以上に困難だった。
皮肉なことに裏の仕事が成功するほど家族は分裂して行く。
兄が。妹が。父の盟友が。そして妻までもが自分の方針に従ってくれず勝手な行動を取る。

名君には呪いがかけられる。
権力と名声を手に入れるほど家族を不幸にする血の呪い。
古今東西、英雄と呼ばれし者を悩ませてきた。

私は歴史好きだから、このシリーズを歴史的観点で見てしまう。
おっさんが帝政ローマ時代の支配体制をわかりやすいと懐かしんでいた場面ではニヤリとしてしまった。
歴史好きならその不安定さを知らぬはずがない。

力こそ正義。
とてもシンプル。
しかしそのレギュレーションはチャンピオンである限り果てることなく挑戦され続ける。
どんなに強くても殺されたら終わり。
ハングリーな挑戦者はワンチャンで命を狙ってくる。
マイケルの座右の銘だって「人は殺せる」。裏を返せば「自分は殺される」ということだ。

安定的な支配のためには震えるほどの実力差と抗いきれない魅力が必要なのだ。
それは家の外だけではない。
むしろ敵はファミリーの内側にいる。
特にマイケルの場合はファミリーの中で一番年下だから軽くみられやすい弱点がある。
マイケルは強い。だからこそ、血の呪いが疼きだす。
歴史にたびたび登場するお家騒動。粛清というやつ。
マイケルは真面目だから。というより真面目だからこそ秩序を優先して手心なしに制裁を与えてしまうから出血が止まらない。

これはヴィトーの失策と言える。
マイケルは本来なら後継者とし地固めされるべきだった。
同世代の仲間と仕事を重ねて信頼関係を築いていればファミリーはもっと安定しただろう。
しかし、あの事件の前までは父親の仕事に反目していたし、父も望んでいなかった。
兄を押しのけたのも良くない。
年齢差は誰にでもわかるが実力を測る物差しはない。
弟に指図されて運転手までやらされると兄としての威厳が丸つぶれ。
フレドの気持ちがぐらつくのは当然よ。
かくして人脈の薄い君主の誕生だ。

マイケルにとって、信頼できるファミリーは自分の息子だけ。
だから妻には一人でも多くの男の子を産んでもらう必要がある。
マイケルがやたら男の子にこだわったのは そこだ。
ちょっと横道にそれるが、コルレオーネファミリーには政略結婚がない。
妹は自由恋愛だし、マイケルは堅気の世界から嫁を迎えた。
兄嫁の実家とは縁がなかったようだ。
イタリアのマフィアとの付き合い方はそういうものなのかもしれない。
そんなわけで男子が求められているのだがマイケルは浮気しなさそうだから奥さん一人で何人子供を産むのかと想像するとウンザりするね。
イエ制度はやっぱりクソだわ。
パート3でのマイケルの奮起に期待する。


ここまで書き連ねてきて、こんなのでゴッドファーザーを楽しめたのか自分でも困惑している。
もちろんヴィトーの過去を描いたパートはとても好き。
国を追われて渡米した痩せっぽっちのあの子が将来ゴッドファーザーになるのだから胸アツだよ。
頼る人がいない世界で懸命に生きるヴィトーの姿には感動した。
そして、こんな子にもチャンスを与えるニューヨークの懐の深さもね。
犯罪に手を染めて真っ当な生き方から転がり落ちていくほど羽振りが良くなっていくところが運命の皮肉を感じる。
そのジンクスがマイケルにも受け継がれていくところも。
やっぱり血の呪いだ。

どうでもいい感想だけど、序盤の葬列が我々世代には馴染みがないので驚きの光景だった。
なるほど。埋葬すら許されないとはそういうことか。
相変わらず変な所見てるの。

眺めの会・10月上旬『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』

公開当時から気になってた。
ファーストガンダム直撃世代としては見逃せないタイトルですね。
Amazon プライムビデオで無料で見れると知りまして、うっかりチョイスしてしまいました。

ファーストガンダムのストーリーの中で浮きまくって、なぜこの話が挿入されたのか意図がわからず、 それでいて不思議な手応えが爽やかなエピソードです。
スピンオフ作品ということでテレビアニメ版を見ていない人には手を出しづらいと思います。

視聴プラットフォームは Amazon プライムビデオ。
プライム会員特典で無料で視聴できます。
年齢レーティングは全年齢です。

機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島。

2022年に公開された日本の人気アニメ機動戦士ガンダムのスピンオフ的長編アニメ映画。
監督は安彦良和
脚本は根元歳三
原作は矢立肇富野由悠季
主な声の出演者は古谷徹
上映時間は108分で言語は日本語。

見終わった感想 ネタバレあり。

連邦とジオン、互いのいいところがちゃんと出た上で両者活躍の見せ場があり、最後は丸く収まるという時代劇的王道ストーリー。
涙あり笑いありチャンバラがあって感動あり。
パリは燃えているか」の引用も良かったですね。
未熟な子供たちが懸命に生きる姿がおじさんの胸にはグッときました。
あの悪夢を見たらアムロだってまだ子供なんだなと改めて気づく。

ヒーローもの特有の都合のよい展開もあるけど全年齢対象だから気楽に見ましょう。
ヤギ無双(笑)。あれはいいものだ。小学校低学年にも楽しめる。
ガンダムはおじさんのものではなく子どものもの。
ガンダム直撃世代の私だってこういうところから入門したんだから。
おじさんは白目なしのブライトさんの中間管理職的な活躍を見てあげて。

テレビアニメ版とは設定が少し違うので昔の記憶と照合しながら鑑賞すると理解の妨げになるかもしれない。
ホワイトベースの乗組員はアムロの救助しか考えておらず、誰一人としてガンダムを回収するとは言わなかった。
すでにジムが実戦投入されておりガンダム戦略的価値がなくなっているという設定なんだね。
少々寂しい気もするが、陽動作戦部隊としては適切な扱いかもしれない。
ガンダムが最高機密だったら奪って操縦したドアンをそのままにはしておけないからね。

細かい設定には文句は言わないが、連邦側の視点で話が進んでいくため、ドアンの過去がほとんど明かされないまま終わったことには不満が残る。
ドアンがどういう経緯であの島にたどり着き、子供達と暮らすようになったのか。
敵の女と過去に何かあったようだが匂わせだけで終わってしまった。
ひどい。

弾道ミサイルの発射を止めるのが目的だったことは明確だが 知りたいのはそこまでの経緯なんだよ。

サザンクロスの仲間たちは裏切り者と言ってたので軍を辞めたのではなく脱走と思われる。
私はこれまで勝手な思い込みながら、ドアンは戦争にうんざりして田舎に隠遁したのだとと想像していた。
捨てられたザクで子供たちを守るなんてかっこいいじゃん。

今回もぼんやりとそんな気分で見終わったのだけど、後から振り返ってみて疑問が湧き出る。
それではドアンは連邦の偵察隊と戦う前にジオンと戦ってミサイル発射基地を奪ったことになる。
だとしたら連邦より先にジオンが奪い返しに来るはず。
最終カードとも言えるミサイル基地と通信が途絶えて放っておくはずがないでしょう。
島の少年は秘密基地のことを知っていたし昨日今日の話ではなさそうなんだけどな?

やはりマ・クベの超極秘任務で基地に駐屯しているということか。
裏切って逃げたというのは姿を消すための隠蔽情報だとすれば辻褄は合う。
つまり残置諜者として核ミサイルを準備するのが主目的で、子供たちを助けるためにあの島で暮らしているわけではないということ。
だとすれば子供達とドアンの暮らしが色褪せる。
そんなドアンが見たかったんじゃないんだな。

どっか大事なセリフをきき落としたか。
ククルス・ドアンの名前がタイトルにも入っているんだから胸の内をもうちょっとオープンにしてほしかった。

釈然としないから勝手な想像で隙間を埋めることにする。

戦争にうんざりして辞意を表明したところ、マ・クベに慰留されて戦闘の少ない 秘密基地の防衛任務を提案された。
そこで島の子どもたちと知り合った後、基地の正体を知って裏切った。
そこに連邦軍の調査部隊が来て交戦となり 相打ちでドアンだけが生き残った。

ということでよろしいか?

三国志を読み返す 宮城谷昌光・三国志 第10巻の感想

宮城谷昌光三国志、全12巻中の第10巻となります。

これまでの流れ。

魏は曹丕が突然体調を崩して崩御曹叡の時代へ。

蜀の諸葛亮は呉の孫権と示し合わせて北伐を行う。
しかし、大きな戦いに慣れていない諸葛亮と蜀の国民は戸惑いが多く、ちぐはぐな攻撃で魏の将軍司馬懿の粘り強い守りを崩せない。
それでも諸葛亮は戦いを諦めず、2度3度と攻撃を繰り返すうちに戦い方を覚える。

孫権は東と南から両面攻撃するがどちらも満足な成果を得られない。
そこで遼東の公孫淵と組んで南北から挟み撃ちしようと企むが、公孫淵の突然の裏切りで大きな痛手を受ける。


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第10巻 生ける司馬懿仲達、天下を駆ける。

諸葛亮は勝利を目前にしながら兵糧不足で敗北したことを反省し、3年かけて兵站を整える。

万全の態勢で出陣する諸葛亮、そして防衛する司馬懿
諸葛亮司馬懿は手堅い采配で相手に攻撃の隙を与えずがっぷり組み合う。
先に動いた方が負けると考えた両者は睨み合ったまま動かない。

その頃 、呉の孫権は足並みを揃えて合肥に攻め込む。
守備を指揮する魏の満寵の采配は鮮やかだったが兵力が手薄だったため曹叡が救援に向かう。
洛陽が長期間空っぽになることを心配した曹叡司馬懿には長安の死守を最優先してむやみに攻撃を行わないように厳命した。

諸葛亮司馬懿の戦いは長期戦の様相を見せていたが、諸葛亮の発病により事態が一変する。
諸葛亮の病は重く死を悟って退却せよと遺言する。
将軍の魏延はその内容が気に食わず クーデターを起こすが失敗。
司馬懿は敵の混乱ぶりから諸葛亮の死を悟るが曹叡から戦わないようにと厳命されていたため撤退する。

蜀と呉の傷が深いとみた魏の曹叡は遼東の公孫淵の討伐を試みる。
将軍の毌丘倹が失敗し、次に指名された司馬懿公孫淵を完全に滅ぼし、司馬懿の名声は天下に轟いた。

凱旋した司馬懿を待っていたのは曹叡の突然の訃報だった。
曹叡の養子の曹芳が後を継ぐことになったが、まだ幼いので摂政が必要だった。後見人選びは二度三度と覆るが、曹真の子の曹爽と司馬懿に決まる。



さて、ここからは三国志を自分なりに楽しんだ妄想です。

私が読んできた三国志諸葛亮が死ぬところで完結してしまうのでここからは未知のゾーン。
諸葛亮が死んだら読む気をなくすかと心配したけど、その後も滅法面白い。
司馬懿は少年漫画の主人公かと思うくらい負けない・死なない・幸運が転がってくる。
ここからの主人公は司馬懿仲達だと思って間違いない。
「死せる孔明、生ける仲達を走らす」のエピソードを真に受けて笑ったのはごめんね。
そんな裏事情があるとは知らなかったんだよ。
孔明の遺骸を見て逃げたのは、どっちかと言うと魏延

司馬懿三国志の最終勝者=ヒーロー。
生きて逃げるところから始まる活躍って少年漫画なら第1話だね。
面白い漫画になるぜ。
裏事情が明かされるのは8巻くらい?
大ヒット間違いなしだね。

司馬懿公孫淵討伐は日本人にとって、実は身近な出来事。
みんなが知っている邪馬台国卑弥呼がこの時期だからだ。
日本から貢物の使者がきたと魏の歴史書の一節に登場する。
日本は高句麗に対抗するため遼東の公孫淵と交流していたが、魏の勢いを知り公孫淵は滅びると予感。
さっそく使者を送って来た。
司馬懿の取り計らいで洛陽まで行ったとなると胸が熱くなる。

領土を持たない劉備蜀漢の皇帝まで押上げたのは 紛れもなく諸葛亮の組織作りの匠さだろう。
劉備の後を託されて絶大な権力を持っていたはずなのに 忠実な臣下として振る舞ったところは優れたバランス感覚だった。
皇帝の周りにいるのはプライド高い奴らばっかりなのに足を引っ張られなかった。
涼しい顔で諸葛亮の失敗を聞き流せる劉禅の器もある意味大きい。
政治に無関心すぎて諸葛亮の権力を恐れなかったアホ加減の劉禅諸葛亮はちょうど良いコンビだったかもしれない。

将軍諸葛亮の成長は著しい。
北伐を度々失敗したが、戦い慣れていない蜀の民をまとめあげた組織力を評価する声に同意したい。
諸葛亮の戦い方をノーリスクで発想のきらめきがないと酷評してしまったが、果たしてそんなつまらない男だったか?
その戦い方が最適解だったから、ただそうしただけではないか。
タラレバ話をしても仕方ないが、世界の趨勢が決まる前に劉備と会っていたらどこまで成長出来たか。
変幻自在、神出鬼没の作戦を見せて欲しかった。

……それって三国志演義の脚色そのまんまじゃん。
なるほど、三国志演義諸葛亮のキャラクター造形がなぜそうなったのか理解したよ。
みんなの願望が盛り込まれて赤壁の活躍が出来上がったんだね。
あそこで揚げすぎたせいで後半期待に添えない軍師になったが、夢半ばで終わるのもまたよいではないか。
赤壁孔明と現実の孔明、虚実合わさったことで諸葛亮の奥行きが増したと思う。

水から上がると弱い。水属性。
陸属性の騎馬隊はそんなに強いのか。
皇帝が負けるのは致命的だから詭道で進み、戦況が悪化すると撤退するので無駄が多い。
同じノーリスク戦法でも諸葛亮とは性格が異なる。
ただ、蜀との約束は守って足並みを揃えて北伐する。
それが曹叡を動かすことになり、諸葛亮の死で敗走する蜀を司馬懿が追いかけられなかったのだから、陰ながら蜀の滅亡を防いだとも言える。

孫権グッジョブと言いたいが、以後は攻め込むたびに司馬懿が活躍して名声を高めていくんだからゲームバランスの調整役にしかなってないとも読み取れる。

罰を与えるのが好きで伝説の島探しをするロマンチスト。
占いで行動するスピリチュアルなところがある。
絶対上司にしたくないタイプじゃん。
占い師はさぞかし大変だったろう。
皇帝とはそんなものかもしれないが、なぜ孫権だけそこを記述する?
作者の悪意を感じざるを得ない(笑)

諸葛亮が勝てなかったというよりも司馬懿が負けなかった。
防衛の戦いは難しい。
勝利しても戦利品はなく、勝つのは当然で負けは許されない。
その難しさを理解しただけでも曹叡は名君だったと言える。
もちろん司馬懿もその後の公孫淵を見積り通り一年で滅ぼして帰ってきたことを考えれば防衛だけの人ではなかったことが証明される。

魏の絶頂はまさにこの時。
曹叡がまさかの崩御
皇帝が早死にして幼帝が即位して親戚が摂政に。
漢が衰亡したのと同じ経緯で弱体化するのは実に皮肉だ。
曹叡の治世が続いていれば司馬懿はクーデターなど起こさなかったように思うがどうか。
司馬懿は曹芳の諸葛亮にはなれないのか?

この世代交代で司馬懿の将来は絶たれたはずなのに、宮廷闘争の手駒として不死鳥のごとくカムバック。
健康長寿だけでなく運まで味方している。
主人公?だけあってタフだね。
しかもライバルの曹爽は無駄な敗北して転落してくれた。

世代交代は難しい。ほとんどガチャと言って差し支えない。
皇太子選びに時間をかけて曹丕を指名した曹操の眼力が見事だったとしか言えない。
曹丕は賢帝の曹叡を引き当てたが、たまたま運が良かっただけ。
時間がたっぷりあれば曹叡ルートはなかったと思う。

大まかな流れ。

諸葛亮は3年かけて国力を充実させて北伐する。
守る司馬懿は粘り強く戦う。
諸葛亮は本拠地を五丈原に定めて戦うが魏延の攻撃が緩慢で初戦を落とす。

東では蜀の動きに呼応して孫権が動く。
合肥を守る満寵は曹叡の信頼も厚く防衛の巨岩になっていた。
合肥の城を遷して守ったが兵が手薄。
そこで曹叡の援軍を頼んで籠城する。
孫権はまさか曹叡が直接出てくるとは予想しておらず、足早に出てきた先陣を大群だと思い込んで退却した。
取り残された陸遜は絶体絶命の中、慌てて逃げずにむしろ攻めかかると見せかけて怯んだところで退却したので被害を出さなかった。

五丈原で睨む諸葛亮司馬懿
どうしても司馬懿を動かしたかった諸葛亮司馬懿に女物の服を送って挑発した。
司馬懿は激怒したが曹叡合肥の救援で洛陽を離れるため不戦という指令が届いていたので動けない。
さらに睨み合う諸葛亮司馬懿

ここで諸葛亮が体調を崩す。
やがて重篤となると見舞いに来た劉禅の使者に遺言を伝える。
後のことは蔣琬、次には費偉の順に任せて姜維楊儀に補佐させろと伝えた。
遠征は魏延を後詰めとして即時退却せよとした。

ところが魏延は戦うと言ってきかない。
犬猿の仲の楊儀が遺言を書き換えて権力を私物化していると非難する。
退却は既に始まっていたが魏延は騎兵隊の機動力を生かして費偉、楊儀を先回り。
一足先に成都に帰り、劉禅には自分に都合のよい報告をしようと画策する。
費偉、楊儀の蜀軍本体は後ろから襲ってくる司馬懿と行く手を阻む魏延に挟まれて絶体絶命。
反転して死に物狂いで司馬懿と戦う。
司馬懿曹叡から不戦と厳命を受けたが抑えきれない。
不戦を監督する辛毗が司馬懿の前に立ちはだかって退却させる。
魏延は強かったが諸葛亮が国民から愛されていたので彼の遺骸に逆らうことができず逃走。馬岱が追いかけて切り捨てた。
楊儀は憎い魏延には勝利したが出世レースで格下だと思っていた蔣琬に負けて悪口を並べたので左遷され後に死んだ。

曹叡はこの機会に遼東の公孫淵を討伐することにした。
遼東は遠すぎるので反対意見も多かった。
公孫淵に洛陽に出頭するように命じると領地を失うことを恐れて要求を拒否したため戦闘開始。
滅ぼされることはなかったが絶体絶命となった。
追い詰められた公孫淵は虫がいいことに孫権に助けを求めた。
前回裏切られた孫権は腸が煮えくり返る気持ちを抑えて救援を送る。

司馬懿仲達の見積もりでは遼東の制圧には一年が必要。
大変な戦いだったが 諸葛亮と戦った経験がものを言う。
司馬懿は遼東よりさらに東に勢力を伸ばして公孫淵を滅ぼした。
曹叡曹操ですら成し得なかった遼東の制圧成就に喜んだ。
公孫淵を助けると約束した孫権の兵団は間に合わず、多少の魏の兵を襲って奪っただけだ帰ってきた。

大勝利に機嫌を良くした司馬懿だったが帰り道に曹叡からの使いが立て続けに来る。
曹叡は病に倒れていたのだ。
曹叡は自分の子供がおらず養子に迎えた子供もまだ幼かったので才能よりも人柄重視で曹操一族の中から曹宇を摂生に選び、司馬懿が失脚するシナリオだった。
ところが劉放と孫資の2人が病床の曹叡に会い詔の撤回を求めた。
病気で判断力が鈍った曹叡は二人の意見に誠実さを見て曹爽を摂政にして司馬懿を政治の中心に据える。
慌てた曹肇や秦朗は曹叡の元に走って意見を撤回させる。
しかし諦めない孫資は再び曹叡の元に訪れ、手を握って詔を書く。

曹爽は初めは司馬懿を尊重して何でも相談したが決断のスピードが遅くなるし、将来的に対立して邪魔になると考えて司馬懿を遠ざけることにした。
そこで司馬懿には太傅という名誉職に異動させ、領地を増やすなど破格の厚遇をして褒め殺しで実権を奪った。
そして縁故のあるものを呼び寄せたが、彼らは軒並み派手好きで、その割には実力が足りない見せかけだけの人物が多かった。
司馬懿は臍を噛むふりをしながらガラの悪い曹爽を追い出せば英雄になれると内心ほくそ笑んだ。

南では孫権が法律を厳しくして厳罰を下すようになった。
張昭と顧雍は反対したが孫権は聞かなかった。
その空気を読んだのが呂壱だった。
彼は自分の敵になりそうな人物を難癖で孫権にチクった。
孫権は気分良く罰を乱発。人々は呂壱を恐れるようになった。
呂壱の権力が誰よりも大きくなったのを見かねて皇太子の孫登が苦言を呈したがそれも聞かれなかった。
そこで潘濬が 命がけで諌めたことで孫権は我に返る。

呉は度重なる戦争で国力が疲弊して反乱が多かった。
孫権は百姓をいたわるように命じながらも曹叡が死んで幼い皇帝が即位したチャンスを逃せないと北伐を決行した。

呉の朱然は樊城を取り囲んだ。曹仁関羽が激しく戦った場所である。
ここが攻略されると形勢が傾く。
しかし、摂政の曹爽は経験不足で頼りなく呉を撃退できる将軍はいなかった。
そこで干されていた司馬懿を救援に向かわせる。
司馬懿の名声は呉にも轟いている。
それが襲ってくると聞いただけで敵は動揺した。
加えて諸葛瑾が病にかかったので戦うまでもなく瓦解して司馬懿は勝利した。
揚州方面に侵攻した諸葛恪の勢力も激しい戦いの末敗れた。

その頃、諸葛亮から後を託された蔣琬は呉に同調して北伐するが、体調が優れず姜維に少し戦わせただけで撤退した。
戦果は不本意だったが諸葛亮亡き後の存在感を見せた。
後でわかるが呉の北伐は誤報で先に動いたのは蜀だった。

呉では皇太子の孫登が死去して孫和が皇太子になる。
諸葛均が死んで諸葛恪が後を継いだ。
諸葛恪は元気な人で魏に攻め入ることを申し出て許されたので進んだ。
曹爽が動かないので司馬懿が反撃に出た。
両軍がぶつかる寸前、孫権の命令で諸葛恪は陣地を引き払って下がった。
司馬懿は不戦勝となった。

司馬懿の凱旋が面白くないのは曹爽。
蜀の蔣琬が病気だと察知する。
蜀の討伐は父曹真の悲願。
呉との戦いには常に気乗り薄だった曹爽は周囲の反対を押し切って漢中に向かう。
しかし、蜀の中で最も険しい道を選んだため思うように進まない。
膠着状態で後ろを塞がれそうになったので慌てて退却した。
この戦いで曹爽は大敗北して国民からの人気が凋落した。

第11巻に続く。
yasushiito.hatenablog.com

「まどいせん」って何?

「まどいせんってどういう意味ですか?」
先日そんな質問を唐突に受けました。

「まどいせんって言うと…歌詞? 」
「そうですキャンプファイヤーの時にみんなで歌うやつ」

この歌なら私も歌った覚えがあります。
小学校の野外活動で教えられました。
とはいえ先生は歌の意味までは教えてくれず、ぼんやりと受け入れて大人になりました。

この曲、日本人なら誰もが知っていると言って間違いない曲。
うちの町でも夕方になると町内放送されます。
意味はわからなくても郷愁を感じていい曲なんですね。
で、曲の最後の繰り返しの一番気持ちいいところで「どういう意味なんだろうな」と半ばモヤモヤしつつ「ま~~どい~せ~~ん~~~~」て歌っちゃうんですよね。

知らないのに歌うんか~~~い。

結局、意味は知らないので質問には答えられないんだけど、素直に「知らない」とは言えず。
たまたま先日ラジオで仕入れた知識をひけらかして 「それはドヴォルザークだね。新世界だっけ? 家路だったかな?」とごまかしを試みました。
が、
「それで、まどいせんってどういう意味でしたっけ ?」と追撃をくらいました。

「まどい しよう」と誘っていると想像はつきますが「まどい」と聞いて思いつくのは「惑い」くらい。
だけど、それじゃなさそうだしなぁ。

悔しいので渋々調べました。

漢字で書くと 「団居」あるいは「円居」だそうでして、
Goo 国語辞書によりますと

1か所に集まり会すること。特に親しい者どうしが集まって楽しむこと。団欒 (だんらん) 。

難しいな。
この時代の人の語彙力は現代人にはない教養を感じる。
この楽曲に日本語訳の歌詞を当てはめたのは堀内敬三
曲名は「遠き山に日は落ちて」
蒲田行進曲の日本語の歌詞を当てた人なんですね。

眺めの会・9月下旬『オッドタクシー in the Woods』

昨年話題になったテレビアニメ『オッドタクシー』
Amazon プライムビデオで配信されており、プライム会員は無料で視聴できます。
私も昨年末に見て非常に気に入り、この日記にも書きました。

yasushiito.hatenablog.com

それが今年の春に劇場版に。
早くもアマゾンプライムビデオにて独占配信開始されています。
あの完成度の高いストーリーのどこをどう掘り下げるのか。
とても好きな作品だから、是非とも眺めの会で視聴して話の俎上に上げたいんです。
どんな形であれ、見なければ。

視聴プラットフォームは Amazon プライムビデオ。
プライム会員は無料で視聴できます。
年齢レーティングは全年齢。

オッドタクシー in the Woods。

2022年に劇場公開された日本の長編アニメ。
テレビ番組で人気を博した『オッドタクシー』のストーリーをなぞりながらさらに深く掘り下げた作品。
監督は木下麦。
脚本は 此元 和津也。
主な声の出演は花江夏樹飯田里穂木村良平山口勝平
上映時間は127分で言語は日本語。

あらすじ。

偏屈で無口な中年男性小戸川。
個人タクシーの運転手として平凡な日々を過ごしていたが女子高生失踪事件に巻き込まれてしまう。
それはやがて大きな事件へと発展していく。
事件は一応の結末をみたが、その後事件の顛末を関係者たちがそれぞれの立場で語る。

見終わった感想。

考察厨向けこぼれ話集。

本編では語られなかった裏事情を主要登場人物にインタビューする形式で進んでいく。
あの時あの場面でなぜそうしたのか、あの出来事についてどう思っているか、などが当事者の口から語られる。
本編を見てストーリーを理解している前提で流れていくので、本編を見ていない人にはオススメできない。
映画の尺に合わせた総集編ではないので要注意。

本編を繰り返し見て様々な角度から考察した上で、それでも埋まらない謎が気になる人が見るビデオである。
考察マニアには嬉しいかもしれないが映画的ではないね。
種明かしされるようで個人的には好かない。
作者に直接尋ねて答え合わせするのも無粋ではないか。
少なくとも眺めの会で扱うタイトルではなかった。
バックトゥザフューチャー2みたいなワクワク感がある良かったんだけど。
しかし、番組の公式サイトにはそういう趣旨の内容だと明記されているので作品に罪はない。
単純に私のミス。
下調べなしで見る方針の企画とは食い合わせが悪かった。

本編の怒涛の最終回の後日談が描かれているところはとても良かった。
インタビューから人間性が垣間見えるところも good。
マネージャーの山本がイカれてるわ。
ホモサピエンスのスベり倒した漫才、 確かにあれは見たかった場面。
長編ドラマの意気込みでいなければ面白い作品だったと思う。


oddtaxi.jp

他人丼ってなんだよ!?

先日給食で他人丼が出ました。
他人丼、豚肉の卵とじなんですけど、雑なネーミングだなぁと感じながら食べました。

鶏肉と鶏卵は親子関係にある。
だから親子丼というのは分かる。
豚肉と鶏卵は親子関係にないから他人である?
初めて聞いた時はうまいと思いましたけどね、理屈は合っていても NG だ。
喝 !!

豚は哺乳類で鶏は鳥類。
哺乳類と鳥類の関係は親子と他人以上の隔たりがあるでしょう?
豚、牛、馬、哺乳類は卵を産みません。
絶対に親子であるはずがないのです。
親子でなければなんでもありと言うならば、菌類の椎茸と卵でも他人丼が成立するじゃないですか。
イカでもじゃがいもでも何でも行けちゃうぞ?

となれば、「他人丼」というオーダーで何が出てくるか全く想像つかない。
実際、牛肉を期待していたのに豚肉だったし。
他人丼(牛)、 他人丼(豚)のように注釈がいるなら最初から豚の卵とじ丼と書いとけよという話です。
誰がこんな雑なネーミングを普及させたんだよ。